神永学著「心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている」を語る(ネタバレ含む)
~はじめに~
本日ご紹介するのは神永学著「心霊探偵八雲1 赤い瞳は知っている」である。心霊探偵八雲シリーズの記念すべき1作目で、主に3つの短編から構成されている。大人気シリーズの始まりがどういったものであったか見ていきたい。
以下、ネタバレを含みます。
未読の方はご注意下さい。
~あらすじ~
斉藤八雲は片眼だけ開いて生まれ、しかもその片眼は朱く死んだ人間の魂が見えるという。そんな彼の下にやってくる依頼はちょっと変わった物ばかり。めんどくさがりながらも捜査を続けていった先には、死んだ人間の声が聞ける彼にしか解決できない事件が待っている。
~おもしろいポイント~
①開かずの間
ある大学生グループが廃屋で肝試しを行い、幽霊を見て逃げ出した。その後一人は失踪し、一人は電車に轢かれて死に、もう一人は熱を出して意識不明になってしまった。意識不明の友人を助けるために八雲のもとを訪れた晴香。八雲は乗り気では無かったが結局調査を行うことに。
通常推理小説では、ここから被害者の証言や現場の物証から真実を解明していくが、八雲は違う。意識不明の友人に取り憑いた霊からのメッセージを受け取ったり、晴香に憑いている晴香の姉に助けてもらったりと、通常ではあり得ないことの連発だ。そういった霊達の声に耳を傾けることで八雲は真相へと迫っていくのである。
②トンネルの闇
交通事故で毎年死者が出ているトンネル。そこを通った車は心霊現象に遭遇し事故に遭ってしまうと言う。ある日合コン帰りに晴香を乗せた車もそのトンネルで危うく事故を起こしそうになる。更にその場で幽霊も見てしまった晴香は八雲に相談する。除霊はできないと言いながらも調査を始めた八雲。その先には想像以上に深く暗い闇が待っていた。
よくある心霊体験物かと思いきや、捜査を続けていくとどんどん人間の闇が見えてくる。真相自体は驚くべきものではないが、幽霊なんかより人間の方が恐ろしいと感じる作品。また、他人に冷たい八雲が前回の事件で晴香との絆が深まり必死に守ろうとする姿に、八雲の心情の変化を感じる。
③死者からの伝言
ある日晴香のもとに親友の霊が現れ、「逃げて!」と訴えかけてきた。心配になった晴香は近くの親友の家を訪ねるが応答はない。そこで晴香は八雲に相談することにしたのだが‥。
調査を進めると親友だと思っていた友達の知らない一面が次々に明らかになっていく。親友はある事件に関係しており、晴香はその真相に近づいてしまったために犯人に拉致され殺されそうになる。晴香を探す八雲は必死で、二人の間に固い絆ができていることを感じさせる。
~最後に~
本作は、主人公・八雲の霊が見えるという特殊設定をうまく演出に使いながら事件を解決に導いている。また、登場人物達の人間関係の変化も見どころだ。短くて読みやすいのでぜひここから心霊探偵八雲シリーズに手を出してみてはいかがだろうか。