おもしろいゲーム・推理小説紹介

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推理小説、マンガ、ゲームなどの解説・感想

◯初めての方にお勧めの記事!

【9/24情報追記】スターオーシャン6 THE DIVINE FORCE

~はじめに~

本日は、2021年10月末に発表されたスターオーシャンシリーズ最新作「スターオーシャン6 THE DIVINE FORCE」について、公開されている情報を基に語っていきたいと思う。

 

 

 

            

 

 

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スターオーシャンシリーズとは

スターオーシャンシリーズは1996年に第一作が発売されたトライエースが主に開発を務めるSFファンタジーRPGである。これまでにナンバリングタイトル5作と外伝1作、その他関連書籍やソシャゲが展開されており、今年で25周年となる国産RPGとなっている。ゲームの特徴などについては下記の記事やサイトをご参照いただきたい。

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スターオーシャン6 THE DIVINE FORCEについて

本作はスターオーシャンシリーズ25周年記念作品として2022年に発売予定。前作に引き続き、あきまんがキャラクターデザインを手掛け、開発はトライエース、音楽は桜庭統となっており、シリーズファンにはおなじみの顔ぶれ。舞台となる時代は宇宙暦583年とのことで、今年サービスが終了した「スターオーシャンアナムネシス(宇宙暦539年)」の直後となっており、関連性も期待される。

これまでに、出ている情報で最も注目されているのが、「ダブルヒーローシステム」の復活だ。ダブルヒーローシステムは「スターオーシャン セカンドストーリー」で採用されたシステムで、二人の主人公から一人を選び、その主人公の視点で物語が展開していくというものだ。どちらの主人公を選ぶかによって同じストーリーでも見ている場面・視点が異なり、裏で起こっていた出来事などを別視点で楽しむことができる。このシステムによって、一度クリアして終わりではなく、少なくとも2度ストーリーを楽しむことができるため、満足感は高くなることだろう。

その他にもフィールドを飛行して自由自在に探索する様子や、シームレスで高速のバトルシーンなどが公開されており、いい意味でこれまでのシリーズの常識や通例を打ち壊す作品となりそうだ。情報はまだ出ていないが、シリーズでは連なった宇宙暦という歴史の中で起こった大きな出来事が物語の背景にある場合が多く、本作で起こる出来事が歴史にどのような影響を与えたのかや、他のシリーズ作品との関連性も気になるところだ。声優陣も一部公開されており、今話題の声優・花江夏樹なども採用になっており、注目を集めそうだ。また、個人的には「スターオーシャンTill the End of Timeスターオーシャン3) 」で作り込まれていたように、エキストラダンジョンややりこみ・ネタ要素がどの程度充実しているのかも気になるところ。

 

 

公開情報

6月29日に公開された「STAR OCEAN PROGRAM 特別編」にて各種最新情報が公開された。

www.youtube.com

 

◯発売日

  2022年10月27日(木)

 <Steam版は10月28日(金)>

 

  2022年6月30日より予約開始!

 

◯特典・価格など

  ・通常版 税込8778円

  ・DIGITAL DELUXE EDITION 税込11858円

  ・DIGITAL DELUXE EDITION UPGRADE 

税込3300円

  ・LIMITED EDITION 税込18000円

 

・早期購入特典

  ゲーム内ミニゲーム「ソーア」で使用できる駒(ポーン)。 トライエース作品より「レナス」「レザード」(ヴァルキリープロファイル)「ジャック」「リドリー」(ラジアータストーリーズ)の4体。

 

・予約特典

     スクエアエニックス e-STORE 

  2023年1月1日から1年間確認できる、オリジナルポスターカレンダー(B2サイズ)。B5サイズに折りたたんでお届け。

                         等、各種店舗により多種。

 

◯体験版配信!

 9月20日(火)に体験版の配信が決定!東京ゲームショウでも試遊台を出しているが参加できない多くの方は体験版で最速でプレイすることができる。冒頭から約2時間も遊ぶことができるとのこと。

 

<体験版プレイ感想>

・ストーリー序盤は安定のSF×未開惑星ファンタジーといった感じ。

・主人公(レイモンド)が銀河連邦の人間ではないので未開惑星保護条約は無視。

・バトルは前作よりもスムーズなシームレスバトルだが、AP制になった影響でサクサク感はやや低い。設定や操作の問題もあるが敵を倒した後に次の敵に自動でエイムがいきにくくやややりにくい。DUMAによるヴァンガードアサルトはマップ・戦闘中の移動に便利だが、敵が密集する中でのブラインドサイトは少々コツがいりそう。他のRPGなどをプレイしている方なら問題ないだろうが、従来のスターオーシャンシリーズとは戦闘の触り心地が異なる。

・マップは広大で探索がやや大変だがやりこみ要素ではある。前述のヴァンガードアサルトを使いこなす必要がある。子バーニィのを探すなどの要素もあり面白い。

・最初の展開はスターオーシャンセカンドストーリーをトレースしている感じがある。

・キャラボイスやキャラデザインは良い感じだが、唯一主人公・レイモンドの声が個人的にはあまり合っていないように感じ少々残念。

 


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◯その他

・「ヴァルキリーエリュシオン」との共同キャンペーン

  ポストカード、メドレー曲プレゼントなど

・毎週木曜日に4コマ漫画「スタレポ(スターオーシャンレポート)」

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・キャラクター情報

  レイモンド・ローレンス(CV.木村昴):本作の主人公1、武器:大剣   

  レティシア・オーシディアス(CV.水瀬いのり):本作の主人公2、武器:双剣

  エレナ(CV.種崎敦美):武器:変形武器

  アベラルド・ベルグホルム(CV.花江夏樹):武器:チャクラム 

  ミダス・フレグリード(CV.東地宏樹):武器:ステッキ

  ニーナ・デフォルジュ(CV.高橋李依):武器:ハンドベル

  マルキア・トラッセン(CV.日笠陽子):武器:ナックル

  マリエル・L・ケニー(CV.ファイルーズあい):武器:銃、格闘

  クロエ・キャナリス(CV.大坪由佳

  アントニオ・ローレンツ(CV.竹内良太

  ウェルチ・ビンヤード(CV.半場友恵

 

  ベランジュ・ガーフール(CV.鶴岡聡):ヴィープス3人組の一人

  ガストン・ゴーシュラ(CV.梶原岳人):ヴィープス3人組の一人

  ロラ・ジョイナス(CV.山村響):ヴィープス3人組の一人

 

・サブ要素

◯アイテムクリエーション:ウェルチの依頼達成で解放。キャラクターそれぞれに種類(鍛冶、料理など)が設定。才能が開花することでより優れた物を作製できるようになるセカンドストーリーに似た方式のよう。

◯プライベートアクション:選択肢によって感情値が変化しエンディングが変化していくシリーズ恒例のシステムが健在。

◯ソーア:シリーズキャラクターを模したポーン(駒)を用いてバトルするボードゲームNPCと対戦することで段位が上がる。ポーンはマップの様々なところに隠されている模様。組合せやスキルなど奥が深そう。

◯サブクエスト:町中でNPCから受注。前作と似たような感じか。ファストトラベル機能があればそれほど苦ではないかもしれない。

 

・主題歌

 HYDE:PANDORA

www.hyde.com

 

STAR OCEAN PROGRAM TGS2022 スペシャ

www.youtube.com

 

・レイモンド編冒頭ムービー公開

www.youtube.com

・発売日決定トレーラー公開

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・REPORTINGトレーラー#01「メインキャラクター&バトル編」公開 

www.youtube.com

・REPORTINGトレーラー#02「DUMA&VANGUARD ASSAULT編」公開 

www.youtube.com

・REPORTINGトレーラー#03「Villans, New Buddy, Skill&Action編」公開

www.youtube.com

 

・REPORTINGトレーラー#04「New Buddy, Character & Item Creation編」公開

www.youtube.com

また情報が追加され次第随時更新予定。

    

 

青柳碧人著「むかしむかしあるところに、死体がありました。」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは青柳碧人著「むかしむかしあるところに、死体がありました。」である。本作は昔話を基にしたミステリとして注目を集め続編も発売されている。本日はネタバレも挟みつつ感想を述べたいと思う。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 

 





 

~あらすじ~

 一寸法師、花咲かじいさん、鶴の恩返し、浦島太郎、桃太郎。どれのみんなが知っている物語だがなんだか様子が違うようだ。そのの裏・先にある真相とは?

 

 

~おもしろいポイント~

一寸法師の不在証明

 一寸法師が鬼を退治した頃、近くで殺人が発生。現場の入口はちょうど一寸法師だけが通れる程度に開いていたが、死体が目撃された当時彼は鬼の腹の中にいた。完璧と思われた不在証明。しかも打ち出の小槌は自分に対しては掛けられず、また生き物以外(無生物や死んだ生物)には効果が無いため一寸法師の無罪は明らかと思われた。しかしそこには一寸法師のずる賢い策略が潜んでいた。

 トリックの肝は打ち出の小槌で小さくした被害者の首に縄を掛け、外から再度打ち出の小槌で被害者を大きくすることで首を絞めて殺害したのだった。

 よく知っている一寸法師の物語が本格ミステリに変貌し驚いた。しかも伏線やヒントの出し方もうまく、ミステリ小説としての完成度も高いと思った。

 

②花咲か死者伝言

 花咲かじいさんが殺害された。村人達は犯人を捜すが中々見つからない。花咲かじいさんが飼っていたシロに似た野良犬も犯人を捜すが、鼻が悪いことも災いして中々見つからない。しかしやっと犯人を見つけた野良犬が取った行動とは?

 この物語では1編目とは異なりトリックよりは犯人や犯人を見つけた野良犬がとった行動が面白い。ズバリ犯人はおばあさんで、シロのおかげで手に入れた財宝をおじいさんが簡単に寄付したりして手放したことに我慢できなかったのだ。それに気付いた野良犬はおばあさんの畑にトリカブトを植え、植物に詳しくないおばあさんが将来それを食べて死ぬようにした上で殺された。

 本来の花咲かじいさんのようなハッピーエンドから一変し、ブラックジョークに満ちた真相・結末が面白かった。

 

③つるの倒叙がえし

 自分を助けてくれた男のために高価な布を織ったツルだったが、欲に目がくらんだ男はツルにもっと布を織るようにいい、どんどん人が変わっていく。男とツルの行き着く先とは。

 本編では犯人捜しと言うよりはタイトルの通り物語が無限に繰り返される点が面白い。物語序盤で借金を返せと言いに来た庄屋を殺してしまった男だったが、ツルの織る高価な布に目がくらんだ男はツルに布を織らせて成り上がり、遂には庄屋になってしまう。そして過去の庄屋のように金を貸した親友に金を返せと取り立てに行き、物語は無限に繰り返されていくのである。

 章を飛ばしながら読むことで、物語がループしているように読むことができるようになっており、うまい作りとなっている。個人的には少し物足りない気がした。

 

 

④密室龍宮城

 浦島太郎が連れられた竜宮城で伊勢エビが殺された。しかし伊勢エビは密室の中で死んでおり、自殺と思われた。浦島太郎は推理をしていくが真相は?

 本作では浦島太郎が探偵役として推理していくが、実は誤った真相に辿り着いてしまう。本当の犯人は浦島太郎を連れて来た亀で、復讐のために伊勢エビを殺し、更に浦島太郎に誤った犯人を推理させてもう一人のターゲットも追い込んだのだった。事件の肝は「ととき貝」と呼ばれる竜宮城で息ができるようにする貝。実は「止時貝」と書き、一定の範囲内の時の流れをゆっくりにするという効果があり、亀はこれを使って密室を作りだしたのだった。

 止時貝の真相も面白かったが、この止時貝の効力を示すヒントとして乙姫の従者の「わかし」が成長してしまって「ブリ」になってしまい、不審者と思われて追放されたシーンが印象的だった。

 

⑤絶海の鬼ヶ島

 浦島太郎が去った後、生き残った鬼達の物語。平穏に暮らしていた生き残りの鬼とその子孫達だったが。ある日一頭の鬼が殺され、更に次々と鬼が殺されていく。一頭、また一頭と殺されていき遂に誰もいなくなる。

 「そして誰もいなくなった」をベースにしたような作品。死んだと思われた鬼の中に犯人がいたパターン。しかも犯人の鬼は、桃太郎が生き残った鬼に惚れて成した子だったというトンデモ展開。これまでの4編の物語に登場した道具も登場していたがやや無理矢理感がある。また犯人の鬼が浦島太郎の子どもと示すヒントはあるが、そもそも人間と鬼が子を成すことができるという点は示されていない。最後に置く物語としてはややいまいちだった。

 

 

~最後に~

 全体を通して、昔話をベースにしたミステリという点は面白かった。ミステリの完成度としてはいわゆる本物にはやや劣る部分もあるが、読み物としては十分楽しめる作品であった。続編も出ているのでそのうち読んでみたいと思う。

 

 

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道尾秀介著「いけない」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは道尾秀介著「いけない」である。本作はこれまでに無い方式での謎解きや結末が楽しめるミステリとして話題を呼んだ。本日は私なりの解釈と感想について述べたいと思う。ネタバレ要素満載なので未読の方はご注意いただきたい。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 

 



 

~あらすじ~

 ある町で起こるいくつかの事件。それらの事件は表面上解決され時代は進んでいくが、そこには隠された真相がある。各章の最後に挿入された1枚の写真には文章では語られなかったその章の真相が映り込んでいる。写真に隠された真相とは?

