ゲーム「ヴァルキリープロファイルシリーズ」を語る
~はじめに~
今回ご紹介するのは「ヴァルキリープロファイル」、通称VP。トライエースが開発し、これまでに4タイトルが発売されている。知名度は比較的低いが、特にシリーズ最初の作品である、「ヴァルキリープロファイル」は根強い人気がある。今回はそんなVPの魅力について語っていきたい。
ヴァルキリープロファイルシリーズ一覧
①ヴァルキリープロファイル(1999): PS
ヴァルキリープロファイル-レナス-(2006): PSP
ヴァルキリープロファイル-レナス-(2018): iOS, Android
②ヴァルキリープロファイル-シルメリア-(2006): PS2
③ヴァルキリープロファイル 咎を背負う者(2008): DS
④ヴァルキリープロファイル-ジ・オリジン-(2016): iOS, Android
~VPシリーズの概要~
北欧神話の世界。神開では戦争が繰り広げられ、その戦力として人間の勇者の魂が必要とされていた。人間界で勇者の選定を任されたのが、運命の3女神、アーリィ、レナス、シルメリアであった。彼女たちは3人の内一人のみが覚醒し、ヴァルキリーとして下界ミッドランドに降り立ち、勇者の選定を行うのであった。しかしそこには様々な、神々による、そして人間による陰謀・秘密が存在しており、ヴァルキリー達はそれに翻弄されながら、自らの運命を切り拓いていくのである。本作は、そんなヴァルキリーと、ヴァルキリーによって選定された人間の物語である。
~VPの魅力~
①みんな大好き北欧神話
VPの世界観は、正に北欧神話そのものである。ところどころ脚色や変更は加えられているが、概ね北欧神話をベースにしている。日本人はなぜか北欧神話が大好きで、ゲームや映画などに頻繁に出てくる。北欧神話好きはもちろんVPを大いに楽しめるだろうし、あまり興味がない人も、VPをきっかけに北欧神話について学んでみたくもなるだろう。
②濃厚なストーリー
VPシリーズ全てに共通しているのは、このゲームが神々や人間の「運命・人生」をテーマにしていることである。出会う仲間一人一人、敵一人一人に物語があり、その多くは辛く苦しい経験も多い。運命に翻弄されながらも懸命に自分の人生を生きる人々・神々の濃厚なストーリーを余すことなく楽しんでいただきたい。また、クリア後のダンジョンではシルメリア以降様々なネタも用意されているため、シリアスな本編で疲れた心も癒してくれることでしょう。
③爽快なアクション・難解なダンジョン
戦闘システムは各シリーズで異なるが、いずれも、物理攻撃・魔法攻撃・必殺技を交えながら相手を倒していく爽快な王道戦闘スタイルを採用している。また、レベルが上がるにつれて強力なスキルも覚えられるようになり、それらが攻略の鍵となる。戦闘の難易度は通常のRPG並みだと思われるが、ダンジョンの難易度はおそらく難しい部類に入るだろう。様々な謎解きやフィールドアクションを駆使しながらダンジョンをクリアしていく必要があり、フィールドアクションが苦手な方は苦戦するかもしれないが、それらが大好きなプレイヤーにとってはうれしい限りである。特に、クリア後のダンジョンは敵の強さもダンジョンの難易度も(ネタの多さも)跳ね上がっており、本編だけでは満足できなかったプレイヤーも満足させてくれるだろう。個人的には本編は重厚なストーリーを楽しみ、クリア後は難解なダンジョンを楽しむといった印象だ。
④多様で濃厚な登場人物
本作の登場人物には、運命の3女神はもちろん、数多くの人間の勇者達がいる。それぞれに濃厚なストーリーが用意されており、それらがからみあって一つの物語を形成している。その中でも特にキャラが濃いのが「レザード・ヴァレス」。CVは子安武人。シリーズの多くで登場し、重要な役割を果たす変態・・・、もとい天才魔術師であり、常人ではあり得ない発想・能力によって物語はプレイヤーの予想できない方向へと進んでいく。ぜひ彼から目を離さないように(まあいやでも目に入ってくるが)していただきたい。レザード以外の登場人物もそれぞれ魅力を持っているので、気に入ったキャラに感情移入してプレイするのもお勧めだ(ただしレザードには感情移入できないと思いますが)。
