早坂吝著「探偵AIのリアル・ディープラーニング」
~はじめに~
本日ご紹介するのは、早坂吝著「探偵AIのリアル・ディープラーニング」である。タイトルから興味をそそられる本作は探偵AIシリーズの第1作である。本日は本作の魅力について語っていきたい。
以下、ネタバレを含みます。
未読の方はご注意下さい。
~あらすじ~
父が2つのAIを残して亡くなった。片方は探偵として謎を解くAI・相以。そしてもう一方は犯人として犯罪を考えるAI・以相である。双子のAIは犯人AIが問題を出し、探偵AIがそれを解くという学習を無数に行うことで能力を高め合っていた。このAIが犯罪者集団に奪われ悪用されてしまう。
~おもしろいポイント~
①周りを巻き込んだ姉妹バトル
本作では、犯人AI・以相が犯罪者集団に奪われてしまうのだが、そこで以相は積極的に犯罪を計画し、犯罪者達に助言する。それは探偵AIである相以を超えたいが為である。互いに謎を出して解き、共に成長してきた2人だったが、徐々に成長し、相手を超えたいと考えるようになったのだ。AIでありながらも人間味のある彼女らのバトルは、周りをかなり巻き込んだはた迷惑な物ではあるが、見ていて楽しくなる物である。
②想像しやすい設定
本作ではAIが活躍していくが、内容的には極近未来的(もしくは既に可能となっているかもしれないが)であり、現代の私たちにとっては物語に入っていき易い内容となっている。また、登場するAIもはじめから完璧なわけではなく、はじめはポンコツだが徐々に機械学習を積み、成長していく様は、あたかも人間の成長を見ているようであたたかいめで見ていたくなる。また、内容がAIについての作品なだけに、「シンギュラリティ」や「フレーム問題」、「シンボルグラウディング問題」など、興味をそそるワード・説明が多く出てくるため、好きな人はとても楽しく読めるだろう。逆によく知らなかった人にも分かるように分かりやすく説明しているため、AIについて知りたい人にもお勧めかもしれない。
~最後に~
本作は特殊設定・SF物に近いが、内容が現代に近いためとても分かりやすい。一方でAIが登場することで推理小説において大事な非現実感をよりいっそう高めており、バランスの良い作品だと思う。読みやすいのでぜひ一度読んでみていただきたい。