 

 

~おもしろいポイント~

①弓投げの崖を見てはいけない

 「弓投げの崖」という自殺のスポット近くのトンネルで事故が発生。事故を起こした若者達は相手の運転手がまだ息があったにもかかわらずハンドルに叩き付け、金を奪って逃走。

 その後の警察の捜査で容疑者が浮上したがその矢先にその一人が事故のあったトンネル近くで頭を殴られて殺害された。警察は殺害された容疑者の仲間を取り調べるがうち一人が被害者の妻に復讐に向かったことが判明。警察官の男性は被害者の妻の元へと急ぐ。

 この物語では中盤で、被害者の男性はハンドルに頭を叩き付けられたが生きており、死亡したのは男性の息子であったことが明かされる。被害者の男性は盲目になっていたが、執念で容疑者の若者を待ち伏せて殺害したのだった。そして最後に男性は妻に止められながらも復讐を続けるために家の外に飛び出し、直後に車が何かをはねる音がしてこの章が終わる。

 最後のページに載せられた写真には事件のあったトンネルと被害者の自宅の場所、周囲の施設などが載った地図が記されている。この写真と本編の文章を読むと最後の場面で車に撥ねられたのが誰か想像が付くというわけだ(あくまで想像で、真実は後の章で語られる)。撥ねられた候補は、被害者の男性・被害者の妻を殺そうとする容疑者の仲間・被害者の妻を助けようとする警察官の3人。地図と文章からはねた車は被害者男性の自宅を左に見ながら通過しようした際に右から飛び出した人をはねたことが分かる(この時点で被害者の男性は除外される)。また、容疑者の仲間は近くの商店街を南に抜けてから被害者宅へ向かおうとしているのに対し、警察官は途中で横道に抜けている。被害者宅の正面に出ている道は警察官の通った横道であることから跳ねられたのは警察官ではないかと予想できる(被害者の仲間の可能性もなくはない)。

 

②その話を聞かせてはいけない

 中国から引っ越してきて中華料理店を営んでいる中国人の家族。そこの息子はある日、万引きに入った文具店で店主が殺されている可能性に気付く。

 名前のことで馬鹿にされて友だちがいなかったその子は見たことを誰にも話せずにいたが、嫌っているクラスメートに詰め寄られ打ち明けてしまう。しかし見間違えだと言われてしまい、再び文具店を尋ねると殺されたと思った店主のおばさんは生きており、勘違いだったと安堵する。

 しかしその夜のニュースで、文具店のおじさんが死体で見つかったとの報道がある。真相に気付いたその子は文具店のおばさんとその甥に拉致され、弓投げの崖に落とされそうになる。果たしてどうやって助かるのか。

 この章の最後に挿入された写真はおばさんと甥がインタビューを受けるニュース画面で、画面の端に子どもが車に忍び込む姿が映っている。おそらく主人公の子どもが唯一殺人現場を見たことを話したクラスメートが車に忍び込んでおり、崖で主人公の子どもが落とされそうになった時におばさんと甥を崖下に突き落としたことが分かる。その後の章で嫌っていたこのクラスメートと主人公の子どもが仲良しになって遊んでいる場面がある。

 

③絵の謎に気づいてはいけない

 ある宗教団体の女性が自宅のドアノブに首を吊って死んでいるのが発見された。事件を捜査していった先輩刑事と新人刑事のペアだったが、その途中で被害者が住んでいたアパートの管理会社社長が死体で発見された。

 一緒に発見されたメモ帳にはその社長が犯人に気付き、犯人を脅して金を取ろうとしていたことと、電話で話している隙に犯人が何か現場をいじったこと、ドアノブよりも上で首を吊っているような絵が描かれていた。おそらく社長は犯人に逆に殺されてしまったのだろうが、絵の意味がさっぱり分からない。また、犯人が鍵の掛かった密室で被害者を首つりで殺した方法も分からないままだった。

 行き詰まった刑事ペアだったが、二人で飲んでいるときに新人の刑事がスマートロックにより外側から鍵を掛けた可能性に気付くが、翌朝死体で見つかり事件は自殺として処理される。

 この章の最後に挿入された写真にはメモに書かれた絵が映っている。しかし描かれているのは死体ではなく、ドア上部のスマートロックを矢印で示した絵だった。本編中に書かれていたドアノブより上で首を吊っているような絵はこの絵を隠すために書き足された物だったのだ。新人刑事のペアだった先輩刑事は新興宗教の信者で、真相に気付いた者を殺していた。

 

④街の平和を信じてはいけない

 この章ではこれまでの真相が暗に語られる。1章で事故に遭い盲目になった男性は、これまでの復讐を妻に紙に書いてもらい、自首しようと刑事に会いに行く。

 一方その相手の刑事は、新興宗教信者として信者がスピード違反で起こした死亡事故をもみ消したり(1章)、その事を告白しようとする信者を自殺に見せかけて殺し、更に真相に気付いた新米刑事も殺したり(3章)して疲れ果て、自白した手紙を鞄に入れていたがまだ誰にを渡せずにいた。

 刑事に手紙を渡しに行く途中で自転車に乗った子ども2人と出会う。この子どもたちは2章で出てきた中国人の子どもとそのクラスメートだ。中国人の子どもは幼稚園の時、友だちにいじめられていたところを盲目になった男性に助けられて感謝していることを伝える。刑事に告白文を渡した男性だったが、子どもの感謝の言葉を聞き、もう少し妻と一緒にすごそうとそっと手紙をカバンから抜き出す。しかしその手紙は刑事が書いた方の告白文であった。

 それに気付いた刑事はこれで自分の罪が全て明らかになると考えるが、盲目の男性は気付いて折らず手紙を破り捨ててしまう。一方刑事の下に残った男性の告白文を見た刑事だったが首をかしげるのだった。

 この章の最後に挿入された写真は白紙の便箋。盲目のため妻に代筆してもらった男性だったが妻は書く振りをして何も書いていなかったようだ。こうして誰の罪も明らかにされないまま街には平和な時が流れる。

 

 上述の通り、舞台となったこの街では様々な凶悪な事件が起こっているにも関わらずそのほとんどが表に出てきておらず、偽りの平和を享受しているように思われ不気味さを感じる。またそれぞれの事件も人間の醜さや恐ろしさが感じられ、道尾秀介らしい作品に思われた。

 

~最後に~

 本作は読者に真相の解釈を委ねる、あえて文章で真相を記さないというこれまでのミステリと一線を画する試みが成されている。解釈は人それぞれのため真相は上述したものの一つではないかもしれない。一度呼んだかもぜひもう一度読んで他の真相を想像してみてはどうだろうか。

 

 

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辻村深月著「かがみの孤城」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは辻村深月著「かがみの孤城」である。本作は2018年に本屋大賞を受賞した作品で、2022年に劇場アニメ化が発表され再び注目を集めている。ミステリでは無いが真相を予測して読んでいく展開は似ているので読んでみた感想を述べたいと思う。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 

 

 

~あらすじ~

 主人公はあることが原因で学校に通っていない中学生。彼女はある日部屋の鏡が光っているのを見つけそしてその中へと吸い込まれ、現実のものとは思えない城にたどりつく。そこで出会ったのは狼の面をした少女。集められたのは主人公と同年代の7人の少年少女達。彼女たちに待っていたものとは?

 

 

~おもしろいポイント~

①涙が止まらないストーリー

 本作で登場する7人の子どもたちは、全員が何らかの理由で学校に行けていない、もしくは希望する学校に通えていない。彼女たちが抱える事情はそれぞれで、合わない友だちがいたり、親の方針だったり、本人の性格の問題だったり様々だ。彼女たちが置かれている状況を考え、周囲の心ない言葉や理解の無い態度、恐怖、不安が巧みに描写されており、登場人物に感情移入してしまうと涙が止まらなくなる。どうか彼女たちの冒険の結末がハッピーエンドでありますようにと願わずにはいられない。

 

②謎だらけの世界

 鏡に吸い込まれて集められた7人達は辿り着いた城でなんでも一つだけ願いが叶う鍵を探すように言われる。物語終盤まで7人ともそれほど必死になって鍵を探す描写は無く、似た境遇の仲間が集まったこの空間でのひとときを楽しむことがメインに描かれてはいるが、やはり最大の謎は鍵はどこにあるのかという事だろう。他にも、集められた7人の関係性狼の面をかぶった少女の正体、この城の存在意義など物語中には謎がいっぱいある。それらの謎を解くためのヒント・伏線は実は序盤からあちこちに散りばめられており、それらを終盤に一気に回収していく様は爽快だ。こういった展開はミステリ小説にも通ずるものがあると思う。おそらく一部の謎についてはおおかた察しが付く読者も多いだろうが、全ての伏線に気付き全ての謎を解いている読者は少ないのでは無いかと思う。

 

③主人公の成長

 主人公の少女はあることが理由で学校に通っておらず、今では外に出ることすら恐ろしいと感じるまでになってしまっていた。そんな彼女が、不思議な城で似た境遇の仲間達と出会い、ぶつかりながらも対話を重ね絆を強めていく。現実では会うことの無い彼らだが、城での経験は彼らの心境にも変化をもたらし、現実でもこれまではとても無理だったような行動を取ることもできるようになっていく。そして終盤には主人公は一人でみんなを助けるような行動すら取っている。そういった仲間との成長を見られるのも本作の魅力だ。しかし一方でそういった魅力があるからこそ、中盤で明かされる「願いを叶えるとこの城での記憶は全て無くなる」という条件が主人公達を、そして読者を苦しめる。

 

 

 

~最後に~

 本作は「不思議の国のアリス」を現代風に落とし込み更にひねりを加えたような作品だった。前述の通り時折涙してしまうほど感情移入しやすい文章・魅力的なストーリーであった。今後アニメを見る方も、見る予定の無い方もぜひ一度読んでみていただきたい。

 

 

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【9/18更新】祝・ヴァルキリーシリーズ最新作「ヴァルキリーエリュシオン」2022年発売決定!

~はじめに~

本日は、つい先日発表されたヴァルキリーシリーズ最新作「ヴァルキリーエリュシオン」について、公開されている情報を基に語っていきたいと思う。

 

 

 

            

 

 

 

 

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ヴァルキリーシリーズとは

ヴァルキリーシリーズは1999年に第1作が発売されたトライエースが主に開発を務める北欧神話をモチーフとした傑作RPGである。これまでにコンシューマーゲームとして3本、ソシャゲとして1本が展開されている。コンシューマーゲームの3作目「ヴァルキリープロファイル 咎を背負う者」の発売が2008年だったため、実に14年ぶりの新作コンシューマーゲームとなる。ゲームの特徴などについては下記の記事をご参照いただきたい。

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ヴァルキリー エリュシオン について

  本作は、シリーズ初のアクションRPGとしてPS4/PS5/Steamで発売されることが発表されている。公開されている映像を見る限りアクションRPGに進化したことでアクション性が格段に増し、より自由により迫力ある戦闘が楽しめるようだ。

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ヴァルキリープロファイルシリーズのファンとしては、三姉妹で唯一主人公になっていないことをネタにされているアーリィ・ヴァルキュリアの登場を期待してしまうが、少なくとも主人公ではなさそうだ(笑)。ただトレーラーの最後にアーリィっぽい装備の人が登場しており、開発側もそこら辺は十分意識していそう。

タイトルロゴに書かれた文字は「Upon the scales to weigh, a choice that must be made」。ここに書かれた文章はこれまでのシリーズ作品でも物語の核心や攻略のヒントとなっていたが今回は果たしてどういった意味を持つのか。

 

音楽はヴァルキリープロファイルシリーズやスターオーシャンシリーズでお馴染みの、桜庭統さんが引き続き務めるとのことで期待が高まる。開発はトライエースではなくソレイユとのこと。シリーズファンとしては少し残念だが、また新しいヴァルキリーの一面に期待したい。(トライエーススターオーシャン6で忙しいのかもしれない)

 

ヴァルキリープロファイルと世界観は共有するものの、あくまで派生作品という位置づけらしく、ヴァルキリープロファイルとはまた違ったヴァルキリー達の物語を楽しめそうだ。シリーズになじみのない方でもこの作品から遊び始めていただけたらうれしい。

 

今年はスターオーシャンシリーズ最新作「スターオーシャン6 THE DIVINE FORCE 」の発売も発表されており、トライエースファンの私からすると最高だ。

公式ツイッターなどで最新情報をチェックしていきたい。

twitter.com

 

◯体験版配信

 発売を目前にした現在、製品版に一部データを引き継げる体験版を配信中!東京ゲームショウでも試遊台を出しているが、多くの参加できない方達にとって朗報となった。

 

・体験版プレイ感想

 操作は慣れが必要だが慣れればシームレスバトルからのスピーディな戦闘が爽快。戦闘は属性の相性と回避、ソウルチェインによる移動がキーとなりそう。ソウルチェインによる移動などは来月同じくスクエアエニックスから発売予定のスターオーシャン6でのDUMAによる移動と類似しており、両方プレイされる方は近い感覚でプレイできるかもしれない。絵がとてもきれいで細部まで作り込んである。マップは広く、ソウルチェインを使って上下の探索も可能で遊びだしたら止まらなくなる。 


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○7月6日公開情報


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発売日

2022年9月29日(Steam版:11月12日)

価格

通常版8580円(税込)

コレクターズエディション19980円(税込)

 

さらに!