~最後に~
今回はVPシリーズの魅力についてご紹介した。「レナス」と「ジ・オリジン」以外は環境的に現在プレイしにくいのが残念だが、まずは「レナス」をプレイしていただき、その魅力を感じていただきたい。できれば「シルメリア」も併せてプレイしていただきたいところだが、今後の移植に期待したい。また、続編にて長女でありながら主人公を妹2人に奪われているアーリィが報われる日を、願ってやまない。
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歌野晶午著「密室殺人ゲーム王手飛車取り」感想(ネタバレ含む)
~はじめに~
本日ご紹介するのは、歌野晶午氏著「密室殺人ゲーム王手飛車取り」だ。密室殺人ゲームシリーズの最初の物語である。「葉桜の季節に君を想うと言うこと」でみせた緻密な文章構成や、「家シリーズ」で魅せた本格トリックなど多彩な才能を持つ歌野氏の魅力が存分に詰まった一冊となっている。今回はその魅力について語っていきたい。
以下、ネタバレを含みます。
未読の方はご注意下さい
~あらすじ~
ネット上で、ミステリ好きの5人によって繰り広げられる、ミステリ問題の出題と推理。一見、ただのミステリ好きのやり取りなのだが、実は出題された問題は、実際に出題者が行った犯罪であり、自分が行った殺人トリックを披露しているのであった。
~面白ポイント~
①文章によるミステリとの違い
推理小説ではしばしば、理論上では可能かもしれないが本当に可能なのか、という問題が取りざたされる。しかし本作では、出題者が考案したトリックが実際に実行され、成功しているという点で。推理小説とは大きく異なる。逆に、通常推理小説ではあり得ないような設定や状況も、現実で実行できたのならアリなのである。例えば、成功確率が5回に1回で、推理小説ならば「犯人がそんな不確実な方法を取ったはずはない」というトリックであっても、5回同様のトリックを使った犯罪を行い、成功した1回のみを出題すれば良いのである。このような文章だけのトリックとは一線を画するトリックを楽しんでいただきたい。
②多彩な手口・トリック
前項で、実現可能なトリックと入ったが、だからといってトリックの質や規模が下がるというわけではない。出題者が犯人という都合上犯人当てはできない(例外はある・・・)が、密室トリックからミッシングリンク、アリバイ崩しなど多彩で予想外のトリックが続々と出題される。そのどれもが、驚きに満ち、読者を楽しませてくれ、歌野氏の多才さを感じられることだろう。通常犯人は、以下に捕まらないか、自分がやったとバレないかを追求するが、この作品中の出題者(=犯人)は、以下に華麗なトリックを他の4人に披露するか、参ったと言わせるかを重視しており、そのため通常の推理小説で出てくるトリックよりもあっと驚かされる奇想天外なトリックが多くなっている。また時には、トリックの質や出題の仕方についての議論が成される場面もあり、推理小説が好きな方であれば一緒に議論を楽しめるだろう。
③手が止まらなくなるストーリー
様々な犯罪・トリックが披露されると聞いた方は、短編集のようなモノかと感じた方もいらっしゃることだろう。もちろんそういった側面もあるのだろうが、本作には、しっかりとしたストーリーも存在する。5人の登場人物は、全員が犯罪者という性質上、お互いの素性は知らないのだが、ゲームが進むにつれて相手の素性が見え隠れする。トリックの中には出題者の人物像が大きくトリックに関わっていることもあり、そちらについて考えてみるのも面白いかもしれない。
~最後に~
