綾辻行人著「暗黒館の殺人」感想(ネタバレ含む)
~はじめに~
本日ご紹介するのは、綾辻行人著「暗黒館の殺人」である。本作は館シリーズの第7作目にしてシリーズ史上最長の作品である。本日は文庫本4巻にわたる大長編の魅力をご紹介していきたい。
以下、ネタバレを含みます。
未読の方はご注意下さい。
~あらすじ~
峠の先にそびえ立つ暗黒の館。館に招かれた学生・中也はそこで様々な奇妙な出来事に遭遇し、ついには殺人事件に巻き込まれてしまう。館に住む人々はおどろおどろしい人々ばかりで中也は数々の恐ろしい出来事に出会う。果たして殺人事件の真相は?この館に隠された秘密とは?
~おもしろいポイント~
①ホラー要素全開
本作は館シリーズの作品であり、「十角館の殺人」のように本格ミステリー的展開かと思いきや、ホラー要素全開である。登場人物達は皆特殊な雰囲気を持っており、「ダリアの宴」なる怪しげな会まで行われている。こういったホラー要素が全編にわたって表現されており、これまでの館シリーズとは一線を画する。しかしもちろんこれらは読者を怖がらせるためだけのものではなく、様々な伏線となり、最後のどんでん返しへと繋がっているのである。ホラー要素をただの超常現象として捉えず、あくまでミステリーという事を念頭に置いて読んでみていただきたい。
②大長編
冒頭にも書いたとおり本作はシリーズ最長編の作品となっている。文庫本4巻にわたるこの作品は手を出すのが少しためらわれる方もいらっしゃるかもしれないが、ぜひ勇気を出して読み始めていただきたい。長編の中では様々な不可解な現象が発生し、謎が謎を呼んでいく展開であるが、それらは全て綾辻氏によって考え抜かれた伏線となっており、終盤で真相が明らかになっていく所は、そこまでが長かっただけに大きな爽快感を感じさせてくれる。無駄に長いだけでない考え抜かれた文章を隅々まで読み、綾辻ワールドを堪能していただきたい。
③シリーズファンの意表を突く
本作は館シリーズファンだけがアッと言わされる大どんでん返しが用意されている。これまでの館シリーズを知っていればいるほどその衝撃は大きく、ぜひシリーズファンには読んでいただきたい一作である。また、その真相を知っていることで、他の館シリーズ作品もより楽しんでいただけるかもしれない。シリーズファンでない方も1作でも良いので他の館シリーズを読んでから本作を読むとより楽しめるかもしれない。
~最後に~
本作は、これまでの館シリーズとは様々な意味で一線を画する作品である。かなり読むのに時間と集中力が必要だが、その甲斐はあると思うのでぜひ読んでみていただきたい。