ヴァルキリープロファイル-レナス-」がPS4/PS5用ダウンロード版に移植決定。ヴァルキリーエリュシオンと同日に発売開始。これらがセットになった「Didital Deluxe Edition」10780円(税込)も発売予定。

 

無料追加コンテンツ

ヒルドズヴェンジェンスヒルドをプレイアブルキャラとして操作可能

・セラフィックゲート:シリーズお馴染みの裏ダンジョン。タイムアタックとして実装予定とのこと

・新難易度:VERYHARD, VALKYRIE

 

キャラクター情報

 ○ヴァルキリー(CV鬼頭明里

 ○オーディン(CV津田健次郎

 ○フェンリル(CV中尾隆聖

 ○アルマン(CV花江夏樹

 ◯ビルド(謎の黒いヴァルキリー) (CV石川由依

 

エインフェリア

 ○イーゴン(CV稲田徹

 ○サイファ(CV石田彰

 ○クリストフェル(CV内田真礼

 ○タイカ(CV早見沙織

 

バトルシステム・その他

◯エインフェリア召喚:アイテムなどによって貯まる「ソウルゲージ」を消費して召  喚。エインフェリアの属性がヴァルキリーにも付与。

 

◯ディバインアーツ:特殊技。アイテムやコンボで貯まる「アーツゲージ」を消費して使用。お馴染みの「ニーベルンヴァレスティ」や「バーンストーム」「ボイドエクストリーム」「キュアプラムス」なども。

 

◯ソウルチェイン:遠くのポイントまで糸を伸ばして移動する能力。「ヴァルキリープロファイルシリーズ」でお馴染みの晶石を使った探索アクションや敵との距離を詰めるのに使用可能か。

 

◯武器:同時に2つまで装備可能。武器はレベルアップ可能でルーンなどを装着して更に強化・カスタムすることができる。

 

◯スキル:ヴァルキリーの能力やアクションを強化・解放できる。

 

◯:ヴィーンゴールヴ:過去に倒した敵を召喚して戦闘訓練を行うことが可能。

 

サウンドトラック

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ティザートレーラー

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トレーラー#2

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(改訂)ゲーム「スターオーシャン3 Till the End of Time ディレクターズカット」を語り尽くす

~はじめに~

今回ご紹介するのは、「スターオーシャン3 Till the End of Time ディレクターズカット(SO3DC)である。以前、このブログの記事で「スターオーシャンシリーズ」については語らせていただいたが、その中でもSO3DCはリマスター版も合わせると1000時間以上プレイした思い入れの強いゲームであり、まだ語り足りなかったため本記事でそのすばらしさを詳細に語りたいと思う。なお、シリーズの概要や共通のシステムなどについては下記の記事を参照されたい。

 

*ネタバレも含むので、初見でプレイされたい方はご注意下さい。

 

 

                                                              

 

 

 

 

 

 

~あらすじ~

宇宙歴772年(西暦2858年)、地球をはじめとする多くの惑星が加盟する「銀河連邦」は栄華を極め、銀河の1/3の探索を終えていた。地球人の青年「フェイト・ラインゴット(CV.保志総一朗)」は両親(ロキシ・リョウコ)と幼なじみの「ソフィア・エスティー(CV.榎本温子)」と共に保養惑星・ハイダに旅行に訪れていた。両親と幼なじみと過ごす平和な時間が流れていたが、突如としてハイダを謎の戦闘艦が襲う。そしてここから、フェイト達はこれまで知らなかった自分たちの運命と向き合って行くこととなるのだった・・・。

 

 

 

 

 

 

~SO3DCの魅力~

 

①ストーリー編 (斜め読み推奨)

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前半でパーティを組むネル・フェイト・クリフ 髪の色から信号トリオと呼ばれる
①-1:ハイダ襲撃~ヴァンガード3号星到着

物語は、保養惑星・ハイダのホテルの中での主人公・フェイトと幼なじみ・ソフィアとの会話から始まる。ほのぼのとしており、リア充感満載な雰囲気で、これから宇宙を巡る冒険に出るとは夢にも思っていない。

ここでは、SO3DCのエンディングテーマソングである、MISIA「飛び方を忘れた小さな鳥」をBGMとして聴くことができる。ストーリー中、この歌を聴くことができるのはこことエンディングのみなので非常に貴重だ。なぜこんな大物がテーマソングを歌ってくれたのかは謎に包まれている。

平和な時間を過ごすフェイト達であったが、突如戦闘艦がハイダを襲撃する。判明したその正体は「バンデーン」という銀河連邦と敵対する惑星国家であった。敵対しているとは言え、こんな軍事的に重要でもない保養惑星を襲って何の意味があるのか。そんなことを考える暇も無く、フェイト達は避難するのであった。両親とはぐれ、バンデーンの探査ロボットとの戦闘を乗り越えてやっとの思いで輸送艦・ヘルアに搭乗して避難先の惑星へと移動するフェイト達であったが、追ってきたバンデーン艦の襲撃を受ける。なぜ、こんな輸送艦をわざわざ追ってきたのか。そんなことを考える暇も無く、フェイト達は脱出ポッドへと急ぐ。脱出ポットは一人用であり、嫌がるソフィアをポットに乗せた後、自分も別のポッドに乗り込みなんとか無事に脱出することに成功する。

脱出ポッドは、近くの銀河連邦所属の惑星や基地に行き先が自動設定されるのだが、あいにく近くにそういった所が無く、フェイトを乗せたポッドは残りの燃料で到着可能な範囲で人類が生存可能な惑星へと向かうことになる。それが、ヴァンガード3号星、次の冒険の舞台である。

 

①-2:ヴァンガード到着~ヴァンガード脱出

ヴァンガード3号星に到着したフェイト。そこは科学技術が未発達で、地球での16世紀程度の技術力しか無い未開惑星だった。脱出ポッドは大気圏突入はできるが脱出はできず、フェイトはこの惑星で救難信号を受けた艦が迎えにくるのを待つことになる。脱出ポッドには生命維持装置が付いているためそのままでも死ぬことはないのだが、フェイトは食料や脱出への手がかりを求めて周囲を探索することとする。

ヴァンガード3号星のような未開惑星に地球人のような先進惑星の人が干渉することは、本来「未開惑星保護条約」で禁止されている。各惑星は自らの力で進化すべきだとしているためだ(この条約制定の成り行きは「スターオーシャン4-THE LAST HOPE-」で語られている)。フェイトのように緊急時の場合はこの限りではないが、極力干渉を控えるように定められている。そこでフェイトは、日頃シュミレーターゲームで使い慣れている剣をレプリケーター(エネルギーから物質をつくり出せる機械)で作り、それを携帯して周囲の探索に向かった。

村を発見したフェイトだったが、疲労で倒れてしまう。そこを原住民のノキアミナの兄妹に助けられる(原住民と言語は違うが、救難信号を発信しているクオッドスキャナー(周囲の生命反応を探知したり、食料が飲食可能か判断したりなど様々な機能を持つ携帯)に翻訳機が内蔵されているため問題なく会話できた)。助けて貰ったお礼に壊れたオルゴールを直してあげることにしたフェイトだったが、その部品を作るためにポッドに戻ると、何とポッドが破壊されてしまっているのを発見する。途方に暮れて村に戻ったフェイトに、今度はノキアが失踪したという知らせが入る。どうやら、ポッドを壊したのは周辺に住み着いたノートンという悪党で、それを知ったノキアは部品を取り戻しに行ったらしい。

ノキアを助けるため、悪党の住処に乗り込むフェイト。途中、チンピラのバスター・マカフィー・テペキーを倒し、ボスのノートンの元に辿り着く(チンピラの名前とノートンアンチウイルスソフトの名前が由来。ゲーム終盤で明らかになるある事実と合わせて考えると感慨深い)。ノキアを折から助け出し、逃げる途中でノートンに見つかってしまうフェイト。そしてノートンは何と、先進惑星の武器である「フェイズガン(エネルギーを打ち出すレーザー銃)」を持っている!そう、ノートンはフェイトと同じ先進惑星出身でこの惑星に不時着した奴だったのだ。しかもノートンは犯罪者で、護送の途中で船をいじって墜落させたらしい。脱出できないと悟ったノートンはこの星に「俺様の俺様による俺様のための国」というどっかの偉い人が言ってたことと180°違う国を作ることにしたのだそう。

窮地に陥るフェイト。そこに颯爽と現れたのが、我らが兄貴クリフ・フィッターCV.東地宏樹)である。彼は反銀河連邦組織「クォーク」に所属するクラウストロ人(身体能力が地球人の数倍で、銃撃をも躱すことができる)であった。クリフと共にノートンを倒したフェイトだが、なぜ反銀河連邦組織の人間が自分を迎えにきたのか分からず困惑する。クリフもその目的を曖昧にしており、フェイトは不信感を抱くも、現状付いていく以外の選択肢はない。ノキアを村に送り届けたフェイトは、クリフの乗ってきた艦「イーグル」に乗り込むのであった。

 

①-3:イーグル搭乗~エリクール2号星不時着

イーグルに乗り込んだフェイト。そこにはクリフと同じクラウストロ人の女性ミラージュ・コーストCV.篠原恵美)が乗っていた(ミラージュはSO3では仲間にできなかったが、SO3DCでプレイアブル化された!これを待ち望んでいたファンは多く、特に男性ファンからは歓喜の声が上がったそう)。クリフ・ミラージュと共にクォークの本拠地へ向かう途中、またもバンデーン艦の攻撃を受ける。攻撃され、撃墜されそうになりながらもクリフの「」でなんとか逃げ出すことに成功する。しかし安心したのも束の間、エンジンがスクラムし、イーグルは近くの惑星・エリクール2号星に不時着することとなる。

 

①-4:アーリグリフ脱出~シランド到着

不時着したエリクール2号星は地球の17世紀程度の科学力しかない未開惑星。しかも街のど真ん中に不時着してしまった。やむを得ず艦を出たフェイトとクリフだったが、現地住民に捕まってしまう(ミラージュはこの時脱出せず、後に無事脱出する)。捕らわれたフェイトとクリフは敵国のスパイと思われ拷問に合うが、先進惑星から来たというわけにもいかない。そんな時、捕まっている国(アーリグリフ)の敵国・シーハーツの隠密ネル・ゼルファーCV.浅川悠)が忍び込んできた。ネルが突きつけた条件は、シーハーツの兵器開発に協力するかここで死ぬか。先進惑星の自分が兵器開発を手伝ったら大量殺人に手を貸すことになると迷うフェイト。しかし、美人に目が無いクリフの「」でネルに協力することとにした二人は、脱獄を果たしシーハーツの首都・シランドを目指す。

脱獄したファイト達はまず、国境の町アリアスを目指すのだが、道中、フェイトが謎の頭痛に襲われ、気を失ってしまう。やむを得ず敵国の街カルサアで宿を取る一行。フェイトの頭痛は回復したが、国境が封鎖されてしまったため山道を通って国境を抜け、無事にアリアスまで辿り着く。一晩疲れを癒したフェイト達だったが、翌日、ネルがいなくなっていることに気付く。ネルの親友にして指揮官のクレア・ラーズバード(ディレクターズカット版でプレイアブル化が最も期待されたキャラだったが、男女比などを考慮された結果、何と彼女の父親アドレー・ラーズバードが後に仲間となる。このことは、DC版最大の失敗と言われている)は、ネルは別の任務に就いただけだと言ったが、昨晩寝室にネルが来て無言でお辞儀をして出て行ったのを狸寝入りして知っていたクリフが問いただしたところ、ネルがフェイト達を逃がすために捕まった自分の部下ファリン・タイネーブを助けに行ったことが判明。フェイトとクリフはすぐさまネルを追いかけ、敵を倒して捕まっている二人を救い出す。そこに将軍クラスの強敵アルベル・ノックスCV.千葉伸一)が現れるが、弱い者いじめは趣味じゃないと見逃される。屈辱ながらも助かった一行はアリアスに戻る。謝るネルと共に一行は次の街ペターニへと向かう

ペターニに着いた一行。自由行動となったフェイトの前に、ここにいるはずのない幼なじみソフィアそっくりの少女アミーナが現れる。病弱の彼女は花を売りながら集めると願いが叶うというパルミラの千本花を集め、離ればなれになっている幼なじみとの再会を願っているという。ソフィアそっくりの彼女に感情移入していたフェイトの元に翌日、アミーナが山で花を摘んでいる途中に発作で倒れたと知らせが入る。急いで助けに行くフェイト。途中、山賊に捕まっていた狸の亜人ロジャー・S・ハクスリーを助け(助けないことも可能で、その場合はエンディングで檻に入った状態で登場する)、手伝って貰いながらアミーナの救出に成功する。アミーナとの一連のやり取りで、自分の作った兵器によって多くの人が死んでしまうかもしれないが、その兵器で戦争が早く終わり多くの人を幸せにできる可能性を信じたいと思うようになったフェイトは、最終目的地である聖王都・シランドを目指す。

 

①-5:シランド到着~バンデーン襲来

シランドに到着したフェイト・クリフは早速兵器開発を手伝うことに。見せられた兵器サンダー・アローは何と、紋章術(いわゆる魔法、この国では施術と呼ばれる)を電気エネルギーに変換して蓄積し発射するという、この惑星にあるはずの無いオーバーテクノロジーの兵器だった(このようなオーバーテクノロジーが存在するのはエレナという女性が知識を教えたからなのだが、この女性の正体は本編では明らかにされず、公式設定資料集で明らかにされている)。この兵器を完成させるために、伝導率の良い銅が必要だと見抜いたフェイトは、敵国の鉱山から銅を採取する。しかし、持ち帰る途中アルベル・ノックスとの再開を果たす。今度は戦闘になるもなんとか撃破するが、フェイトは、彼と同じで弱い者いじめの趣味はないとかなり腹黒い発言で見逃してやる。屈辱にもだえるアルベルを尻目に銅を持ち帰った一行の前に倒れているアミーナとそれを介護しているミラージュとの再開を果たす。なんとアミーナの幼なじみは兵器開発担当者のディオンで、会うためにやって来たのだそう。ここまで来るのに体力を使いかなり危険な状態だったが、なんとかディオンとの再開を果たし、ディオンは戦争に必ず勝利することを誓う。また、ここでこの国最強の戦士であるアドレー・ラーズバード(上裸のムキムキのおっさんで刀を身に付けているが魔法で戦うという謎のキャラ、クレアの実の父親)が仲間になる。一行は完成した兵器と共に前線の街アリアスへと向かう。

そして、ついに始まった戦争。フェイト達も参戦し、敵の将軍ヴォックスと戦闘を開始する。一進一退の戦闘が続くさなか、突如としてバンデーンの戦闘艦が現れ地上を攻撃。一帯は火の海となる。お互いに敵の新兵器だと勘違いしたシーハーツとアーリグリフの兵士達がバンデーン艦を攻撃するも全く効果は無く(技術レベルが違いすぎる)逆に反撃されて虐殺されてしまう。そしてディオンもこの反撃の被害を受け瀕死の重傷を負う。茫然自失となるフェイトに、クリフが「逃げるぞ!捕まりたいのか!」と言ってしまう。この言葉にフェイトは「捕まる?バンデーンは僕を狙ってきているのか!?」と気付いてしまう。だがそう考えれば何もない保養惑星であるハイダが襲われたことも、輸送艦ヘルアが襲われたことも、イーグルやここが襲われたことも説明が付く。そう気付いたフェイトは、自分に何の価値があってこんなに多くの人々が犠牲になっているんだと嘆き、慟哭する。その瞬間、フェイトの額に紋章が広がり、紋章は大きくなって人の姿を取り、バンデーン艦を貫く光の矢を放った。光に包まれたバンデーン艦は完全に消滅し、周囲は静寂に包まれる。フェイトは気を失っており、ばったりと倒れ込むのであった(カッコイイ映像イベント①)。

