おもしろいゲーム・推理小説紹介

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◯初めての方にお勧めの記事!

米澤穂信著「インシテミル」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、米澤穂信著「インシテミル」である。この作品は2010年に藤原竜也綾瀬はるか石原さとみ他豪華キャストにて映画化されたことでも有名であるが、原作小説を読んでいない方もいらっしゃるのではなかろうか。個人的には映画よりも小説の方がおすすめなので、未読の方は例え映画で犯人を知ってしまっていても読んでみていただきたい。本記事がその一助となれば幸いである。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                        

 

 

 

 

 

 

 

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~あらすじ~

ある実験に協力することで高額の報酬を得られるという情報に集まった12人の男女。しかしその実験の内容とは、閉ざされた館の中で殺し合う殺人ゲームだった。報酬は時給制で、人を殺せばより多くの報酬をもらえるが犯人だと指摘されると報酬は減額され、また何もしなくとも報酬はもらえる。この条件から殺人を犯す人はいないだろうと思われたが、一人また一人と殺されていく。一体誰がどんな理由で殺人を行っているのか、最後まで生き残るのは誰か、そしてこのふざけたゲーム主催者の意図とは?

 

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

クローズドサークル

本作は、12人の男女が集められ、脱出不可能な館の中で事件が発生するといういわゆるクローズドサークルに分類される推理小説である。しかしながら雪の山荘のようなクローズドサークルとは違い、12人は偶然幽閉されたわけではなく、殺人ゲームを行うという主催者の明確な意思の元に集められている。故に殺人が起こるのはある意味必須であり、よりサスペンス性の高い作品と言える。参加者が一人また一人と殺されていく恐怖はクローズドサークル特有の物であり、途中で登場する12体のインディアン人形がそれをいっそうかき立てる。映画と小説を比較すると、起こっている出来事はほぼ同じだがスリルは小説の方が断然上であり、この辺りの差は米澤氏の文章力によるものであろう。

 

 

②ラストの怒濤の展開

犯人以外が全滅することも珍しくないクローズドサークルであるが、本作では何人かが生き残り脱出を試みる。犯人はその中にいないと思っている生き残り達だが、当然真犯人がその中に混じっており、最後の最後までハラハラドキドキで目が離せない展開となっている。また、無事に脱出した後も生き残り達には様々な展開が待っており最後まで楽しめる作品となっている。犯人の詳細な動機や背景が最後で全てが明確に明らかにされると思いきや、そうではない本作品は賛否が分かれることが多いが、それは本格推理小説読みの癖であり、小説というものは全てが明確に記述されるわけではなく、読者に委ねる部分があっていいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

~最後に~

本作では、米澤氏特有の一筋縄ではいかない推理小説といった感じが味わえる作品である。クローズドサークルが好きな本格推理小説ファンはもちろん、通常の推理小説はちょっと苦手といった方でも楽しめるというちょっと不思議な読み心地である。この表現が本作品の魅力を十分に伝え切れているかは分からないが、不思議な魅力に満ちた米澤ワールドをぜひ一度体験していただきたい。

 

 

 

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