本日ご紹介した「密室殺人ゲーム王手飛車取り」。密室差圧人ゲームシリーズの原点であり、最高傑作であると思っている。これまで、ありそうでなかった設定をぜひ楽しんでいただきたい。
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ゲーム「エンド オブ エタニティ」を語る
~はじめに~
本日ご紹介する「エンド オブ エタニティ」、通称EoE。トライエースが開発し、2010年にセガから発売されたゲームである。他に類を見ない戦闘システムの導入により話題となったのだが、慣れない難しさからか、あまりヒットしなかった。しかし、改めてやり直すとそのシステムやストーリーには心引かれるものがあり、2018年にはPS4でリマスター版が発売するなど根強い人気もある。本日はそんなEoEの魅力について語っていく。
~あらすじ~
荒廃した世界で、人類はバーゼルと呼ばれる巨大な環境浄化装置内での暮らしを余儀なくされていた。人類はバーゼルに寄り添い、そして運命を支配されながら細々と暮らしていた。その中で生きる、運命に抗う少年「ゼファー」、運命を克服する女「リーンベル」、運命を受け入れた男「ヴァシュロン」の物語である。
~EoEの魅力~
①濃厚でシリアスな世界観・ストーリー
EoEをプレイしてまず思うのが、何て濃厚なストーリーなんだという点だ。主人公3人達はそれぞれ熾烈な過去を持っており、バーゼルにより決められる「運命」に翻弄されてきた。そんな3人の過去を紐解きながら、運命とは何か、自分はどうするべきなのかを考えさせられる内容となっている。ストーリー全体としては重く、悲しい物語となっているため、好まない人もいるかもしれないが、自分の人生について考えさせられる深いストーリーとなっている。
②シリアスを切り裂く豊富なギャグシーン
前の項で述べたとおり、ストーリー全体としてEoEはシリアスで暗い物語である。しかし、プレイしてみると随所にギャグ要素がちりばめられており、全く暗さを感じられず、主人公達が過酷な過去・運命を抱えているという事すら時に忘れさせられてしまう。詳細はネタバレになってしまうため割愛させていただくが、3人のコントのようなやり取りをぜひご堪能あれ。
③他に類を見ないクールな戦闘システム
イントロでもお話ししたとおり、EoE最大の魅力が戦闘である。銃撃多重奏RPGと銘打たれているように、銃による攻撃を主体とした、トライ・バトル・アタック方式の戦闘である。銃によるバトルと聞くと、照準を合わせたり特殊な操作が必要なイメージで、筆者もそういった操作は苦手で取っつきにくいイメージである。しかし心配ご無用。EoEの銃撃戦は、誰でも簡単にカッコイイプレイができるようになっている。ボタン一つで戦場を飛び回り、銃を乱射することができる。ただし、イントロで述べたプレイヤーを困らせた難解なシステムとして、「スクラッチダメージ」と「ダイレクトダメージ」の2種類にダメージが分かれていると言うことが挙げられる。マシンガンを使った攻撃はスクラッチダメージといい、相手の体力を大幅に削るが確定ダメージとはならない。マシンガンでスクラッチダメージを蓄積した後に、ハンドガンなどでダイレクトダメージを与えて初めてスクラッチダメージが確定ダメージとなる。ダイレクトダメージを与えずに放置しておくと、敵はスクラッチダメージを自動回復してしまう。また、スクラッチダメージ与えずにいきなりダイレクトダメージを与えることも可能だが、その場合は敵に大きなダメージを与えることはできない。つまり基本的には、マシンガンによるスクラッチダメージ⇒マシンガンによるダイレクトダメージを交互に繰り返すことで敵を倒せる。以上のようなシステムがあるため、始めた当初は中々敵が倒せなかったりして、早々に諦めてしまうプレイヤーも多かったらしい。しかし、いったん慣れてしまえばそう難しいこともなく、爽快でクールな戦闘を楽しむことができる。
