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◯初めての方にお勧めの記事!

島田荘司著「星籠の海」感想(ネタバレ注意)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、島田荘司著「星籠の海」である。名探偵・御手洗潔が登場するシリーズの一作で、美しい瀬戸内海を舞台としている。玉木宏主演で2016年に映画化もされた名作である。本日はその魅力について語っていく。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                

 

 

 

 

 

 

 

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~あらすじ~

瀬戸内海の海岸に死体が流れ着くという事件が相次いだ。相談を受けた名探偵・御手洗潔は助手の石岡くんと共に捜査を開始する。死体は一体どこから流れてきているのか。目的・原因は何か。瀬戸内海という特殊な環境・昔から軍港として栄える港街・そして御手洗の華麗なる推理が混ざり合い、事件は複雑だが幻想的に展開していく。

 

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①歴史ミステリー

物語の始まりは、瀬戸内海の島々に死体が流れるつくという事件なのだが、進んで行くにつれて物語は思いもよらない方向に展開していく。死体はすべて瀬戸内海の特殊な海流によって広島県福山市鞆の浦から流されていることが明らかとなる。そこでは一見何の繋がりもない様々な事件が起こっており、最終的にはそれらが御手洗の華麗な推理により一本に繋がっていく。軍港として栄えた鞆の浦について調べていく中で、織田信長鉄甲船を沈めた「星籠(せいろ)」というものが登場する。登場した時点ではこれが何でどうストーリーに絡んでくるのか全く分からないのだが、タイトルにも入っている以上関係しないわけがない。この「星籠」が実際に何かと言うことは明らかになっていない歴史の謎であるが、物語の中では御手洗が「あり得た可能性」を見出し、それが事件に大きく関わっていくのである。この展開は同じく島田先生の作品である「ロシア幽霊軍艦事件」に近い。「星籠」の正体は終盤まで明らかにならず、それ自体は推理に必須ではないのだが、終盤にその正体が明らかになることで物語が一気に幻想的なものとなるのである。歴史上の謎とミステリの融合をお楽しみあれ。

 

 

鞆の浦の美しい街

物語の舞台となる鞆の浦は「崖の上のポニョ」の舞台にもなったことで有名な港街である。街には昔からの建物が数多く残っており美しい町並みを楽しむことができる。小説中の描写や映画のシーンで描かれる美しい鞆の浦の街は、そこで起こっている重く暗い事件とは対照的であり、事件の重苦しい雰囲気をより引き出している。実際小説を読んで気になったため以前鞆の浦に旅行に行ったことがあるが、予想以上に綺麗な町並みで、天気さえよければもう何日か逗留したいと思ったほど、鞆の浦は非常に素晴らしい街であった。小説や映画を御覧になって興味が湧いた方はぜひ一度鞆の浦を訪ねてみていただきたい。

 

  

 

~最後に~

本作は、御手洗潔シリーズの中でも屈指の複雑さを持つ事件である。細かい事件が数多く複雑にからみあっており、真相が明らかになった後で読み返さないとよく分からないほどで、読者によって評価は分かれるかもしれない。本格ミステリとしてというよりは歴史小説として読むと、ロマンティックで楽しめると思う。複雑なためため映画にするとどうしてもスッキリしない印象になってしまうように思うので、お時間のある方はぜひ小説の方でお楽しみ頂きたい。

 

 

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