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破壊の力「ディストラクション」が覚醒し、バンデーン艦を撃墜する
①-6:バンデーン艦撃退~エリクール2号星脱出

バンデーン艦の登場にもはや戦争どころではなくなった両国はそれぞれの国へ帰っていった。そして、目覚めたフェイト(バンデーン艦を消し去った記憶は無い)に、ディオンが瀕死だという知らせが入る。瀕死のディオンを元気づけるために療養中のアミーナを連れてきたフェイトだったが、ディオンは息絶え、同時にアミーナも息絶えてしまう。この悲劇に慟哭するフェイト。自分のせいだと責めるフェイトと慰めるクリフに、ネル達エリクール人は二人は何者かと問いかける。バンデーン艦やフェイトの紋章などあり得ない者を見たのだから当然である。もう隠せないと決心し説明し始めようとしたとき、再びバンデーン艦が襲来する。しかしそのバンデーン艦は後から現れた小型艦によって撃墜されてしまう。そして目の前にトランスポートで現れた一人の女性。この女性こそ反銀河連邦組織クォークのリーダーマリア・トレイターCV.根谷美智子)であった。クリフ達が到着しないのを不審に思い迎えに来たのだ。しかし、乗ってきた船は撃墜され、本艦の到着を待つ必要があるという。それまでの間、フェイト達と話をすることとなったが、そこでマリアがフェイトに告げたのはフェイトの父親ロキシがマリアに紋章遺伝学の人体実験を施し人現兵器にしたと言うこと、そして実験体はもう一人いてそれはフェイト自身だと言うことだった。信じられないフェイトにマリアは、自身の力アルティネイション(物質の性質を改変する力)を見せ、バンデーン艦を消滅させたのがフェイトの力・ディストラクション(破壊する力)だと言うことはフェイト以外の全員が知っていると告げる。とても信じられないが信じないわけにも行かず、バンデーンに捕まっているというロキシを助け出し、なぜこんなことをしたのか問いただすことを決意する。次にネル達現地人に自分たちの素性を説明する一行。とても信じられない内容に激怒する人もいる中、ネルはフェイト達が信用するに足る人物であると明言する。その時、バンデーンの残党がシーハーツの国宝・セフィラを狙って襲撃してきたのとの知らせを受ける。調べてみるとセフィラはオーパーツと呼ばれる先進惑星ですら創り出せない技術水準の物質であり、それ故に狙われたことが判明。ネルと共にセフィラ守護を買って出たフェイト達は、無事にバンデーン残党を倒しセフィラ守護に成功する。この働きによりフェイト達の株も上がった。

しかし、この星から脱出するには本艦が来た時に妨害してくるであろう別のバンデーン艦を地上から牽制する必要がある。そこで、先ほどまで戦争をしていたアーリグリフと協力し、サンダーアローをドラゴンの背中に乗せて戦ってはどうかという話になる。アーリグリフも先の戦争で大ダメージを負っており、戦争を推し進めていたヴォックスもバンデーンの攻撃で死亡していたことなどから両国が協力することに。フェイト達に負けたことで反逆罪に問われて捕まっていたアルベルと共に、めちゃくちゃおっきいドラゴン・クロセルを従わせ、背中に改良したサンダーアローを乗せて準備万端。クォークの本艦とタイミングを合わせて戦闘を開始するも、バンデーン艦は強く本艦が撃墜されてしまいそうになる。その瞬間、光の矢がバンデーン艦を貫き撃墜する。訳は分からないながらも助かった形となった一行は、ネル達に別れを告げ本艦に乗ってエリクールを後にする。

 

①-7:エリクール脱出からFD空間突入

エリクールを後にした一行。先ほどの光線を分析した結果、5万光年以上離れた銀河の彼方から地球に向かって放たれた物であり、エネルギークラスは3.2(クラス1が太陽クラスの恒星が1μ秒に放つエネルギー、クラスが1上がるとエネルギーは1000倍)であり、銀河連邦が有する最強の兵器クリエイション砲のクラス2を遙かに上回る威力であることが判明する。地球には惑星を丸ごと覆う惑星シールドが備わっているが、それでも防ぎ切れず、被害が出たという。その事実に唖然としている中、バンデーンの旗艦と銀河連邦の戦闘艦から同時に通信が入る。バンデーンはフェイトの父親ロキシ・ラインゴットと幼なじみのソフィアを捕まえておりフェイトと交換しろとの要求、銀河連邦はフェイトを渡さず到着まで足止めしてほしいとのことだった。バンデーン艦の対処は銀河連邦に任せるとして、フェイト達は人質交換に見せかけて人質を奪還すべく、交換場所に指定されたエリクール2号星に再び降り立つ。事前の行動によってネル・ロジャー・アルベルの内一人が助けに来てくれ、苦戦するも人質を奪還し、銀河連邦と協力してバンデーン旗艦を撃破したのだが、最後の悪あがきで敵の司令官がフェイトを殺そうとしたのをロキシが庇い、「ムーンベース(月の軌道上にある宇宙基地)の研究所へ向かえ」と言い残して死亡してしまう。

悲しみに暮れながらも、前を向きムーンベースに行くことを決意したフェイト。銀河連邦の基地であるため反銀河連邦の艦で向かうわけにも行かず、銀河連邦の戦闘艦・アクアエリーに乗り込む。船長のヴィスコムに協力して貰ってムーンベースに到着した一行は、ハイダで会ったサーカス団の少女スフレ・ロセッティと再開しながら研究所に到着し、そこで隠された映像データを発見する(マリアの遺伝子情報がキーとなっていた)。その映像の中には、ロキシ達がタイムゲートという時間を行き来できるオーパーツスターオーシャン1に登場する)の調査を行った結果、このゲートがFour Dimention人(FD人)、つまり自分たちより一つ上の次元に住む者達によって創られた物であり、タイムゲートはFD空間への入口で、時間移動はFD空間に侵入しようとしたのをブロックした結果だったこと、FD人こそが我々の世界を創った創造主である可能性があること、そして門が言葉を発しこの世界(=エターナルスフィアと呼ばれる)の技術力が発達しすぎていつFD人に危害を加える恐れがあるため近い将来エターナルスフィアを滅ぼすと宣告を受けたことが記録されていた。そしてロキシ達が滅びに抵抗するために、自分たちの子どもであるフェイト・マリアそしてソフィアにも人体実験を行い、遺伝子に紋章を刻み込んでFD人に対抗できる力を与えたのだという衝撃の真実を伝える。ロキシ達は、フェイト達が滅びを受け入れるのならそれでも良いと言い、自分たちの未来は自分たちで決めてほしいと言い残す。呆然となる一行であったが、父達の意思を受け継いだフェイト達はタイムゲートを通ってFD人空間へと向かい、FD人と直接対決することを決意する。

アクアエリーに戻ったいっこうに、FD人が送り込んできたエクスキューショナー(ドラゴンの姿をしており、宇宙船より速力・防御力・攻撃力が秀でた創造主の使い)が地球の最終防衛ラインに達したとの知らせが入る。数十体のエクスキューショナーはそれぞれクラス3以上の光線を放つことができ、最終防衛ラインは簡単に突破されてしまう。惑星シールドも敵の攻撃一発を防ぐのが精一杯で、地球は火の海となってしまう(カッコイイ映像イベント②)。この状況を見たヴィスコム提督は、フェイト達に地球の運命を託すしかないと判断し、フェイト達をタイムゲートがある惑星ストリームまで送ることにする。しかし、惑星ストリームの周囲にはエクスキューショナーが待ち構えており、フェイト達を送り届けるためにヴィスコムは自らがになることを志願する。ヴィスコムはクルー達に最後まで誇りをもって戦おうと演説し、エクスキューショナーの群れの中に突っ込み、奮戦するも最後は光の粒となって消し去られてしまった(カッコイイ映像イベント③)。悲しみに暮れながらも惑星ストリームに無事到着した一行は、タイムゲートに辿り着き、ソフィアの持つ「コネクション」の力によりFD空間へと繋がったタイムゲートへ飛び込んでいった。

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エクスキューショナーに襲撃される地球

 

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フェイト達の囮となって敵に突っ込むアクアエリー

①-8:FD人との遭遇~FD空間脱出

 FD空間へと突入したフェイト達。しかしゲートを抜けた一行の前に広がるのは、普通の住宅街で、フェイト達はそこに設置されているスクリーンから出てきたのだった。困惑するフェイト達の前に現地の少年フラッドが現れ、フェイト達がエターナルスフィアから来たのかと聞く。少なくとも何か知ってそうなこの少年について行くことにした一行はフラッドの家へ。そこで見せられたのは、画面に映るアクアエリーとエクスキューショナーの闘いだった。そして、フラッドが告げたエターナルスフィアの真実はなんと、エターナルスフィアはFD人(スフィア社という会社)が創ったプログラム(高度なAIを搭載したパラレルワールドという事だ!自分たちがゲームの中の存在で、今画面からプレイヤーの元に飛び出してきた存在だったという事に衝撃を受ける一行。コントローラーで操作されているわけではないとは言え、自分たちのこれまでの行動はゲームの中の出来事だったのかと信じられない様子。そんなフェイト達にフラッドは、実際にFD空間からエターナルスフィアにアクセスすれば実感が湧くのでは?と提案。フェイトと達はジェミティ市というテーマパークにある端末からエターナルスフィアへとアクセスする。タイムゲートを介さずにエターナルスフィアにアクセスできたことで、フラッドの言葉がより現実味を帯びたが、一行は、たとえ事実がどうであったとしても、銀河を守るためにスフィア社に突入し、エクスキューショナーを止めてくれるよう直談判することに。

スフィア社に突入した一行は、アザゼルとセキュリティに囲まれる。彼らは、フェイト達を特異体と呼びモルモットになれと言うが、当然フェイト達は拒否。アザゼルと戦闘になり、撃破した一行は上層を目指すが、途中で追い詰められてしまう。そこを、エクスキューショナー反対派のブレアに助けられる。ブレア達はスフィア社の人間だが、エターナルスフィアはもはやFD人が勝手に干渉していい物ではないほど進化しており、エクスキューショナーを送り込むという社長の処置に反対していた。ブレア達が創ったアンインストーラ(エクスキューショナーがバグフィックスプログラムなのでそれを削除するもの)を貰った一行は、追手との戦闘を勝利してエターナルスフィアへと戻りアンインストーラーを起動するのだった。

 

①-9:断罪者出現~ファイアーウォール突入

アンインストーラを起動したことで、エクスキューショナー達は消え去った。安堵する一行だったが、今度は別の小型だがより強力な敵・断罪者が出現する。スフィア社の社長がアンインストーラーの使用を先読みし、それに対抗するプログラムを設定していたのだった。落胆するいっこうにブレアが、断罪者のプログラムはエターナルスフィア内でしか起動できず、社長はエターナルスフィアにいる可能性が高いこと、社長のいる空間は特殊である種のゲートと鍵が必要であると告げる。もはや社長に直談判するしかないと決意した一行は、ゲートと鍵の特徴を聞くが、何とその鍵とはシランドにあったオーパーツセフィラであることが判明。ゲートも鍵の近くにあるとのことで一行は、再度エリクール2号星へ向かう。シーハーツ女王の許可を貰いセフィラを手にした一行は、ゲートがあるモーゼル古代遺跡へと向かい、セフィラを使ってゲートを開き、社長がいる空間とエターナルスフィアを繋ぐファイアーウォール(悪質なウイルスを除去するための障壁)へと突入した。

 

①-10:螺旋の塔突入~ラスト

ファイアーウォールを抜けた一行が着いたのは、社長がいる空間・螺旋の塔。ここに設置された様々なトラップを切り抜けて社長室についた一行。そこはまさに時の王が鎮座する空間といった感じ。そこに一人いるのが社長・ルシファーだった。ルシファーはフェイト達をあくまでプログラムとしてしか見ておらず、FD人に危害を及ぼすかもしれない悪質なバグを消去するのは社長として当然のことだという(確かに一理ある)。フェイト達は、確かに自分たちは創られた存在なのかもしれないが既に自我を持って進化しており、自分たちの滅びるときは自分たちで決めるといい戦闘になる(フェイト達からすれば正論)。

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それぞれの立場からするとどちらも正論なのだが・・・

勝利したのはフェイト達だった。しかし、ルシファーは最後の力を振り絞ってエターナルスフィアの全データを削除してしまう。これにより、消滅してしまったフェイト達とその世界。無に落ちていくフェイトだったが、無という物を認識している自我が存在することに気付く。そして、自我こそが自分が生きている証であると気付いたフェイトは、仲間が待つ世界で目を覚ます。どうやら、エターナルスフィアの全ての人が自我を持ち、世界を認識していたことで、データは削除されても世界が存続したのではないかとのこと(マンガ版ではフェイト・マリア・ソフィアが紋章の力を使い新たな世界を創造した、小説版ではスフィア社はエターナルスフィアを創ったがそこにアクセスする際に無数に存在する平行世界の一つのフェイト達の世界に間違ってアクセスしてしまっておりルシファーがエターナルスフィアを削除しても平行世界は無事だったという設定になっている。ラストの解釈はSOファンの中でも議論を呼んでいるが、各が信じたい説を信じれば良い)。何はともあれ世界が無事だったことにホッとする一行は、FD人の干渉が無くなった自分たちの世界で生きていくことを決意するのであった。

Fin.

