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◯初めての方にお勧めの記事!

山口雅也著「生ける屍の死」感想(ネタバレ注意)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、山口雅也著「生ける屍の死」である。本作品は山口氏のデビュー作にして代表作の一つである。30年以上前の作品でありながら、未だに多くの推理小説ランキングで上位に上げられる人気作である。本日はその人気の秘密をご紹介したいと思う。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                  

 

 

 

 

 

 

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~あらすじ~

1900年代末、アメリカの片田舎で死者が蘇ったという目撃情報が相次ぐ。そんな時、主人公は遺産相続争いが起こっている大規模霊園に呼ばれた主人公は何者かに毒殺されてしまった。しかし、蘇り現象により生ける屍となった主人公は、腐敗する身体をエンバーミングにより隠し、真相の究明へと乗り出す。死者が蘇る異常な世界で、殺人事件と推理はどのように展開するのか?そのような状況で殺人を犯す理由とは?

 

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①非現実的設定の極致

推理小説に、非現実的な設定を持ち込むことはよく見られる。瞬間移動ができたり、タイムリープできたりと様々だが、本作品ではタイトルの通り死者が蘇るのである。殺人犯を推理する推理小説において、死者が蘇るというのは反則的設定で、非現実的設定の極致と言えるだろう。なぜなら死者が蘇るのならば、死者が犯人を指摘することができるからである。しかしそこはうまくできており、本作品では毒殺など被害者が犯人が分からないような形で殺されているため、推理小説として成立するのである。もちろんこの死者が蘇るという設定は、ただのきてれつ設定と言うだけで無く、本作のストーリーの核となる重要な要素となっている。

 

②誰が死者で誰が生者か

この小説のにおけるストーリーの肝は、ある時点において誰が死者で誰が生者か、つまり誰がいつどのような順番で死んだのかと言うことである。主人公が死後エンバーミングを施して犯人の探索を続けているように、他の登場人物も実は死んでいるにもかかわらず生きている様に振る舞っていたりする。もちろんそうするのにはそれぞれ明確な理由があり、その理由を推理するのもこの小説の重要な部分である。全てが明らかになった後にもう一度読み直すと「なるほどなー」と理解が深まるため、長編小説ではあるが頑張って2度読みしてみていただきたい。

 

 

③死とは何なのか

 本作品中では、前述の通り死者が蘇るという設定になっているが、それは決して死が軽いものだと言うことでは無い。物語を読み進めていくと分かるが、本作品では犯行の背景・動機を紐解いていくと死の定義、死とは何なのかを改めて考えさせられる内容となっている。動機や犯人の推理を楽しめるのと同時に死について考える機会を与えてくれる貴重な作品だ。

 

 

 

 

 

 

~最後に~

本作は「生ける屍の死」という非常に内容が気になるタイトルとなっており、思わず手に取ってしまう方もいるだろう。ただ、中々に長編なので躊躇される方もいらっしゃるかもしれない。だが、時間を費やして読む価値は十分にある作品だと思うので、時間をつくってぜひ読んでみていただきたい。

 

 

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