余談だが、戦場を飛び回る性質上、リーンベルの服をズボンタイプからスカートタイプに変更すると、戦闘中はパンチラ(パンモロ?)の嵐となり、それ故EoEは時折パンツゲーとも呼ばれている。ただ、序盤ではスカートを装備できないようになっているので、見たい方はストーリーを中盤まで進める必要がある。きっとその頃にはあなたはEoEの虜になっていることだろう。
~最後に~
EoEは、濃厚なストーリー・ギャグ要素・戦闘システムの3拍子が揃った素晴らしいゲームである。しかし、戦闘の難解さ故序盤で止めてしまうプレイヤーが多いのも事実。ぜひ、諦めずに最後までプレイしていただきたい。きっと素晴らしいゲームに出会えて良かったと思っていただけるだろう。
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島田荘司著「ロシア幽霊軍艦事件」感想(ネタバレ含む)
~はじめに~
本日ご紹介する作品は、本格ミステリ界の巨匠・島田荘司著「ロシア幽霊軍艦事件」である。本作品は島田氏の有名なシリーズである名探偵・御手洗潔を主人公とする作品である。御手洗潔シリーズとしては、島田氏のデビュー作でもある「占星術殺人事件」などが有名であり、本格ミステリとしてはそれらの作品の方が完成度は高いように思われる。しかしながら、本日ご紹介する「ロシア幽霊軍艦事件」の方が私は好きだ。本記事ではその魅力を語っていきたい。
以下、ネタバレを含みます。
未読の方はご注意下さい
~あらすじ~
ある日御手洗の元に届いた一通の手紙。そこにはある老人の死ぬ間際の言葉が綴られていた。そこに登場する箱根・富士屋ホテルに飾られている芦ノ湖に浮かぶロシア軍艦の写真。なぜ、どのように芦ノ湖にロシア軍艦が現れたのか。その謎が解き明かされた時、壮大な歴史の謎が明らかとなる。どんなに壮大な謎も、御手洗潔の前ではかくも簡単に、鮮やかに解き明かされてしまうのか・・・。
~面白いポイント~
①殺人事件でないにもかかわらずそれ以上に壮絶なストーリー
作品の冒頭でも述べられているとおり、この事件は誰かが死んだり、死の危険にさらされたりする鬼気迫る物語ではない。にもかかわらず、御手洗潔がこれまでに扱ってきたどんな事件よりも興奮し、謎に満ちた作品なのである。ミステリの題材に殺人事件が多いのは、おそらく最もなじみのある非日常であるからだと思われるが、必ずしも殺人はミステリに必要ではないと言うことを改めて教えてもらった気がする。
②歴史ミステリと本格ミステリの融合
この作品の軸に存在するのが、ロマノフ王朝の謎。ロマノフ王朝やアナスタシアの謎は日本人が大好きで様々な作品で扱われてきている。実際の調査に基づいて何が起こったのか解き明かそうとする作品や、あり得ないであろうが面白い歴史をフィクションとして楽しむ作品など様々であるが、本作品では歴史的事実からギリギリあり得たかもしれない真実をフィクションとして見事に仕上げている。この作品での内容はもちろんフィクションではあるが、調査の結果や当時の技術的背景から起こりえた歴史とも言え、その点において提示された事実からあり得る解を導き出す本格ミステリ的要素を兼ね備えていると言える。そのため、歴史ミステリファンも本格ミステリファンもどちらも楽しめる作品となっている。
③御手洗潔の華麗なる解決
御手洗潔シリーズにおいて、御手洗潔の解決までの流れには大きく二通りある。一つは体調が悪かったり、忙しかったり、重要な情報がかけていたりして御手洗が中々真相にたどり着けず、真相が分かったときに「なぜこんな簡単なことに気付かなかったんだ!」と嘆くルート。そしてもう一つは、冷静沈着で常に我々の2手3手先の真相まで見極め、着実に裏を取っていって最後に「石岡君、簡単なことだよ」とさらっと真相を明らかにするというルートである。本作品は後者に分類される。しかしながら、世界中を舞台としたロマノフ王朝の歴史ミステリーを、1通の手紙と1枚の写真、ある頭のおかしな女性の話などとても壮大な謎を解き明かすには足りないと思われる情報のみで、さながら安楽椅子探偵のごとく解決していく様は見事としか言いようが無い。そして、解き明かされた真相を明らかにする方法もとても機知に富んでおり、興奮させられるものとなっている。
