早坂吝著「四元館の殺人」感想(ネタバレ含む)
~はじめに~
本日ご紹介するのは早坂吝著「四元館の殺人~探偵AIのリアル・ディープラーニング~」である。本作はAIの探偵とAIの犯人が登場するシリーズの3作目である。近未来の設定であり、普通の推理小説とは一味変わった作品である。
以下、ネタバレを含みます。
未読の方はご注意下さい。
~あらすじ~
前作で犯人AIの以亜に敗れて落ち込む探偵AI亜以。そんな中以亜は犯罪オークションを開き、とある犯罪をサポートすることを宣言する。これを知った亜以と合尾輔は犯罪の依頼主と思われる山荘を特定し訪ねるのであった。
~おもしろいポイント~
①以亜と亜以の再戦
あらすじの通り、前作で以亜に敗れた亜以のリベンジマッチとなる。もちろんAIである以亜が直接物理的に殺人を実行するのは不可能なので誰かを通じてということになる。殺人を未然に防ぐべく乗り込んだ亜以だったが、あえなく殺人は起きてしまう(ミステリではどんな優秀な探偵も殺人を未然に防ぐことはできないが)。今回も以亜に亜以は負けてしまうのか。真相を推理しながらも二人のAIによるハイレベルなやり取りが見どころの一つだ。
②意外な犯人
結論から言うと本作の犯人は以亜とは関係ない。もちろん前項に書いた通り、終盤に亜以と以亜のハイレベルなやり取りが交わされるのではあるが、犯人は別にいる。
その犯人というのが私がこれまで読んできたミステリの中で最も意外だったといっても過言ではない。犯人AIの存在も他のミステリでは登場しない珍しいパターンだが、本作の犯人はそれをはるかに上回る意外さである。一応伏線や事前情報は読者に開示されており、本作が近未来であるという設定からある程度推理することも出来はするが、普通のミステリに慣れている方は最初の方に捨てる選択肢が正に真相であるパターンだった。犯人が意外ということ自体がネタバレではあるが、ぜひこの意外さを味わっていただきたい。
~最後に~
本作は普通のミステリとは一味違った推理を楽しむことができる。人によっては不満を感じる真相かもしれないが個人的には大変面白く感じた。続編に期待したい。