 

 

②システム編

 

②-1:バトルシステム

SO3DCはなんと言ってもその優れたバトルシステムが魅力だ。攻撃はまず小攻撃(◯ボタン)と大攻撃(×ボタン)があり、遠距離近距離があり、そして通常攻撃バトルスキルがあるため、計16種類ある。これプラス紋章術(魔法のような物、攻撃・回復・バフに分かれる)を組み合わせて戦う。また、HPの他にMP(メンタルポイント)とGutsがパラメーターとして設定されている。すくみ制になっており、小攻撃(小攻撃に設定したバトルスキルも含む)はGutsが100%の時に発生するプロテクトに阻まれるが素早いため相手の大攻撃をキャンセルさせることができ、大攻撃は遅いがプロテクトを破壊できる。また、紋章術はプロテクトを破壊できるが、詠唱すると時間が掛かる。ただし一部のキャラではバトルスキルに設定でき、詠唱破棄で用いることができる。小攻撃をプロテクトした場合オーラという物が発生し、通常は相手をスタンさせる効果だが、アイテムを入手することで相手にダメージを与えたり(追尾式、威力UPなどもあり)、食らうはずだったダメージの一部を回復できたり様々な設定が可能である。特に隠しボスなどが使うスターガードでプロテクトされると、たとえこちらの防御力が高く敵の攻撃によるダメージが0であったとしても死んでしまう(プロテクトオーラのダメージはこちらの攻撃力によって左右されるため)。また、キャンセルボーナスというシステムがある。これは小攻撃にセットしたバトルスキルと大攻撃にセットしたバトルスキルを交互に使うことで100%⇒150%⇒200%⇒300%まで威力を上げることができるという物だ。ただしバトルスキルの使用にはHPやMPそしてGutsを消費するため無限にとは行かない。このシステムで使用するのに最適・最強の技がフェイトの「リフレクト・ストライフ」である。この技は回避機能を備えた回し蹴りで、これを連打しているだけで敵の攻撃はほとんど当たらず倒せてしまう。敵が動かない場合や小さい場合には当たりにくい、プロテクトされると大ダメージなどの弱点ももちろんあるが、ゲーム序盤で覚えるこの技だけで、本編ラスボスまでは余裕でクリア可能だ(隠しボスも全然いける)。各キャラクターによって使う武器が異なるためモーションやバトルスキルの種類が異なり、それぞれのキャラクターに合わせた戦闘方法を考えるのがこのゲームの戦闘の醍醐味である。

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キャンセルボーナスでダメージUP!     敵の小攻撃はプロテクト

 

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隠しボス達の使うスターガードは油断すると即死する

 

 また、戦闘システムとはやや異なるが、バトル中敵を攻撃してゲージを貯めると戦闘ボーナスが発生する。戦闘ボーナスは、取得経験値3倍(小通常攻撃でゲージをMAXにした場合)、取得フォル(このゲームの通貨)2倍(大通常攻撃でゲージをMAXにした場合)、戦闘勝利時回復率UP(バトルスキルでゲージをMAXにした場合)、アイテム入手率UP(紋章術でゲージをMAXにした場合)の4つで、このボーナスを維持して5回戦闘に勝利すると別のボーナスが追加で付き、15回勝利すると4種類全てのボーナスを得ることができる。レベル上げや資金稼ぎ、アイテムねらいの時にはこれらのボーナスが必須となるのだが、このボーナスは操作しているキャラクターがクリティカルヒットを受けたり死亡したりセーブデータをロードすると無くなってしまうため、注意が必要だ。もちろん攻撃に参加せずに遠くから見ていれば安全なのだが、それだと戦闘に時間が掛かってしまうため自ら攻撃に参加せざるを得ない。戦闘を早く終わらせたいがボーナスは守りたいというジレンマを抱えながらプレイするのもこのゲームの戦闘の醍醐味だ。

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戦闘ボーナスを利用して闘いを有利に進められる

 

②-2:アイテムクリエイション

スターオーシャンシリーズの全てにアイテムクリエイションは存在するがSO3DCのものが最も活用しがいがあると言える(SO2も重要だが汎用性は低い)。SO3DCで行えるアイテムクリエイションは、鍛冶・細工・料理・錬金・調合・機械・執筆・合成の8種類だ。アイテムクリエーションを行うには各種類の適正値が高い人物を集める必要がある。パーティーメンバーにも適正値が割り振られており、例えばクリフは鍛冶の適正値が高いが、メンバーは3人必要なため、良いものを創りたい場合は他にアイテムクリエイターと契約する必要がある。アイテムクリエイターはストーリーを進めると徐々に契約できるようになり、契約条件はお金を渡すだけのものから特殊なアイテムを渡す物など様々で有り、中にはかなり難しい条件も存在する。アイテムクリエイターには適正値のみでなくクリエイトにかかる時間やコストを左右するパラメーターも設定されている。アイテムクリエイションには創作オリジナルレシピ指定が合成以外には設定されており、創作オリジナルでは設定したコストでできるアイテムがランダムで創られる(失敗して何もできない場合もある)。レシピ指定では創作オリジナルで創ったアイテムの効果・例えばATK(=攻撃力)+10%を+15%や+30%まで強化できる。ただしレシピ指定には「鍛冶素材」のような各種の素材が必要となるため無限にはできない。また、アイテムクリエイションには莫大なコストが掛かり、本編中であれば低コストの物で十分だが、エクストラダンジョンではよりコストの掛かる物が必要になったりする。

鍛冶では、主に防具や武器を作製できる。細工では装備できるアクセサリー(攻撃力・防御力UPや詠唱時間短縮、Guts消費減など様々な効果の物がある)を作製できる。料理では様々な料理(戦闘中には使えない回復アイテム)を創ることができ、あのうまい棒も公認で様々な味が作製できる。錬金では各種鉱石やホムンクルスを作製でき、鉱石にはATK+900の様なめちゃくちゃ強い効果を持つ物もあり、ホムンクルスは攻撃に光弾を付与などの効果があり、武器に合成することで強力な武器を創れる。調合は各種回復薬やバフ薬、さらには爆薬などをも作製できる。機械は銃などの武器や回復・攻撃機能を持った機械アイテムを創れる。執筆は各種スキルを習得するのに必要なスキルブックを創れる。合成は、各種アイテムの効果を武器に8つまで付与することができる。このようにアイテムクリエイションを駆使することで様々な強力アイテムを創ることができ、本編のクリアはもちろん、エクストラダンジョンのクリアには必須の要素となっている。また、創れるアイテム数が多いためやりこみ要素としてもよい。

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凄腕クリエイターと契約して良いアイテムを量産しよう

 

②-3:バトルコレクション

SO3DC最大のやりこみ要素としてバトルコレクションがある。戦闘中特定の行動や条件を満たすことで獲得でき、全300個ある。種類としては、ほぼ全ボスに対してノーダメージ勝利~分以内撃破があり、それらが難易度(ギャラクシーユニバース(敵パラメーター1.5倍)、FD(敵パラメーター1.8倍))にそれぞれ設定されている。また、カウンターオーラによるダメージ・アイテムによるダメージ・小攻撃・大攻撃・紋章術・バトルスキルオンリーで特定のボスを倒すなどもある。他にも戦闘中計42.195km走るや残りHP1で勝利、鉄パイプ(初期装備)オンリー勝利など多種多様な物があり、コンプリートするにはゲームを何周もする必要がある(ちなみに筆者は95%まででコンプリートできていない)。大変なものとしては、戦闘ボーナス付きやノーダメージで連続勝利といったもの存在し、ザコ的相手に連戦するのだがちょっとした油断で連続が途切れてしまい、数時間がパーといった経験も少なくない。また、与ダメージ7777やGuts生き残り(Gutsが高い場合に確率で生き残るシステム)連続何回など運要素のものも多く時間が掛かる。バトルコレクションは15%取得で2Pカラー(プレイアブルキャラの別衣装)が使用可能、25%取得でユニバースモードがプレイ可能、40%取得で3Pカラー55%取得でミュージックモード(タイトル画面のバトルコレクション一覧画面から、MISIA「飛び方を忘れた小さな鳥」を含むゲーム中の全てのBGMを聞くことができる)が使用可能、65%取得でFDモードプレイ可能、80%取得で4Pカラー使用可能、95%取得でフルアクティブモード(通常攻撃ボタンを押すと自動で敵に接近して技を出すが、フルアクティブモードではボタンを押した位置で技を出す)が使用可能といった特典を得ることができる。ぜひ95%までは頑張って集めてみていただきたい(めちゃ時間かかるが)。

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バトルコレクションを集めるとキャラクターの別衣装などの特典が解放される

 

②-4:本編ダンジョン

SO3DCではエクストラダンジョンの作り込みが半端ではなく、それはこの後詳しくご紹介するのだが、本編中に登場するダンジョン一つ一つの完成度も非常に高い。

最初に訪れるダンジョン・コーファー遺跡では、ボスの部屋に入るための3つの数字がどこかに書かれているのを探す必要があり、最初のダンジョンとしては難易度が高い。また、このダンジョンに限った話ではないが、物語後半で瓦礫などを消し去れるバニッシュリングというアイテムを手に入れると、最初は入れなかった所にまで入ることができ、レアアイテムが手に入れられるなど何度も楽しめるように設計されている。

アーリグリフから脱獄後、国境越えのために通るカルサア山洞では、ロッコモンスターという亀のような生物が牽くトロッコを操作して進む必要がある。トロッコモンスターにはけんじつ・きまぐれ・とつげき・のほほん・ひねくれの5種類があり、クリアするだけならけんじつで十分なのだが、アイテム回収のためにとつげきを使う必要があるなど、やりこみ要素を用意してくれている。

セフィラが安置されている聖殿カナンやそこ至るために通る封印洞は初見ではまず気付かないようなスイッチや仕掛け、また、4つの通路で一人一体ずつ敵とタイマンで戦うトラップや触れるとスタート地点に戻されるキューブが行き交う迷路などこれでもかと言うほどギミックが満載で非常にやりがいがある。

本編ラストダンジョンとなる螺旋の塔では、強い敵がゴロゴロいるのはもちろん、バニッシュリングを使って規則的に変化するクリスタルの色を合わせ、特定の色に特定の回数で会わせる必要があったり、壁にできた小さなひび割れを探し出して中のスイッチを押したりなど、最後の最後まで作り込まれたギミック満載となっている。

ご紹介したのはごく一部だが、どれも作り込みがすごいので、ぜひ攻略法を見ずに一度チャレンジしてみていただきたい。

 

 

③オマケ要素・ネタ編

③-1:プライベートアクション

シリーズ恒例のプライベートアクションPAは、街でキャラ同士の交流や意外な一面を垣間見れるという物。非常に数が多く、発生させることでフェイト→他のキャラ、もしくは他のキャラ→フェイトの感情値が変化し、お互いが一定の値を超えるとカップルエンディングという特殊エンディングを見ることができる。もちろん全てのPAがおもしろいので見ていただきたいが、PAの中で出てくる選択肢の選び方によって感情値は上がることも下がることもあり、特定のキャラの感情値を上げるには決まったPAを逃さずに適切な選択肢を選ぶ必要がある。また、逆に感情値が高いキャラの感情値をあえて下げて他のカップルエンドを狙うなどもできる。「スターオーシャン セカンドストーリー」ではアイテムを使って感情値をある程度コントロールできたが、SO3DCではそれがないため、序盤から地道に積み重ねていく必要がある。そのため全てのエンディングを見るのは非常に手間だが、いくつかのエンディングは、終盤一つのPAの選択肢を変えるだけで見られることもあるので、攻略情報を見ながらスマートにこなしていただきたい。PAの中には、特殊な武器を手に入れられるものや、秘密特訓をしているアルベルと戦えるもの、そしてアーリグリフ国王とエレナの手紙のやり取りを仲介し恋の行く末を見られるものなど様々あるので、やりこみ要素が足りない!という方はぜひ色々と試していただきたい。

 

③-2:エクストラダンジョン

SO3DCには本編ではクリアする必要の無いダンジョン、いわゆるエクストラダンジョンが多数存在し、それぞれかなり作り込まれている。エクストラダンジョンは、①サーフェリオ水中庭園モーゼル古代遺跡 地下水脈③試練の遺跡④ウルザ石窟寺院⑤スフィア社211の5つで、①と④はディレクターズカット版で追加された。

①サーフェリオ水中庭園は、亜人の街サーフェリオの地下にある古代遺跡で、サーフェリオが水に半分沈んでいる街でその下にあるので水中庭園となっているが、水に浸かっているわけではない。ここでは、ブロックを移動させて通り道を創るパズルを楽しむことができ、ボスを倒すとCPUや2Pと対戦ができる「パラケルススの円卓」が手に入る。この対戦モードは非常に楽しく、キャラの衣装や技を変え、好きなフィールドでBGMを変えて対戦ができるためぜひパラケルススの円卓を入手してプレイしていただきたい。

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パラケルススの円卓でCPUや2Pと対戦

モーゼル古代遺跡地下水脈は文字通りモーゼル古代遺跡の地下にあり、ここでは特定のモンスターを誘導して鍵を開くというギミックを楽しむことができる。最奥部ではバトルチェスというチェスの簡易版のような物をプレイすることができ、現れる亡霊との来戦に勝利すると豪華なアイテムを入手できる。ちなみにここのボスはトリオで、コントのようなやり取りを楽しむことができる。

③試練の遺跡は、ラスボス・ルシファーの前のセーブポイントでセーブすると現れるバーニィ(ウサギのようなむっちゃらもっちゃらな生物)がその存在を教えてくれ、ワープで街まで帰還させてくれる。中は非常に強力なモンスター・ボスが存在し、アイテムクリエイションで強化した武器や防具がないと辛い。遺跡に入るとまず、ここは本編と全く関係が無く、本編のシナリオやキャラを無視しているので印象を壊されたくない方はご注意下さいという旨のアナウンスが入る。その言葉通り、道中にスターオーシャンシリーズ恒例キャラのパフィが登場し、彼女とのコント的やり取りや戦闘を楽しむことができる(最終的にパフィは調合のアイテムクリエイターとして契約できる)。また、同じトライエースが製作したヴァルキリープロファイルよりレナス(子ども化している)が現れ、死んだはずのヴォックスを「本気ヴォックス」として召喚する。これを倒し「こんなに強かったら本編クリアできねー」と突っ込みを入れつつ進むと、今度は黒くて小さくて丸い「まっくろ◯◯すけ」のようなモンスター「モンジャラゴラ」が現れる。めちゃくちゃ強いが倒すと、ここのラスボスにしてトライエース作品(ヴァルキリープロファイルラジアータストーリーズスターオーシャン恒例の隠しボスの一人ガブリエ・セレスタとの戦闘になる。フィールドほぼ全体攻撃のブルーフィッシュボルトなど高いダメージの技を出してくるが、属性耐性かDEF(防御力)を十分あげていればノーダメージで倒せる。ただし、前述したスターガードを使うため、気を抜くと一瞬で死んでしまう。倒すと、各種豪華アイテムに加え次のエクストラダンジョン⑤スフィア社211が解放される。また、試練の遺跡では各キャラのここでしか入手できない強力な武器や防具、バトルスキルが宝箱に隠されており、それらも逃さずに入手したい。

