おもしろいゲーム・推理小説紹介

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◯初めての方にお勧めの記事!

貴志祐介 著「クリムゾンの迷宮」感想(ネタバレ注意)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、貴志祐介著「クリムゾンの迷宮」である。「悪の教典」で有名な貴志氏。本作品も、ホラーサスペンスサバイバルの三つの要素から構成されている作品であり、貴志氏の本領が十分に発揮された作品である。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                          

 

 

 

 

 

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~あらすじ~

赤い火星を彷彿とされる大地で目覚めた主人公。なぜここにいるのかは思い出せない。手元にあった携帯ゲーム機には、主人公がサバイバルゲームに強制参加させられたこと、そして「サバイバル用品」「武器」「食料」「情報」の4つのいずれかを手に入れるためのルートが示されていた。4つの内どれを選択するのが正解なのか?このゲームを仕組んだ者の真意とは?不安と謎に包まれた命をかけたサバイバルゲームが始まる。

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①ハラハラドキドキデスゲーム

 

 このゲームの参加者達は別に対立しているわけではなく、無理矢理参加させられただけなので本来殺し合いのデスゲームにはなり得ません。しかしゲーム中には主催者による様々な罠が仕掛けられており、参加者達は争っていくことになる。その最たる者が「食人鬼」である。ゲーム中で選択する4つのルート「サバイバル用品」「武器」「食料」「情報」の中から「食料」を選び手に入れた食料を手に入れると、食料に仕込まれた薬品の作用により食欲が抑えられない食人鬼となってしまうのだ。この仕掛けにより2人の食人鬼が発生し、参加者達を次々に食い殺していく。食人鬼の存在がこのサバイバルゲームの恐怖を極限まで高め、物語の重要な局面を引き起こすことで、ストーリーにメリハリが付き、物語の起承転結を見事に表現している。

 

ゲームブック

ゲームブックとは、本でゲームを楽しむ物で、読み進めていく中で現れた選択肢によって読むページが変わり、結末が変化するという物で、物語中主人公はこのデスゲームをゲームブックに例えている。選択肢は、前述の通り「サバイバル用品」「武器」「食料」「情報」の4つであり、参加者はこの中から一つを選び進まなければならない。4つのいずれもサバイバルには必要そうな物であるが、前述の通り「食料」は食人鬼化を引き起こすハズレの選択肢であり、参加者達は正に命をかけてゲームブックを実体験していくこととなる。この小説自体がゲームブックであり、正しい選択肢を選んだ場合の物語とも言えるかもしれない。

 

 

③曖昧な結末

物語中、主人公はある女性と恋仲になり、共に行動しゲームクリアを目指すこととなる。逃走の中で彼女の生死は分からなくなる。ゲームをクリアし、日本に戻ってきた主人公だが、実は彼女はこのゲームの主催者側ではないかと疑う。このデスゲームの様子を主催者側は記録する必要があるし、アクシデントの場合の調整役が現地にいるはずであり、確実に死亡を確認したり、食人鬼化していない者は彼女しかあり得ないのである。片眼が義眼でありそこにカメラが仕込まれていたのでは?などの考えがよぎるが、結局真相は明らかにされない。一部の読者はこの結末に対して、はっきりしない曖昧な結末だと悪い評価を下すが、私としては全てを明らかにせず読者の想像に委ねるという展開は嫌いではない。もちろん推理小説であれば、トリックや犯人を明らかにする推理に関しては淀みなくはっきりしている必要があるが、犯人の心情であったり、動機の部分はある程度曖昧にしても良いと思う。読者の好み次第だが、想像力を豊かにして楽しんでいただきたい。

 

 

 

 

 

 

 

~最後に~

本作品は、ホラー系の作品であるにもかかわらず、非常に読みやすく先が気になり読む手が止まらない系の作品でもある。物語自体も無駄に長くなっておらずコンパクトなものとなっているため、普段あまりホラーやサスペンス小説を読まない方もお気軽に読んでいただける作品となっていると思う。

 

 

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