~最後に~
本文にも書いたが、本作品は本格ミステリと歴史ミステリが融合した作品である。本格ミステリは小難しくて苦手という方も、歴史ミステリは知識が無いからと敬遠していた方も、ぜひ一度読んでいただきたい。きっと、これまでのミステリの枠を破ってあなたを楽しませてくれることだろう。
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ゲーム「スターオーシャンシリーズ」を語る
~はじめに~
本日ご紹介する「スターオーシャンシリーズ」。日本に星の数ほど存在するRPGの中でファイナルファンタジー、ドラゴンクエスト、キングダムハーツに並ぶ名作だと私は思う。しかしながら前述の3つのゲームと比較して、圧倒的に人気が無く、知名度が低いのもまた事実。そこで本日はスターオーシャンについて知っていただきそのファンを少しでも増やしたいと思う。
スターオーシャンシリーズ一覧
<ゲーム>
1)
・スターオーシャン1 First Departure(2007): PSP
・スターオーシャン1 First Departure R(2019) PS4, Switch
2)
・スターオーシャン セカンドストーリー(1998): PS
・スターオーシャン2 Second Evolution(2008): PSP
・スターオーシャン2 Second Evolution(2015): PS3, PS4, PS Vita
3)
・スターオーシャン ブルースフィア(2001): GB
4)
・スターオーシャン Till the End of Time(2003): PS2
・スターオーシャン Till the End of Time ディレクターズカット(2004): PS2
・スターオーシャン Till the End of Time ディレクターズカット(2017): PS4
5)
・スターオーシャン4-THE LAST HOPE-(2009): XB360
・スターオーシャン4-THE LAST HOPE- INTERNATIONAL(2009): PS3
・スターオーシャン4-THE LAST HOPE- 4K&Full HD Remaster (2017): PS4, Win
6)
・スターオーシャン5-Integrity and Faithlessness-(2016): PS3, PS4
7)
・スターオーシャン:アナムネシス(2016): iOS, Android
<アニメ>
・スターオーシャンEX(2001)
<マンガ>
・1)~4)のマンガ、4コママンガ、小説などあり
スターオーシャンシリーズの魅力
スターオーシャンシリーズでは多くの特徴的なシステムが導入されており、シリーズを通して受け継がれているものもある。ここではそれらシステムやストーリーの魅力について語っていく。
①SF×ファンタジー
まず特徴的なのが、魔法などが出てくるファンタジーの世界観でありながら、様々な科学技術や法則などが登場する点だ。魔法は「紋章術」などと呼ばれる名称で登場し、全てのシリーズで登場する。回復魔法から攻撃魔法、補助魔法など一般的なファンタジーRPGと同様である。SF要素については基本的には現在より未来の話なので、ワープやシールドなど現在存在しないものも多いが、ハイゼンベルグの不確定性原理など中2心をくすぐる様な単語も頻繁に登場する。これらの難解な用語をプレイヤーが理解するために設けられたシステムが「辞書」である。特にスターオーシャン Till the End of Time ディレクターズカット(以下、SO3)では、非常に詳しく単語の解説が成されており、ゲームの内容と全く関係の無いものまで事細かに説明してあるため、辞書を読むだけでも数時間楽しめるだろう。