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本編のイメージとは全く違うので注意

ウルザ石窟寺院は前述の通り、ディレクターズカット版で追加されたダンジョン。クロセルがいたウルザ溶岩洞最奥部の横道から行ける。4種の宝珠(火、水、地、風)があり、それぞれを台座に乗せると相対する色(火→水、水→火、地→風、風→地)の壁が消える。台座は限られた数しかないため適切な組合せをしないと先に進めないというパズルになっており、階層が進む毎に難しくなる。1、2階層ではアルベル・ロジャー・ネルの内仲間にしていない方がフロアボスとして登場する。こちらのことは知らず、遺跡の侵入者などと思い込んで襲ってくる。最下層の3階層では主人公フェイトとエンディングでカップルになったキャラがボスとして登場する。孤独エンディングだった場合はラスボス・ルシファーと共に登場する。どの組合せも凶悪だが、個人的にはソフィアとの組合せだと強力な紋章術を連打されて、属性耐性がないと正直辛い(紋章術は防御力が高くてもダメージが入るため)。色々な組合せを試すにはプライベートアクションを駆使して色々なエンディングを見る必要があるが、ぜひチャレンジしていただきたい。

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難解なトラップや味方キャラとのバトルなどここでしか味わえない要素が満載

⑤スフィア社211は③の試練の遺跡をクリアすることで開放される。ストーリー中に一度訪れたスフィア社で、その時は5階から211階までエレベーターで一瞬で上がったが、今度は100階から211階まで1階ずつ登っていくというもの。道中は気を抜けば即死の強敵がゴロゴロいるのに加え、約10階毎にフロアボスが現れる。現れるボスは例えば101階は本編で最初に倒したボスノートンが「帰ってきたノートン」として現れるなど、試練の遺跡同様本編ガン無視のネタ要素満載になっている。各フロアの構造は8パターンあるうちのどれかが適応されており、8パターン暗記しないと踏破にすごく時間が掛かってしまう。また、各フロアには様々なレアアイテムがあるのだが、空っぽの宝箱も多く、がっかりさせられた数は数え切れない。210階ではヴァルキリープロファイルの登場キャラクターであるレナスがボスとして現れ、異次元の強さで攻撃してくる。それになんとか勝利し、頂上の211階に到着すると、そこにはガブリエ・セレスタと同様トライエース作品(ヴァルキリープロファイルラジアータストーリーズスターオーシャン)恒例の隠しボスであるイセリア・クィーンが待ち構えている。これまでのボスとは比べものにならない強さだが、ユニバースモードまではしっかりした装備とレベルがあればなんとか倒せる(FDモードもギリギリ倒せる)。イセリアを倒すと「昂翼天使の宝珠」を入手できる。そしてこのアイテムを、ウルザ溶岩洞のクロセルが鎮座していた場所に持っていくと、本ゲーム真のラスボスであるフレイヴァルキリープロファイルの登場キャラクター)が現れる。イセリアから更にもう一段階強いこのボスに苦戦を強いられるだろう。フレイはギャラクシーモードでもHP2000万とされており、FDモードではえぐい値になる。FDフレイ撃破のバトルコレクションも60分撃破となっているのだから、60分以上は通常掛かると言うことだろう。私もFDフレイは二度と戦いたくないと思うほど強敵だった。ご興味がある方はぜひ。

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最上階に待ち受けるのは定番の隠しボス「イセリア・クイーン」

③-3:ゲームの中でゲーム

本編中で行くことになるFD世界にあるテーマ-パーク・ジェミティ市。ここには、闘技場・バトルチェス・バーニィレースの3つのミニゲームが用意されており、それぞれ本編クリアとは全く関係ないが、豪華賞品や賞金を目的に楽しむことができる。

闘技場では、ランキングバトル・シングルバトル・チームバトルを楽しむことができ、特にランキングバトルは最下位から徐々に勝ち上がってランキングを挙げていくというもので、最後に戦う名誉チャンピオンソロン・リュートディルナ・ハミルトン)は本編ラスボスより数段強く、しっかり準備しないと勝てない。勝利すると”祝”優勝トロフィーというめちゃくちゃ強力なアクセサリーを貰え、エクストラダンジョン攻略に非常に役に立つので、時間はかかるがぜひ手に入れたい。他にも、シングルバトルで最高難易度をクリアすると、武器に合成することでATK+1000の効果を得られる闘技秘伝書など豪華アイテムが用意されていたり、ランキングバトル上位のチームを倒すと莫大なフォル(お金)が手に入ったりするため、ミニゲームではあるがエクストラダンジョン攻略にはほぼ必須要素とも言える。

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レベル上げや資金稼ぎに闘技場はうってつけ

バトルチェスでは、前述のモーゼル古代遺跡地下水脈の最下層でしたものを更に高難易度にしたものを楽しめる。毎回は位置は異なるため必ず勝てる方法はないが、コツを知れば高い確率で勝て、豪華景品を手に入れることができる。

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相手の配置を見てこちらの駒の配置を決める

バーニィレースでは、バーニィという丸っこいウサギのような生物トラックで走らせてその着順を予想する競馬のようなもので、予想が的中するとポイントが貰え、ポイントの合計に応じて豪華賞品が手に入る。100ポイント貯めると、鍛冶のトップアイテムクリエイターであるボイドとの契約に必要な折れた魔剣、1000ポイントで”祝”優勝トロフィーと同じくめちゃくちゃ強力なアクセサリーである”祝”1000記念トロフィーが貰えるが、レースの勝敗は完全に運なので、連射パッドの付いたコントローラー無しにこのポイントを集めるのは正気の沙汰ではない

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レースはスキップもできないため非常に時間が掛かる

以上のように、ミニゲームではあるが全てやりこむと非常に時間が掛かるものとなっており、物足りなさを感じた方はぜひこちらもやりこんでいただきたい。

 

 

③-4:各種ネタ要素

上記エクストラダンジョンでのやり取りも十分ネタ要素なのだが、SO3DCではそれ以外にも非常に細かいネタ要素がゲーム内に隠されている。まずは本棚である。作中色々な街の色々なとこのにある本棚には興味深いタイトル・内容の本が色々入っている。例えば最初に訪れるウィルプ村の村長の家に本棚にはスターオーシャン1や2を彷彿とされる魔王や神の十賢者の話が載っていたり、アリアスの民家には「星の海物語(=スターオーシャン)」「二酸化硫黄物語(=SO2=スターオーシャンセカンドストーリー)」「乙女の横顔(=ヴァルキリープロファイルのパッケージ)」「藍いボール(=スターオーシャン ブルースフィア)」という題名の本があったり、アリアス領主の屋敷の本棚にはスターオーシャンEXのOP・EDの楽譜があったり、バール遺跡の本棚にはエロ本が入っていたり、アーリグリフ王の部屋の本棚にはエダール剣技スターオーシャン歴代主人公が使う剣技、フェイトは使わずアルベルが使う)に関する本があったり、カルサア領主ウォルターの部屋の本棚には七星奥義・ネコ奥義など(スターオーシャン1にで出てくる奥義)やスターオーシャンセカンドストーリーに出てくる民話が載っていたりなど、ご紹介しきれないほど細かいネタが満載だ。本棚によってはストーリーの進行具合によって内容が変わったりするので、小まめにチェックすると更におもしろい。他にも、アリアスのお墓に「ユウシャ ロト ココニモネム」と書いてあったり、協会に冒険の書的なものがあったり、ペターニの家の前のバケツにイオの巻物が入っていたりなど、スターオーシャントライエースの過去作だけでなく有名な他のゲームに出てくるものなどが開発者のお遊びで各所に配置されている。知らない人には何のことだか分からない者ばかりだが、わかっている人にとってはこれらを探すだけでもプレイするのがとても楽しくなる。

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小ネタは色々なところに隠されている。本棚を見つけたら必ずチェックしよう

他にも、ゲーム中各所にある預言書というアイテムを6巻集めて、書いてあるひらがなを縦読みすると、開発者からプレイヤーへのアドバイスやメッセージになっている(シリーズ他の作品でも登場する)。また、ゲーム中で言及されることはないが、「スターオーシャン セカンドストーリー」で十賢者をエタニティスペースから脱出させたのがスフィア社の人間であることや、回復の紋章術が使えるエリクール人はセカンドストーリーに登場するネーデ人の末裔であることや、シーハーツで施術兵器を開発したエレナは、エターナルスフィア開発の時に戻ることができなくなったFD人であることなど様々な説や裏設定が考察・設定されており、公式設定資料集などを読んで考察すると非常に楽しい。メニューにある辞書には、本編で登場した様々なワードが詳細に説明されており、SF好きはこれを読むだけで数時間をあっという間に過ぎてしまうことだろう。

おそらく全てのネタ要素は拾いきれないのではないかと言うほど、細かい無数のネタが用意されているので、本編だけでなくこちらも楽しんでいただければよりこのゲームをプレイするのが楽しくなるだろう

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辞書には冒険に全く必要の無い細かい情報がびっしりと書き込まれている

 

 

 

 

 

~終わりに~

2万字を超える長編でお届けした本記事だが、まだまだ細かい点は語り切れていないと思う。思い出したら都度この記事を更新していこうと思うので、興味がある方はぜひ。シナリオにこそ賛否両論があるこの作品であるが、そのシステムは常に高い評価を受けており、間違いなく名作ゲームの一つである。細かい点まで堪能したいのであれば、本記事を参考にぜひご自身でプレイしてみていただきたい。また、2022年にはシリーズ最新作の発売も決定しており、こちらにも期待したい。最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

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原田マハ著「総理の夫」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは原田マハ著「総理の夫」である。本作は2021年には映画化もされた作品だ。ミステリとは全く関係ないが面白かったので感想を述べたいと思う。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 

 

 

~あらすじ~

 主人公の妻は少数野党の党首だった。そんな彼女が突如総理大臣になり、生活が一変する。主人公は変化に戸惑いながらも妻を支え、妻も強い信念の下政治を行っていく。

 

 

~おもしろいポイント~

①もし次の首相が女性だったら

 本作では、主人公の妻が日本初の女性総理大臣になったという設定で繰り広げられる物語となっている。この設定は現時点では架空の設定ではあるが、都知事や大臣に女性が顔を連ねるようになった昨今、いつ現実となっても何らおかしくは無い設定である。むしろ海外では女性の国家元首は多く存在しており、遠くない未来に日本でも女性総理大臣が誕生することだろう。主人公の妻が総理大臣になった直後は、世間もメディアも「女性」ということに注目し色眼鏡で見ていたが、次第に彼女の強い信念に惹かれるようになっていく。残念ながらおそらく現実でも初めは同じような事態になってしまうだろうが、その時我々有権者が冷静な目で彼女を見ることができるかは正直自信が無い。また、日本の法律や制度・設備は女性が首相となることを想定していないとの記述もあり、本作でも終盤に語られる女性首相が出産する場合の対応なども、実際に起こりうるにもかかわらず想定が及んでいないと思われ、現実として考えていく必要があるように思われる。

 

②総理の夫

 タイトルにもなっているとおり、女性総理大臣が初であれば当然日本初の「ファースト・ジェントルマン」が誕生することとなる。本作では総理の夫である主人公が大企業の家柄であることから余計に話が複雑になるのだが、そうでなくても大変なことである。ただこれに関しては、初の男性だからというよりは、これまでのファーストレディの方たちもこれほど大変な思いをしているのかといった印象を受けた。特に、首相の外遊に否応なしに同伴させられたり、外賓の方達と食事をしたりなど、本人は少なくとも普段は公人では無いにもかかわらず、首相といるときは公人として扱われるという現実を改めて認識させてくれた。

 

③国のリーダー

 日本において総理大臣は名実ともに国のリーダーである。しかし実際これまでの総理大臣がどれほど日本をリードしてこれただろうか、という疑問を本作は投げかけているように思う。本作で描かれる総理大臣は著者が理想とする日本のリーダー像であるように思われる。国民の声を聞き、痛みを分かち合い、合理的・論理的な説明を尽くす。当然でありながら今の政治ができていないこと。本作を読むと、性別にかかわらず文字通り日本をリードしてくれる存在を期待してしまう。

 

 

 

~最後に~

 本作はフィクションとしてもどんどん読み進めたくなる面白いストーリー展開・文章であると同時に、現実の政治についても考えさせられる物語である。政治に関する本を読むのは気が向かないという方も多いかと思うが、本作は物語として気軽におもしろく読めるのでぜひ一度読んでみていただきたい。 

 

 

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神永学著「心霊探偵八雲2 魂をつなぐもの」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは神永学著「心霊探偵八雲2 魂をつなぐもの」である。本作は以前ご紹介した「心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている」の続編である。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 





~あらすじ~

 前作で晴香と知り合うことで徐々に他人に心を開くようになった八雲。今日もまた後藤刑事が持ち込んだ事件に関わることになるのだが、そこで自分の過去に触れていくことになる。

 

 

~おもしろいポイント~

①幽霊からの手がかり

 本作の特徴は、前作同様死んだ人間などの霊が見え、声を聞くことができる主人公・八雲の存在である。前作では、幽霊から割とヒントをもらっていた印象だったが、本作では幽霊からの言葉はほんの一言程度で、そこから真相へと迫っていく。幽霊が見えるという設定は活かしつつも、前作よりミステリ要素の強い作品となっている印象だ。

