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◯初めての方にお勧めの記事!

島田荘司著「御手洗潔の挨拶」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

 本日ご紹介する作品は、島田荘司著「御手洗潔の挨拶」である。本作はタイトルの通り御手洗潔シリーズの一作で、4つの短編からなる短編集となっている。御手洗潔シリーズで短編集は多くあるが、本作に収録の短編は特に面白かったのでご紹介したいと思う。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい

 

 

 

 

 

 

 

                    

 

 

 

 

 

 

 

 

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~面白いポイント~

①数字錠

 ある会社の社長が殺されたが、ふたつある出入り口の内、片方は鍵が掛かっており、もう一方にも3桁の数字を合わせなければ開かない数字錠が掛かった密室で殺害されていた。社員に動機があり犯人で間違いなさそうだが、どうやって密室殺人が行われたのかという作品。結局犯人はアリバイがあるかと思われた社員がアリバイトリックを用いて殺害したという物だったのだが、この作品で面白いのは名探偵・御手洗が犯人を捕まえるために、3桁の数字錠を開けるのにものすごく時間が掛かるというをついたことである。実際には数十分あれば開けられてしまうそうだが、御手洗はこれはもっと何日もかかるという嘘をつくことで、誤認逮捕を防いだのであった。数字錠が御手洗の手によって実際よりも強固にされてしまったことで、結果的には真犯人を特定することができるという、真実のみを話すことが名探偵ではないと教えてくれる作品である。

 

 

②疾走する死者

 ある夜、マンションの一室から姿を消した男性が、電車に轢かれた。しかしその男性が轢かれた場所はマンションから全力疾走しても、男が部屋から出て行ってから轢かれるまでの時間では到達できない距離で、しかも絞殺されていた。この不可解の死の真相は?という作品。実は男性はマンションで既に絞殺されており、ある「偶然」により死体が線路まで吹っ飛び電車に轢かれたという物だったのだが、この「偶然」があまりに突拍子がなく全く予想できなかった。良くこんなこと思いつくなぁと感心させられた作品。

 

 

紫電改研究保存会

 ある男に半ば脅され、封筒の宛名書きを手伝わされたが、終わるとすぐに解放された。その後すぐ、「ピサの斜塔救済委員会」なるところから寄付の御礼・領収書の手紙が届いた。そんなこと身に覚えがなく、特に被害があるわけでもなく、何のことか分からず困惑していた。この話を聞いた御手洗は、わかりきったことだ。あなたはペテンに掛けられだまし取られたのだ、という。果たしてこの男性は何をだまし取られたのかという作品。真相は、宛名書きをしている間に犯人が男の部屋から「ある物」を盗みだし、その御礼(皮肉)に領収書を送ったという物。この「ある物」が現金や貴重品ではなかったため事件は分かりにくくなったのだが、果たして何を盗んだのかは実際に読んでみていただきたい。

 

 

ギリシャの犬

 相談に来た女性からたこ焼きの屋台が盗まれたとの話を聞いた御手洗。最初は興味がなく警察に相談してくれてと突き放していたが、女性の盲導犬が屋台を盗まれる際に毒殺されたと聞き、一転依頼を受け入れることとした。また現場には、意味不明な記号が書かれた暗号文が残されていた。さらにはその近辺で子どもが誘拐される事件まで発生。一連の出来事の関連性とは?真相は、誘拐犯があることに使うための箱とちょうど同じ大きさの屋台を見つけて利用したという物。子どもの誘拐という一刻を争う状況に対しても御手洗がスマートに解決していく様子が爽快。

 

 

 

~最後に~

 本作は御手洗の比較的初期の頃の事件を集めた短編集となっており、ひとつひとつは大きな事件ではないが、話の表面しか理解していない石岡君や私たち読者に対して、御手洗が同じ内容から何倍もの情報を得ていることに感心させられるものが多い。各作品も適度な長さで読みやすくなっているのでぜひ一度読んでみていただきたい。

 

 

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