②多彩なオマケ要素・クリア後のお楽しみ
前述の「辞書」もそうだが、とにかく本編以外の部分に対する作り込みが半端ではない。例えばSO3では町の民家の本棚に置いてある本がスターオーシャン過去作の内容に触れる内容であったり、他作品のオマージュとして某有名ゲームのセリフやアイテムが町中に置いてあったりする。またそれらのアイテムはストーリーを進める毎に更新されるため、何度も楽しむことができる。また、クリア後のエクストラダンジョンの凝りようも異常で、本編クリアの倍以上の時間をかけてもクリアできないものも登場する。それだけ長いと飽きてしまいそうだが、そこは飽きさせないネタの数々とパズル要素のレベルが素晴らしい。また、バトルコレクションという戦闘で特定の条件を達成すると得られコレクションがあるシリーズもあり、ボスをノーダメージで倒したり、制限時間以内に倒すなどクリア後のやりこみ要素には事欠かない。スターオーシャンシリーズをプレイされる際は、ぜひ本編だけでなく、細かなオマケ要素やクリア後のやりこみ要素をお楽しみ頂きたい。
③プライベートアクション
プライベートアクション(以下、PA)とは、待ちなどで仲間たちがどのような行動をし、どんなことを思っているかなどをショートイベント方式で楽しめるスターオーシャンの特徴的なシステムだ。PAを見ることで、キャラクターの知られざる一面が見られたり、キャラ同士の恋愛事情なども楽しめ、場合によっては選択肢により、会話の流れを誘導し、特定のキャラの好感度を上げたり下げたりできる。シリーズによってはそれによってエンディングの内容が変化し、数十種類ものエンディングが見られるという凝りだ。PAの内容はストーリーの進行具合や仲間にしたキャラの構成によっても変化し、全て見るためには本編を何周もしなくてはならない。しかしその価値はあるだろう。
④アイテムクリエーション
アイテムクリエーションとは、文字通り素材から特定のアイテムを創り出すシステムだ。武器や防具はもちろん、薬や料理、装飾品など様々なアイテムを作製できる。これだけ聞くとオマケ要素のようだが侮るなかれ。特殊な組合せによってはゲームバランスを崩壊させるほど強力な武器を創り出すこともできる。また、前述のクリア後のエクストラダンジョン攻略には、クリア後に手に入るアイテムを使ってアイテムクリエーションで創る強い武器や防具が必須であり、うまい具合にゲームバランスを調整している。創れるアイテムの数は膨大で、コンプリートしようとすると素材集めも含めてかなりの時間が掛かるためやりこみ要素としても役立つだろう。
⑤爽快な戦闘
RPGにおいて戦闘は重要な要素だ。これ一つでゲーム全体を楽しめるかどうかが決まることもある。スターオーシャンシリーズでは、リアルタイムバトルを採用しており、刻一刻と変化する戦況に合わせてキャラを操作していく。スターオーシャンシリーズの中でも戦闘システムは変化してきたが、評判が高いのがSO3で導入されたキャンセルボーナスと3すくみ制だ。キャンセルボーナスとは前に出した技に続けてタイミング良く技を出すことで技の威力を上げることができるシステムである。これにより戦闘のスピード感が増し、サクサク戦闘を進めることができる。3すくみ制とはじゃんけんのような物で、小攻撃は大攻撃を妨害できるがプロテクトという障壁に阻まれ、大攻撃はモーションが大きく小攻撃に妨害されるがプロテクトを破壊できるという物だ。これにより戦闘の戦術性がアップし、ボス攻略の重要ポイントとなる場合もある。これらのシステムにより、スピーディーな戦闘でありながら、単調でなくスリルあふれる戦闘を楽しむことができる。更に、シリーズを通して桜庭統氏の素晴らしい音楽が戦闘を盛立てる。