 

②一見無関係に見えて一つに収束していく

 ミステリでは、一見無関係に思える複数の事件がかわるがわる記述され、終盤でそれらが実は一つに繋がっていた、という展開が定番の一つとなっている。本作も少女の誘拐殺人事件と警察署長の娘が霊に取り憑かれているという2つの事件や晴香が友人から受けた相談が、一見無関係に見えて全てが緻密に絡み合っている。しかもそれらが一つに収束していくのだが、実は複数の事件が同時に起こっているという事が明らかとなり、良い意味で期待を裏切ってくれる

 

③気になる続編

 本作では終盤、事件の裏で八雲の父が関与していたことが明かされ、父から八雲に電話まで掛かってくる。八雲の父とは何者なのか、一体何が目的で事件を引き起こしているのかなど、明かされないまま物語は終結し、続編が気になる内容になっている。

 

 

 

~最後に~

 本作は前作の続編と言うことで、設定や登場人物が受け継がれているためすんなりと読むことができた。続きが気になる内容になっているので、機会があれば続編も読んでいきたい。

 

 

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辻村深月著「凍りのくじら」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは辻村深月著「凍りのくじら」である。本作は本屋でたまたま見かけて手に取った作品だが、期待を遙かに上回る傑作であった。本記事ではその魅力を語っていきたい。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 



~あらすじ~

 芦沢光-25歳。新進気鋭の写真家。彼女の写真のルーツは高校生の頃に体験した「少し不思議」な物語だった。

 

 

~おもしろいポイント~

①著者のドラえもん

 本作は、各章にドラえもんの秘密道具の名前が冠されており、その秘密道具に類する内容が展開されている。もちろん実際に秘密道具が物語の中で活躍するわけでは無いのだが、主人公の体験は秘密道具になぞらえており、その説明や流れから主人公(もしくは著者)のドラえもんへの愛を感じる。読んでいるともう一度ドラえもんを見直して見たくなる。

②少し不思議な物語

 作中、主人公は周りの人を「少し、ナントカ(Sukoshi ○○)」と心の中で呼んで遊んでいる。ナントカの部分にはFから始まる単語が入り、例えば「不幸」、「不足」、「フラット」などである。これは、藤子・F・不二雄先生が「SF」のことを「サイエンス・フィクション」ではなく、「すこし・不思議」と表現したことに由来している。この「少し、ナントカ」は主人公が達観していて周りをある意味見下している象徴的な記述でもあるが、物語の最後には主人公の一連の体験が本当に「少し不思議」な体験であったことが明らかとなり、物語の最初から最後まで「少し、ナントカ」がキーとなる作品である。

 

③感動、驚き、そして穏やかなラストへ

 物語は、主人公を取り巻く状況(友人、母親、恋人)が次々に変化しながら進んでいく。その中でまず心を惹かれるのが母親の最期である。主人公の父は数年前にガンで余命わずかになり、家族の前で死ぬことを恐れて失踪した。そして主人公の母もまたガンを患い入院している。主人公はそれまで母親とはあまり仲が良くなかったが何度も病院を訪ね話を重ねる。そんな中、出版社の人が写真家だった父の写真集を出版したいと持ちかけてくる。病気の母の負担になると主人公は反対するが、母は穏やかに了承した。それは自分の最期を悟った母が娘に贈る最期のプレゼントのような物で、物語終盤に内容が明かされるその写真集に綴られた母の娘への想いに涙が止まらなくなった。

 次に印象に残るのが最期に明らかになる「少し(?)、不思議」な内容である。作中主人公は、別所あきらという先輩と何度も行動を共にし、これまで周りの誰と話していても本音を話せずにいた主人公が、彼には本音を話し、親しみを感じるようになる。しかし作中、彼に関しての記述はどこか浮き世離れしており、発言にも意味深長なものが多い。また、彼の行動や周りのリアクションを良く読むと明らかにではないものの不自然な部分が目立つ。そして最期に彼の正体が父の幽霊であることが明らかとなるのだが、そのタイミングが絶妙で、前述の母の死と併せて、終盤感情が何度も激しく揺さぶる。

 そしてラスト、命を左右する緊迫した場面から一転し、現在に戻ってきた主人公が描かれる。そこには、少し不思議な経験を経て成長した彼女がいて、とても穏やかで平和な時が流れている。ドラえもんでどんなに危機的な状況に陥っても最後はほっこりさせられるように、本作もまた穏やかなラストを迎える。

 

 

 

~最後に~

 本作はドラえもんを作中に盛り込んだという点で特徴的で注目されるが、それはもちろんながら、辻村氏の読者を物語に引き込む力を存分に感じた作品であった。作品を通して、親しみ・憤り・安らぎ・感動・驚きなど様々な感情が私の中に生まれ、ここまで感情を揺さぶられた作品は久しぶりであった。機会があればぜひ一度読んでみていただきたい。

 

 

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伴名練著「なめらかな世界と、その敵」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは伴名練著「なめらかな世界と、その敵」である。本作は表題の「なめらかな世界と、その敵」を含む6つの短編から構成されている。話題を呼んだこの本が文庫化され、早速読んでみたのでその感想を述べたいと思う。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 



 

 



 

 

 

 

~あらすじ・おもしろいポイント~

 

①なめらかな世界と、その敵

【あらすじ】世界の誰もが、可能性のある平行世界に自由に瞬時に滑らかに行き来することができる「乗覚」を持つ世界。人々は嫌なこと、困ったことが起きれば瞬時に「そうならなかった可能性の平行世界」へと移動でき、嫌なことを回避することができる。そんな世界で主人公は、親友が「乗覚障害」に陥っていると知る。

【所感】物語は当初、「乗覚」について何ら説明の無いまま話が進んでいき、読者は訳が分からず混乱してしまう。その後「乗覚」についての説明が成されるが、真の意味でちゃんと理解できたか怪しい。ともかく、そういった設定の特殊性もさることながら、主人公の親友が、誰もが乗覚を持つ「なめらかな世界」から切り離されてしまったとき、ラストで主人公が取った行動が胸を打つ作品である。

 

ゼロ年代の臨界点

【あらすじ】中在家富江、宮前フジ、小平おとらの3人の明治時代に生きたSF作家を取り上げ、実際の歴史を混ぜつつ、彼女らが時間を行き来して改編していった歴史があたかも現実のように語られる。

【所感】SF小説の歴史に馴染みの無い私からすると、途中まで語られている歴史が現実の物なのか否か分からない。そのくらいうまく架空の歴史が紡ぎ出されている。富江とおとらが時間を行き来することで、未来の技術を盛り込んだSF小説を発表することで歴史を改編していく様は、あたかもその時代に世紀の天才が登場したようだ。物語の最後にはフジがアポロ11号よりも先に日本人として初めて月に降り立ったというユーモアが語られているが、そこ以外は真実と虚構が溶け合って新たな架空の歴史を生んでいる。

 

③美亜羽へ贈る拳銃

【あらすじ】外的処置により、人間の思考や嗜好を改編させることができるようになった世界。その技術を生み出した会社に属する主人公は親族達の権力争いに巻き込まれていた。権力闘争の末、主人公は己が愛してしまった人が真の意味で自分を愛してくれることは無いにもかかわらず、自分に愛を向けてくるという苦難に直面する。

【所感】物語は作中作の作中作のような形で語られる。主人公のライバル会社における頭脳である少女は、権力争いに巻き込まれ両親を失い、主人公やその会社を憎み、遂には自分の頭脳を破壊して主人公を愛するという処置を自分に施して「自殺」する。主人公は実はこの少女を好きになってしまっていたが、自分に向けられた愛が本物では無いと分かっており、なんとか元に戻そうと奔走するが、その過程で少女が自分を愛することは絶対にないと知ってしまう。同一人物でありながら全く異なった思考を持った2人の少女と主人公の間で起こる物語の行方は、最後まで結末が分からずハラハラドキドキさせてくれる。

 

 

ホーリーアイアンメイデン

【あらすじ】腕の中に人を抱くだけでその人の思考を変えることができる少女とその妹の物語。妹からの遺書という形で、妹が姉をどう思っていたのかが語られる。

【所感】前述の通り、複数に分けて姉に贈られた妹の遺書という形で物語が進んでいく。姉の「力」に目をつけた軍部に利用され始めた姉だが、関係者を次々と「改心」させていく姉の力は留まることを知らず、日本だけで無く世界中が姉の「力」によって「改心」させられていく。そんな状況を妹は恐ろしく思いながらも、それを決して姉に悟られまいとしており、最後は姉に一矢報いようとする。妹の遺書の口調は非常に穏やかであるが、読んでいくと妹がどんなに姉のことを恐ろしく思っていたのかが理解できる。たとえ善意の塊であっても、人間の力を超える力は恐ろしい。

 

 

⑤シンギュラリティ・ソヴィエト

【あらすじ】冷戦末期、ソヴィエトでシンギュラリティ(人工知能が人間の知能を超越すること)が起きた世界。ソヴィエトの人々はAIによって統治され、アメリカの人々は別のAIによって仮想現実に閉じこもりつつあった。ある日、主人公はAIに命じられてアメリカのスパイを尋問することになる。

【所感】AIが人類を支配する世界。そういった設定は使い古されているが、本作品はその設定そのものでは無く、そこに生きる人の感情や世界の行く末に焦点を当てているように思う。物語は読者や登場人物の予想を超えて展開していくが、ラストでそれらは全てAIによって「意図されたこと」であり、遠くない未来に人類がお払い箱になるのでは無いかという恐怖を主人公に与える。

 

 

⑥ひかりより速く、ゆるやかに

【あらすじ】ある日、主人公のクラスの修学旅行生などを乗せた新幹線が「超低速化」した。主人公は修学旅行を欠席していたため巻き込まれずに済んだが、否応なしにその後の世間の変化に巻き込まれていく。

【所感】新幹線は2600万分の1の速度まで超低速化して進んでいる。死んだわけではないが外から一切干渉できない新幹線に、遺族や世間は翻弄される。本作はそういった誰のせいでも無い災害が起こった際の世間の対応を冷静に描写すると共に、主人公達残された人々の感情を描いていく。紆余曲折あるが最終的にハッピーエンドで終わる本作品が最後に組み込まれていることで、暗い局面もある他の作品の印象を和らげて読み終えることができた。

 

 

 

 

 

~最後に~

 本作は各話の特殊なSF設定に目が行きがちだが、設定自体は難しい物はあまりなく、むしろその設定に直面した人々の感情の方が複雑で、文章にするのが難しい。本稿で設定を知って興味が湧いた方はぜひ読んでいただき、登場人物達の複雑な感情を感じて欲しい。

 

 

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神永学著「心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている」を語る(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは神永学著「心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている」である。心霊探偵八雲シリーズの記念すべき1作目で、主に3つの短編から構成されている。大人気シリーズの始まりがどういったものであったか見ていきたい。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 

 

~あらすじ~

 斉藤八雲は片眼だけ開いて生まれ、しかもその片眼は朱く死んだ人間の魂が見えるという。そんな彼の下にやってくる依頼はちょっと変わった物ばかり。めんどくさがりながらも捜査を続けていった先には、死んだ人間の声が聞ける彼にしか解決できない事件が待っている。

 

 

~おもしろいポイント~

①開かずの間

 ある大学生グループが廃屋で肝試しを行い、幽霊を見て逃げ出した。その後一人は失踪し、一人は電車に轢かれて死に、もう一人は熱を出して意識不明になってしまった。意識不明の友人を助けるために八雲のもとを訪れた晴香。八雲は乗り気では無かったが結局調査を行うことに。

 通常推理小説では、ここから被害者の証言や現場の物証から真実を解明していくが、八雲は違う。意識不明の友人に取り憑いた霊からのメッセージを受け取ったり、晴香に憑いている晴香の姉に助けてもらったりと、通常ではあり得ないことの連発だ。そういった霊達の声に耳を傾けることで八雲は真相へと迫っていくのである。

 

②トンネルの闇

 交通事故で毎年死者が出ているトンネル。そこを通った車は心霊現象に遭遇し事故に遭ってしまうと言う。ある日合コン帰りに晴香を乗せた車もそのトンネルで危うく事故を起こしそうになる。更にその場で幽霊も見てしまった晴香は八雲に相談する。除霊はできないと言いながらも調査を始めた八雲。その先には想像以上に深く暗い闇が待っていた。

 よくある心霊体験物かと思いきや、捜査を続けていくとどんどん人間の闇が見えてくる。真相自体は驚くべきものではないが、幽霊なんかより人間の方が恐ろしいと感じる作品。また、他人に冷たい八雲が前回の事件で晴香との絆が深まり必死に守ろうとする姿に、八雲の心情の変化を感じる。

 

③死者からの伝言

 ある日晴香のもとに親友の霊が現れ、「逃げて!」と訴えかけてきた。心配になった晴香は近くの親友の家を訪ねるが応答はない。そこで晴香は八雲に相談することにしたのだが‥。

 調査を進めると親友だと思っていた友達の知らない一面が次々に明らかになっていく。親友はある事件に関係しており、晴香はその真相に近づいてしまったために犯人に拉致され殺されそうになる。晴香を探す八雲は必死で、二人の間に固い絆ができていることを感じさせる。

 

 

 

~最後に~

 本作は、主人公・八雲の霊が見えるという特殊設定をうまく演出に使いながら事件を解決に導いている。また、登場人物達の人間関係の変化も見どころだ。短くて読みやすいのでぜひここから心霊探偵八雲シリーズに手を出してみてはいかがだろうか。

 

 

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まさきとしか著「あの日、君は何をした」

~はじめに~

本日ご紹介するのはまさきとしか著「あの日、君は何をした」である。「完璧な母親」などで知られるまさきとしか氏。本作もそれに並ぶ傑作ミステリという事で読んでみたので感想を述べたい。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 







 

 

 

 

~あらすじ~

 ある幸せな家庭で育った少年が逃亡中の殺人犯を捜索中の警察に追いかけられ事故死した。それから十数年後、ある平凡な家庭の夫が行方不明となった。2つの一見全く無関係とも思える事件。両事件の関係者や警察達がそれぞれ事件の真相を追いかけていった先には意外な結末が待っていた。事件のあった日少年は何をした?

