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◯初めての方にお勧めの記事!

道尾秀介著「龍神の雨」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、道尾秀介著「龍神の雨」である。道尾氏には映像化されたり話題となった作品が多く存在するが、梅雨真っ直中ということもあり、雨に縁のあるこの作品を紹介しようと思う。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                      

 

 

 

 

 

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~あらすじ~

継父と暮らす蓮と楓の二人。継母と暮らす達也と圭介の二人。二つの家族はそれぞれに問題を抱えていた。雨の中で展開していく二つの家族も物語。やがてそれらは交差し、絡み合って落ちていく。いつまでも降り続く雨。雨が降り止む日は来るのだろうか…。

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①濃密なストーリー

道尾氏の作品の特徴として、緻密な伏線を張りながら読者を誘導し、終盤でアッという展開が待っていると言うことと、単純なミステリというだけでなく、登場人物達の抱える感情や社会の問題を考えさせる濃密なストーリーだという点が挙げられる。もちろん例外はあるが、この作品はまさにこれら二つを兼ね備えた作品である。二つの実の親子ではない家族はそれぞれに問題を抱えており、それが事件の引き金であり結末へと繋がっている。台風が襲来しており終始雨という状景のため、暗い雰囲気の中物語が進んでいくが、その状景が二つの家族が抱えている問題の奥深さや重さと見事にマッチしており、ミステリとしてだけでなく一つの物語として楽しめる作品に仕上がっている。親子とは何なのか、どうあるべきなのかをも考えさせられてしまう。

 

 

②どんでん返し

道尾氏の代表作の一つ「向日葵の咲かない夏」にあるようなどんでん返し的展開も道尾氏の特徴の一つで、この作品でもそれが楽しめる。トリック自体は大仕掛けなものでも難しいものでもないが、前述の濃く重いストーリーとなっている事で読者がミスリードされやすくなっているように感じた。ストーリーの重さにはまってしまった読者はおそらく最後まで真相には気付かず(そんなことどうでも良くなり)最後まで一気に読み進め、そして驚きの真相に息をのむことになるだろう。

 

 

③雨

タイトルに雨とある通り、物語にも雨が絡んでくる。舞台が台風が襲来している街ということで、台風の接近・襲来・通過という課程と物語の緊迫度がリンクしており、物語に一層の重みを持たせる。また、事件のきっかけや根本的な要因も雨が絡んでおり、人生にたらればはないが、雨さえ降っていなければ二つの家族の形は全く違ったものになっていただろう。雨のこの季節に読むと、雨の中を歩く際に思い出し感慨深い気分にさせてくれる作品である。

 

 

 

 

 

 

 

~最後に~

道尾氏の作品を読まれる方はどんでん返しを楽しみにされている方も多いことだろう。私も最初はそれを期待してこの作品を読み始め、もちろんアッと言わせる展開に驚き満足もしたのだが、単純に物語としてもこの作品は割と気に入っている。雨が続くこの季節にぜひ一度読んでみていただきたい。

 

 

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