⑥ひとつなぎの壮大な宇宙歴
スターオーシャンシリーズでは、「宇宙歴」と呼ばれる暦を共通の時間軸として持っており、いずれかの宇宙歴における重要な出来事に関わった者達の物語として各シリーズが展開する。新しいシリーズが必ずしも新しい宇宙歴の話というわけではなく、前作より過去の話であったり、未来の話であったりする。共通の歴史の一部なので、過去作の物語が伝説として受け継がれていたり、過去作の子孫や出身惑星が登場したり、過去作で登場した技術が誕生する瞬間を見られたりと、シリーズをプレイすればするほど各シリーズ同士の繋がりが明らかとなっていき、壮大な一つの宇宙歴が徐々に解き明かされていくのである。過去作をプレイした者にしか分からないような遊び心あふれる演出もあったりするので、ぜひ全てのシリーズをプレイしていただきたい。
~最後に~
長々と述べてきたが、まだまだスターオースシャンシリーズの魅力を語り切れていないと思う。機会があればより詳しくご紹介したい。いきなり購入するのはハードルが高いかもしれないので、この記事を読んで興味を持たれた方は、下記URLよりプレイ動画を一度御覧になっていただければ、本編のシナリオやシステムは理解いただけると思う。動画を見た後でも、本編のストーリーが複数通りあったり、クリア後のお楽しみも満載なのでぜひ実際にプレイしていただきたい。
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<スターオーシャンシリーズ公式サイト>
<スターオーシャンシリーズ プレイ動画>
スターオーシャン Till the End of Time ディレクターズカット
綾辻行人著「黒猫館の殺人」感想(ネタバレ含む)
~はじめに~
このブログの記念すべき初の記事。推理小説は大好きだが、ハズレが多いのも事実。下記にこれまでに読んだ主要な小説を列挙するが、当たりはほんの一握りであった。
その中で、始めにご紹介するのは、綾辻行人著「黒猫館の殺人」である。
超有名な館シリーズの第6作目。1作目の「十角館の殺人」が紹介されることが多いが個人的には黒猫館が最も好みであったため、こちらを紹介させていただく。
*以下、盛大にネタバレを含むため、未読の方はご注意下さい。
これまでに読んだ主要な小説一覧(興味の無い方は読み飛ばしてください)
◯綾辻行人
- 十角館の殺人
- 水車館の殺人
- 迷路館の殺人
- 人形館の殺人
- 時計館の殺人
- 黒猫館の殺人
- 暗黒館の殺人
- びっくり館の殺人
- 奇面館の殺人
- 緋色の囁き
- 暗闇の囁き
- 黄昏の囁き
- 殺人方程式 切断された死体の問題
- Another
- Another エピソードS
- どんどん橋、落ちた
◯歌野晶午
- 長い家の殺人
- 白い家の殺人
- 動く家の殺人
- 密室殺人ゲーム王手飛車取り
- 密室殺人ゲーム2.0
- 密室殺人ゲーム・マニアックス
- 死体を買う男
- 葉桜の季節に君を想うということ
◯島田荘司
- 占星術殺人事件
- 斜め屋敷の犯罪
- 御手洗潔の挨拶
- 異邦の騎士
- 御手洗潔のダンス
- 暗闇坂の人喰いの木
- 水晶のピラミッド
- アトポス
- 御手洗潔のメロディ
- Pの密室
- 最後のディナー
- ロシア幽霊軍艦事件
- ネジ式ザゼツキー
- セントニコラスのダイヤモンドの靴
- 溺れる人魚
- UFO大通り
- リベルタスの寓話
- 御手洗潔と進々堂珈琲
- 星籠の海
- 屋上
- 御手洗潔の追憶
◯道尾秀介
◯有栖川有栖
- 月光ゲーム Yの悲劇'88
- 孤島パズル
- 双頭の悪魔
- 女王国の城
- 江神二郎の洞察
- 46番目の密室
- ブラジル蝶の謎
- 火村英生に捧げる犯罪
- 長い廊下がある家
- 鍵の掛かった男
◯伊坂幸太郎
- オーデュボンの祈り
- アヒルと鴨のコインロッカー
- 火星に住むつもりかい?