 

 

~おもしろいポイント~

①事件関係者のその後

 ミステリではしばしば、事件を捜査する探偵や警察目線で物語が進む。本作でも警察目線で進むパートはある。しかしながら印象に残るのは被害者の家族など関係者の描写だ。ある関係者は家族の死をすぐに忘れてしまい悲しめない自分を責め、ある関係者は家族の死を受け入れられずにおかしくなり、またある関係者は家族を疑い出す。小説として読むとちょっと異常な登場人物として映ってしまうが、実際事件関係者の心情は我々では想像できないほど大きく揺さぶられると思われ、この小説での描写もあながちか条では無いのだろう。

 

②2つの事件の接点

 あらすじで書いたとおり、この物語中では2つの事件が発生する。一見両事件には関連性が見いだせないのだが、終盤怒濤の展開で2つの事件の接点が明かされる。終盤までほとんど両事件の接点は語られていない状況で一気に展開が変わる流れは爽快だ。前述した事件関係者の苦悩が悲しくも新たな事件を生んでしまうストーリーとなっており、事件関係者の心のケアの必要性を考えさせられる。

 

③ぞっとするラスト

 本作の大筋は前述の通り2つの事件の接点を明らかにしていくというものなのだが、ラストでちょっとゾッとする話が待っている。物語の始めに殺人犯と間違えられて警察に追いかけられ事故死してしまった少年。事故が起こったのは真夜中で、なぜそんな時間に少年がそこにいたのか、追いかけられてなぜ逃げたのかについては最終盤まで語られない。警察も推測を述べるが証拠は無く推測の域を出ない。そしてラストで神の目線あの日少年が何をしたのかが読者に明かされるのだが、その真相はこの物語で一番ゾッとする内容になっている。

 

 

 

~最後に~

 それほど長い物語ではなくサクサク読める作品であったが、サクサク読めたからこそあまり考えずに読んでしまい、ラストの展開の意外性を楽しむことができた。あの日少年が何をしたのか気になる方はぜひ読んでみていただきたい。

 

 

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凪良ゆう著「流浪の月」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは凪良ゆう著「流浪の月」である。本作は第17回本屋大賞受賞作品で、2022年5月13日に松坂桃李広瀬すずの主演で映画公開が予定されている注目作品である。ミステリに分類されるものではないが面白かったので感想を述べたいと思う。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 



 

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~あらすじ~

 我慢をしない自由奔放な母と優しい父と幸せに暮らしていた主人公。しかしその暮らしは突如終わりを告げ、伯母の家で暮らすことに。そこで待っていたのはそれまで彼女が知っていた世界とは異なる生活。それでも馴染もうと頑張っていた彼女だが、心の中では疑問と苦悩を抱えていた。そんな少女を救ったのはいつも公園で小さな女の子を見つめていた青年だった。しかし彼らの関係は周りからは理解されず・・・。

 

 

~おもしろいポイント~

①世の常識に挑む

 本作は、世の常識や正しいとされていることに対して改めて自分の頭で考えることの重要性を説いてくれる。作中ではいわゆる「ロリコン」として少女誘拐で逮捕された青年と誘拐された(当人からすれば救われた)少女のその後の関係を描いており、一般的な常識からすれば加害者と被害者の関係であり、そこに親密な関係が生じることは非常識・奇異の目で見られる。しかしながらそれらはあくまで一般的な話であり、全てのケースにそれが当てはまるわけでは無い。今回の話では、少女は日常から従兄弟によるわいせつ行為を受けていたり、幼少期とは異なる生活を強いられたりして苦痛を感じており、そこから救い出してくれた青年に感謝しており、また誘拐も自らの意思で付いていき、自らの意思で共に過ごしただけで、青年からは何の被害も受けていない。しかし世間は少女の青年に対する好意を「ストックホルム症候群」のせいとみなし、同情し心配してくる。それらが決して悪意のみによるものでもないため主人公は更に苦悩していくこととなるのである。

 

②巧みな文章表現

 ストーリー序盤では主人公と良心との明るく楽しい生活が色とりどりの言葉で飾られており、読んでくる側にもその楽しさや自由奔放さが伝わってくるような表現力を感じる。一方でそれ以降は重苦しい展開となり、序盤とは全く違った雰囲気を醸し出す。こういった流れの変化を情景描写に巧みに取り入れ、読み手が感情移入しながら読み進めることができる。

 

③終盤の驚き

 本作はミステリでも無ければ読者を騙そうとしているわけでも無いが、終盤に少し予想外の展開が待っている。その予想外の事実によって物語の見方がまた少し変わっていくこととなり、最後まで飽きずに読み進めることができる。ミステリにおけるどんでん返しとはまた異なるが、話全体が引き締まり完成度を高めている。

 

 

 

 

 

 

 

~最後に~

 吉田大介氏の解説にはこうある「凪良ゆうの小説を読むことは、自分の中にある優しさを疑う契機になる」と。本作は正にそういった作品だ。もうすぐ映画化も控えているため、本が苦手という方も映画から入ってみるのも良いかもしれない。

 

 

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西澤保彦著「パズラー」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは西澤保彦著「パズラー」である。本作は6つの短編からなる短編集である。西澤氏と言えば、以前このブログでもご紹介したSF推理小説で名高いが、もちろんそれ以外の作品も高い完成度を誇っている。本日は各短編のあらすじと感想を述べたい。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 



 

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~あらすじ・おもしろいポイント~

 

①蓮華の花

【あらすじ】同窓会に参加した作家の主人公はそこである同級生の死を知る。しか    し、以前彼が聞いていた話とは死んだ同級生の名が異なる。一体なぜこんな齟齬が生じ  たのか。様々な説を出して調査していった先に主人公は、自分の人生を左右する真相に思い至る。

【所感】最後まで明確な真相が明らかになるわけではないが、主人公がこれまで築き上げてきた人生が、自分だけの力ではなかったのかと思い至り、薄ら寒い気持ちになっている様子が読み手にも伝わって来て、特に最後の一文はゾッとするようなインパクトがあった。

 

②卵が割れた後で

【あらすじ】ある草地で学生の遺体が発見された。遺体には腐った卵が付着していた。事件を捜査していくと、被害者の周りには殺人の動機になり得る事情を抱えた学生達がいたが、彼らの証言と遺体の状況にはどうも食い違う部分がありしっくりこない。事件の全体像はいかに。

【所感】事件自体は比較的シンプルな物だが、舞台がアメリカということもあり背景の理解にやや時間が掛かった。捜査情報に基づいてあれこれ仮説を立てては否定されていくのだが、最後に辿り着いた真相は序盤に巧妙に張られていた伏線を見事に回収する物で、西澤氏の才能を垣間見た。

 

③時計仕掛けの小鳥

【あらすじ】主人公は高校に進学し、通学路が変わったことで小さい頃通っていた本屋を再発見し立ち寄った。そこで購入した本を読んでいると、中には定規で書かれたような文字で「三好書店にこれを売れ」と書かれたメモが挟まっていた。始めは中古本を売りつけられたと憤っていた主人公だったが、冷静に事実を整理していくと様々な疑問に思い至る。書店の店主の過去や自分の過去と併せてあれこれ想像を巡らせていった主人公は、最後にとんでもない仮説に辿り着く。

【所感】限られた情報から、主人公が必死に仮説を立てては否定しを繰り返して真実に迫っていく様子が印象的。また、真相とおぼしき仮説に辿り着いた主人公の行動も、普通の推理小説とは異なっており、高校生という年齢も相まって大人になるとはそういうことなのだろうかと考えさせられてしまった。

 

 

④贋作「退職刑事」

【あらすじ】刑事が帰宅した後、彼の父がある事件について聞いてきた。既に犯人が自供しており特に不思議な点もなかった事件であったが、彼の話を聞いた父は細かい点に注目し質問してくる。父の質問に答えていくと、明らかにおかしいわけではないがよく考えてみれば納得いかないような点が次々と見出され、事件は当初の想像とは違った方へと展開していく。

【所感】正に安楽椅子探偵だ。当初事件は特に不思議な点がなかったが、話が進むにつれてどんどん謎が深まっていく。しかし最後にはきれいに伏線も回収してスッキリした真相を見せてくれた。

 

 

⑤チープ・トリック

【あらすじ】ある廃協会で首が切断された死体が見つかった。死体は地元で有名な悪ガキで、悪ガキの仲間は次は自分が狙われると主人公に助けを求めに来た。話を聞くと、殺害時に仲間は一緒に居たらしいのだが、どう考えても脱出不可能な密室の状況だったと言う。その話を聞いた主人公が取った行動とは。

【所感】西澤氏に珍しい密室物。とはいえ単なる密室トリックというよりは、それが使用されたシチュエーション・背景が肝となる。ただの密室トリックと思って推理しながら読んでいると最後の結末にゾッとすることだろう。

 

 

⑥アリバイ・ジ・アンビバレンス

【あらすじ】同級生の男子が殺害されて見つかった。同じく同級生の女子が自分が殺したと自供している。しかしながら、実は主人公は事件のあった時間にその女子と男性が一緒に居るところを見ており、しかも数時間建物の中に留まっていたことを知っており、その女子にはアリバイがあることを知っている。なぜ彼女はアリバイがあるのにそれを主張せず自分が犯人だと主張しているのか。分かっている事実を基に推理をしていった先に待っていた彼女の目的とは。

【所感】6つの短編の中で最もうまいと思った作品。通常、アリバイを主張して犯人ではないと主張するのとは逆に、アリバイがあるのに犯人だと主張する理由を考えるというアイデアが素晴らしい。しかもその真相は個人的に納得のいくもので、「なるほど」と感嘆した。後味が良い真相ではないがスッキリと読み終えることができた。

 

 

 

 

 

~最後に~

 本作に収録された6編は、いずれもストレートなミステリというよりはちょっと意外な真相というものが多い。「パズラー」の題名の通り、散りばめられたヒントを拾い集めながら論理的に組み立てていくことでその意外な真相が明らかになっていく。ぜひ一度読んでみていただきたい。

 

 

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伊坂幸太郎著「夜の国のクーパー」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは伊坂幸太郎著「夜の国のクーパー」である。本作は伊坂氏の小説の中でも最も本格ミステリー度が高いとの触れ込みから、本格ミステリーファンである私は大変興味を惹かれ、手に取った作品である。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 



 

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~あらすじ~

見知らぬ土地で目覚めた主人公。縛られて身動きが取れない彼の上には一匹の猫がいた。そしてその猫が突如「ちょっと話を聞いて欲しいんだけど」と話し出す。猫が話すのは猫が住んでいる国の話。話を聞きながら主人公は様々な考えを巡らせる。

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①自国と敵国、猫と鼠

 本作では戦争で負けたある国に、勝った敵国の兵が占領軍としてやってくるところから始まる。その後起こる様々な事件を、猫が見聞きし、その内容を主人公に語っていくのである(主人公はなぜか猫の言葉が分かった)。

 一方人間同士の衝突の裏で、もう一つの衝突が起こる。猫と鼠の衝突である。猫は本能的に鼠を見かけると追いかけたくなるが、鼠はその事を占領軍と共に外から来た鼠の言葉によって初めて疑問に思い、猫との対話を試みるのである。猫は鼠が、鼠は猫が自分の言葉を理解するとは思っておらず、猫は鼠を襲うことを虫を潰す程度にしか思っておらず、鼠は猫に襲われることを天災のような仕方のないこととしか捉えていなかったが、言葉が通じることが分かったことで状況が一変する。鼠は猫に対して、襲わないことを約束してほしいと言うが、猫は本能だから難しいと説明。すると鼠は猫の代わりに猫ができないことをするので襲わないで欲しいと言いだし、それも難しいというと最後には、決まった数の鼠を猫に捧げるので他の鼠は襲わないで欲しいと言い出す。こういったやり取りが、人間同士のやり取りの間に挟まれるのだが、実はこの猫と鼠のやり取りが、人間同士のやり取りとのリンクしており、話を聞いている主人公や読者は猫と鼠のやり取りを通して人間同士のやり取りを類推していくこととなる。

 

 

②自分の頭で考えて行動しろ

 猫が住んでいた国では、10年前まで毎年数人が「クーパーの討伐」に向かっていた。クーパーとは杉の怪物で、毎年一本の杉が怪物となり、放置しておくと街を襲うため、討伐対を送り込んでいるとのことだ。クーパーを討伐した戦士達は、クーパーの返り血のような物を浴びることで透明になってしまい、街には帰ってこない。というのがこの国の国民全てが信じている話で、この国の王が国民にそう説明していた。

 しかしその実は、この猫の住んでいた国は100年前に既に敵国に負けており、毎年奴隷として数人を献上していたというのが真相だ。国王はそれを隠し、国の外にクーパーという敵を作り、それから国民を守ってやっているということで威厳を守っていたのである。しかし10年前に「ある事情」からクーパー討伐は終了し、困った国王は新たな敵として敵国と戦争を開始したと言い出したのである。

 国民は国王の言うことを信じ切っており、自分の頭で考えて行動することを放棄しまっていた。しかしそこに敵国の占領軍がやってくる。この占領軍の正体こそがこの小説最大のどんでん返しなのであるが、その正体を明かすネタ明かしの場面でも、登場人物は繰り返し「自分の頭で考えて判断しろ」と言う。松浦正人氏のあとがきにもあるが、これは今後この国の将来を考えての「命がけの啓蒙」であり、同時に読者に対しても先入観を捨て、自分の頭で考えることの重要性を説いているようにも思われる。

 

 

 

 

 

~最後に~

 本作は、猫目線で物語が語られることや最後のどんでん返しに目が行きがちで、もちろんそれらも本作の魅力の一つではあるが、個人的にはそれ以上に、自分の頭で考えることの重要性を分かりやすく面白く、伊坂氏が解いているように感じた。物語、ミステリー、啓蒙書など様々な側面を持った作品だと思うので、ぜひ一度読んでみていただきたい。

 

 

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