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◯初めての方にお勧めの記事!

夏木志朋著「二木先生」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは夏木志朋著「二木先生」である。本作は2019年ポプラ社小説新人賞受賞作であり、デビュー作とは思えないほどの引き込まれる設定と展開が話題となった。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 





 




 

~あらすじ~

 高校生の田井中はいつも周りから「」と言われ続け、なんとか周りになじもうと試行錯誤するがうまくいかず、生きにくさを感じながら日々を過ごしていた。一方、担任の美術教師・二木はいわゆる模範的な人間であり、多くの生徒から好かれていた。対照的な生活を送っている二人だが、田井中は二木先生のある「重大な秘密」を知っていた・・・。

 

 

~おもしろいポイント~

①変・アブノーマル・個性・多様性

 本作の主人公の一人、高校生の田井中は周りから「変」と言われ続け、周りとなじめないでいる。またもう一人の主人公である二木先生も普段は常識人として生活しているが大きなアブノーマルを秘めている。

 早速ネタバレだが、二木先生が抱えるアブノーマルとはズバリ、小児性愛(いわゆるロリコン)である。これは最も一般的にして許されないアブノーマルの一つであり、共感はできずとも入り込みやすい設定である。このような「まわりと違う」を抱える二人がぶつかり合い、意見を交わし、どう生きていくのかを考えていく。

 近年、個性・多様性が重んじられる時代になりつつあるが、日本は未だに個性を封じ込め、周りと同じようにふるまい、目立たないように生きることを強いられる場合が多いように感じる。そのような中でも田中井はなんとか周りに溶け込もうと努力していたがうまくいかず、周りから「変な奴」と思われている。一方、二木先生はロリコンというアブノーマルを抱えつつも、それを行動に移さなければ犯罪になるわけでもなく、賢く常識人を演じて生きている。このように種類は違えど周りとの違いの中で、両者は異なった生き方をしており、両者が交わることで改めて生き方を考えさせられる作品となっている。 田井中や二木先生ほどでなくとも、人間誰しもが周りとの違いを抱え、悩み、常識人を装ったり孤立したりしながら生きているのではないだろうか。この物語はそうした現代に生きる全ての人に生き方を改めて考える機会を与えてくれると思う。

 

②息もつかせぬストーリー、個性豊かなキャラクター

 前述の通り、本作の題材は決して明るいものではなく、どちらかといえば重たいテーマである。にもかかわらず本作はテンポがよく意外性もあるストーリーと途上人物の個性の強さなどが読む人を惹きつけ、どんどん読みたくなるような作品となっている。これがデビュー作というのだから夏木氏の他の作品も楽しみになってくる。個人的には田井中と二木先生のキャラがよく立っており、また2人の対称性・共通性がよく描かれており、物語に入り込みやすい印象を受けた。ストーリーも読み初めの頃の予想とは異なる方へ展開していき、次にどのような展開が来るのかワクワクすることができた。最後は騒動の途中で幕が引かれるため、人によっては中途半端に感じてしまうかもしれないが、その後の二人の成り行きを想像するのもまた一興である。

 

 

~最後に~

 普段あまり読まないようなジャンルの内容であったが、物語としても非常に面白くすらすらと読み進めることができた。表紙からして引き寄せられる本であるが、ぜひ一度手に取ってみていただきたい。

 

 

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