おもしろいゲーム・推理小説紹介

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◯初めての方にお勧めの記事!

我孫子武丸著「殺戮にいたる病」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

 本日ご紹介する作品は、我孫子武丸著「殺戮にいたる病」である。本作はホラー小説に分類されることもあるが、推理小説としても人気が高い。30年近く前に発表された作品でありながら今なお語り次がれている理由について語っていきたい。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい

 

 

 

 

 

 

 

                    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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~あらすじ~

繁華街で発生した連続猟奇殺人。犯人は蒲生稔。彼はなぜ殺人に至ったのか。彼が逮捕される前に遡って物語をたどっていくと、蒲生稔の驚くべき真相が明らかとなる。

 

 

 

~面白いポイント~

①終始展開されるホラー描写

 本作は最初から最後まで、生々しく恐ろしい描写が多くあり、物語全体を重たい雰囲気にしている。そのあまりにも生々しい描写に人によっては気持ち悪いと思うかもしれないが、そこまで描写できる文章力がすごい。この重たい雰囲気があるからこそ本作のストーリーが引き立ち、読む者を引き込むのである。

 

②最後のどんでん返し

 最初に述べたとおり、本作の犯人は蒲生稔である。ではいったい何を推理する推理小説なのかというと、やはり「犯人は誰なのか」なのである。一見矛盾しているように聞こえるかもしれないが読んでいただくと分かるように、蒲生稔というのが誰なのかというところを冒頭から終始スリードするような文章となっており、最後の最後に明かされる衝撃の真相に驚くことだろう。タネが分かってから読み返すと所々に真相を垣間見させる記述がたくさんあり、著者が巧みに表現や言葉尻を変えて、スリードをしつつもヒントを出しているのが分かる。こうした緻密な構成により騙されたと分かってもスッキリと読み終えることができるのがこの作品の特徴。

犯人が冒頭で明らかになる作品と言えば、以前紹介した麻耶雄嵩著「さよなら神様」が有名であるが、本作はそれとはまた違った方法で読者を驚かせてくれるので、さよなら神様を読んで気に入られた方はぜひ読んでみていただきたい。

 

 

~最後に~

 我孫子氏は数々の推理小説家達を生んだ京都大学推理小説研究会出身で、例に漏れず高い構成力と描写力が魅力だと思う。その中でも代表作と言われる本作は特に完成度が高いので、ぜひ一度読んでみていただきたい。

 

 

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