◯折原一
- 倒錯の死角
- 倒錯のロンド
- 倒錯の帰結
- 漂流者
- 遭難者
- 失踪者
- 逃亡者
- 潜伏者
◯西澤保彦
- 解体諸因
- 依存
- 転・送・密・室
- 完全無欠の名探偵
- 七回死んだ男
- 人格転移の殺人
- 死者は黄泉が得る
- 瞬間移動死体
- 複製症候群
- 聯愁殺
- 神のロジック 人間のマジック
◯東野圭吾
- 殺戮にいたる病 我孫子武丸
- 黒猫のデルタ 森博嗣
- 星を継ぐもの ジェイムズ・P・ホーガン
- 探偵AIのリアル・ディープラーニング 早坂吝
- 「アリス・ミラー城」殺人事件 北山猛邦
- イニシエーション・ラブ 乾くるみ
- 儚い羊たちの祝宴 米澤穂信
- 折れた竜骨 米澤穂信
- クラインの壺 岡嶋二人
- シャーロックホームズの事件簿他 コナン・ドイル
- そして誰もいなくなった アガサ・クリスティー
- 三毛猫ホームズの推理 赤川次郎
- 生ける屍の死 山口雅也
- クリムゾンの迷宮 貴志祐介
- 生首に聞いてみろ 法月綸太郎
- 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 麻耶雄嵩
- 黒いトランク 鮎川哲也
- 蝶々殺人事件 横溝正史
- 不連続殺人事件 坂口安吾
- 星降り山荘の殺人 倉知淳
~あらすじ~
黒猫館の管理人「鮎田冬馬」の手記と、1990年の江南孝明がその手記を読む章が交互に繰り返されながら、物語が進行していく。手記の内容は過去に黒猫館で起きた殺人事件の様子を語る物だった。江南の方でも鹿谷門実とともに手記を読み進め謎を解いていく。そして黒猫館に江南・鹿谷が辿り着いたとき、驚愕の事実が明らかになる!
感想
いきなり最大のネタバレをしますと、この小説の肝は叙述トリックです。館シリーズはいずれも、「館」の構造上の仕掛けと、叙述トリックから構成されるものが多いですが、特にこの「黒猫館の殺人」は叙述トリックが9割を占めると言っても過言ではありません。
叙述トリックについて
叙述トリックとは、筆者(今回の場合綾辻行人氏)が読者を騙すために地の文では嘘を言わず、読者の思い込みを誘導していくトリックです。叙述トリックにおいて重要なのは、読者に最後まで叙述トリックであると悟られないことはもちろんですが、私はそれ以上に①フェアであるか ②叙述トリックが事件の真相に深く関わっているか の2点が重要であると考えています。まず、①については推理小説では良く議論されることですが例え地の文で嘘を言っていなくても明らかに誤解を招くような表現や、例え登場人物のセリフであっても、合理的な理由なしに嘘の話をしていてはたとえ真相が分かっても納得がいかず驚きも半減してしまうと思います。②については、たとえ叙述トリックに読者が騙されたとしても、それが大して事件の真相に関与していなければ、「・・で?」となってしまします。そのため、叙述トリックによって隠されていた真実が分かった時、ドミノを倒すようにこれまでの複線が回収され、一気に真相に辿り着く、というのが叙述トリックの醍醐味だと私は考えています。
「黒猫館の殺人」における叙述トリック
上記の叙述トリックに重要な点が「黒猫館の殺人」では十分に満たされていると感じました。まず、①フェアであるかについてですが、手記なので地の文も含めて鮎田冬馬の目線で描かれているため、そこに嘘があったとしても文句は言えませんが、不自然な嘘は見られませんでした。また、後に回収される伏線もよく考えれば科学的に明らかに変であると分かる点ばかりであり、それを全く悟られないように自然な情景描写として記述している点は、秀逸としか言いようがありません。続いて、②叙述トリックが事件の真相に深く関与しているか、についてですが、これについても申し分ありません。叙述トリックが解けて明らかになる事実が、根底条件を覆し、これまで不可能だと思われていたことが可能だと分かり、そしてそれが事件の真相に繋がるというような見事な構成となっています。
最後に
大どんでん返しを謳う推理小説は数多くあれど、その多くが途中でネタが分かってしまったり、大して真相に意外性がなかったりする中で、この「黒猫館の殺人」は、叙述トリックを悟らせない巧みな文章と最後に待ち受ける文字通りスケールの大きな真相で必ずや読んだ人の期待を超えていってくれるでしょう。この記事を読んでから、間違い探し感覚で読んでみるのもまた一興でしょう。おそらく、いくつか不自然な点には気付かれることでしょう。しかしそこまで。60%の真相に辿り着いたとしても100%の真相に辿り着く方は少ないはずです。ぜひ挑戦してみて下さい。
ただしご注意を。これを超える叙述トリックにはなかなか出会えません