おもしろいゲーム・推理小説紹介

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推理小説、マンガ、ゲームなどの解説・感想

◯初めての方にお勧めの記事!

米澤穂信著「折れた竜骨」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、米澤穂信著「折れた竜骨」である。米澤氏の代表作の一つであり、様々なところでおすすめされているため、もしかしたら読んだことがある方もいらっしゃるかもしれない。注目作が多い米澤氏作品の中からこの作品をぜひ読んでいただきたい理由を、この記事を読んで知っていただければありがたい。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                          

 

 

 

 

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~あらすじ~

舞台は12世紀末、ヨーロッパのある島。旅の騎士ファルクは、領主の娘アミーナと出会う。そして、領主であるアミーナの父が暗黒騎士に命を狙われていると告げる。この世界では魔術が存在しており、暗黒騎士も魔術を使って命を狙ってくる。島内というクローズドサークルに潜む犯人を、魔術という非現実的な技術が存在するこの世界で見つけることはできるのだろうか。

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①ファンタジー×推理小説

この小説の世界は、いわゆる剣と魔法の世界である。基本的には魔術が使えない人が弓や剣を使って戦う中世ヨーロッパの世界観であるが、一部の人は魔術を使うことができるのである。魔術が使えたら何だってできるのだからトリックだってなんでもあり、推理なんて不可能と思ってしまうが、そこは名手米澤氏。魔術にも明確なルール・制限を設け、その制限の中で誰に犯行が可能であったかをロジカルに推理していくというのである。現実にあり得ない設定を厳格なルールと共に取り入れ、その中で論理的な推理を展開するという点では西澤保彦氏が書くような「SF推理小説」に似ていると言える。剣と魔法の世界で殺人犯を推理するという状況は、ゲーム好きにはちょっとシュールだが、一般的な推理小説を読んできた読者には新鮮であり、一般的な推理小説に飽きた方には特にお勧めだ。

 

②怪しすぎる設定の登場人物

話が進んでいくと、明らかに怪しい設定の登場人物が登場する。それが、呪われたデーン人「トーステン」だ。彼は、昔の闘いでの捕虜として城に捕らわれているのだが、何と首を切らない限り死なないのだ!また、切っても血は流れず、眠ることもしないというトンデモ設定。絶対怪しい。誰もがそう思う彼だが、暗黒騎士は相手の血を使って人を操り殺人をすると言うことが分かっており、血を流すことのない彼は犯人ではない。では、彼の存在がどのように物語に関与してくるのか。デーン人の死なないという設定が推理に重要な要素であると言うことは誰もが感づくのだが、どう関わっているのか分からせないようにしているところがうまい。また、彼意外にも重要な要素はたくさんあるため、トンデモ設定の彼に気を取られすぎないようにしていただきたい。

 

③みんな大好きどんでん返し!

推理小説の醍醐味であるどんでん返し。これを楽しみに推理小説を読んでおられる方も多いだろう(かく言う私もそうだ)。逆に筆者は最後で読者の予想と全く違う答えを提示するために、小説の1ページ目から手ぐすねを引いて待っている。この小説も、最初から最後までがミスリードとなっており、素直に読んでいる方はそんなアリ?!となってしまうことだろう。どんでん返しの手法としては割と昔からよく使われる手法ではあるが、剣と魔法の世界というトンデモ設定や、米澤氏の巧みな文章により、違和感なくラストまで隠されていると感じた。読み終わった後、きっともう一度読み直してみたくなることだろう。

 

 

 

 

 

 

~最後に~

米澤氏の著書には名作が多いため、どれから手をつければ良いか分からない方も多いかもしれない。この本は、設定こそ他の作品と一線を画するが、間違いなく米澤氏特有の文章力や伏線のうまさが見て取れる作品である。推理小説が苦手な方にも非常に読みやすい作品になっているため、初心者の方にもぜひ読んでいただきたい作品だ。まずは、下記リンクからこの作品のより詳しい概要を見て、興味が持てたならば読んでみるのも良いだろう。

 

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