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◯初めての方にお勧めの記事!

原田マハ著「総理の夫」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは原田マハ著「総理の夫」である。本作は2021年には映画化もされた作品だ。ミステリとは全く関係ないが面白かったので感想を述べたいと思う。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 

 

 

~あらすじ~

 主人公の妻は少数野党の党首だった。そんな彼女が突如総理大臣になり、生活が一変する。主人公は変化に戸惑いながらも妻を支え、妻も強い信念の下政治を行っていく。

 

 

~おもしろいポイント~

①もし次の首相が女性だったら

 本作では、主人公の妻が日本初の女性総理大臣になったという設定で繰り広げられる物語となっている。この設定は現時点では架空の設定ではあるが、都知事や大臣に女性が顔を連ねるようになった昨今、いつ現実となっても何らおかしくは無い設定である。むしろ海外では女性の国家元首は多く存在しており、遠くない未来に日本でも女性総理大臣が誕生することだろう。主人公の妻が総理大臣になった直後は、世間もメディアも「女性」ということに注目し色眼鏡で見ていたが、次第に彼女の強い信念に惹かれるようになっていく。残念ながらおそらく現実でも初めは同じような事態になってしまうだろうが、その時我々有権者が冷静な目で彼女を見ることができるかは正直自信が無い。また、日本の法律や制度・設備は女性が首相となることを想定していないとの記述もあり、本作でも終盤に語られる女性首相が出産する場合の対応なども、実際に起こりうるにもかかわらず想定が及んでいないと思われ、現実として考えていく必要があるように思われる。

 

②総理の夫

 タイトルにもなっているとおり、女性総理大臣が初であれば当然日本初の「ファースト・ジェントルマン」が誕生することとなる。本作では総理の夫である主人公が大企業の家柄であることから余計に話が複雑になるのだが、そうでなくても大変なことである。ただこれに関しては、初の男性だからというよりは、これまでのファーストレディの方たちもこれほど大変な思いをしているのかといった印象を受けた。特に、首相の外遊に否応なしに同伴させられたり、外賓の方達と食事をしたりなど、本人は少なくとも普段は公人では無いにもかかわらず、首相といるときは公人として扱われるという現実を改めて認識させてくれた。

 

③国のリーダー

 日本において総理大臣は名実ともに国のリーダーである。しかし実際これまでの総理大臣がどれほど日本をリードしてこれただろうか、という疑問を本作は投げかけているように思う。本作で描かれる総理大臣は著者が理想とする日本のリーダー像であるように思われる。国民の声を聞き、痛みを分かち合い、合理的・論理的な説明を尽くす。当然でありながら今の政治ができていないこと。本作を読むと、性別にかかわらず文字通り日本をリードしてくれる存在を期待してしまう。

 

 

 

~最後に~

 本作はフィクションとしてもどんどん読み進めたくなる面白いストーリー展開・文章であると同時に、現実の政治についても考えさせられる物語である。政治に関する本を読むのは気が向かないという方も多いかと思うが、本作は物語として気軽におもしろく読めるのでぜひ一度読んでみていただきたい。 

 

 

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