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麻耶雄嵩著「隻眼の少女」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは麻耶雄嵩著「隻眼の少女」である。本作は本格ミステリ大賞日本推理作家協会賞を受賞した作品である。本日はこちらの感想について語りたい。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 



 

 

 

 





 

~あらすじ~

 自殺のために昔訪れた山奥の村を訪ねた主人公。しかしそこで彼は残忍な連続殺人事件に遭遇する。探偵を名乗る隻眼の少女とともに事件解決を図るが・・・。

 

 

~おもしろいポイント~

①THE・名探偵

 本作では、母親が有名な探偵でありその名を受け継いだ隻眼の少女探偵として事件の解決に取り組む。彼女にとってはこの事件がデビュー戦であったが、初めてとは思えないほど見事な推理で真相へと迫っていく。作品中盤まで、わずかの矛盾や不合理から事件を解いていく姿は正に多くの方が想像する名探偵といった印象だ。

 

②名探偵の敗北

 前述のとおり隻眼の少女は名探偵として中盤で事件を解決するが、実はこの真相は誤っており、続く殺人を許してしまう。名探偵が連続殺人を許してしまうというのはもはや常識だが、本作では犯人が探偵をミスリードするために残した罠に嵌ってしまったという形で、名探偵が登場する作品では珍しい。確かに回収しきれていない伏線が非常に多く、一部の伏線からの絞り込みのみで犯人の特定を行っていたためスッキリしない感はあった。それでも何とか真犯人への糸口を見つけ、2度目の推理により一見事件は解決したように見えた。

 

③名探偵の復活

 作品中盤で一見解決したように見えた事件だったが、その18年後、主人公が村を訪れると再び事件が発生する。しかもその手口から18年前と同一犯とみられ、18年前の2度目の推理も間違いであったことが判明する。これに挑むのは18年前に事件を解決した隻眼の少女の娘。娘は母親と比べると頼りなさそうに見えたがその実力は確かで、18年前に母が見落とした不合理を見つけ、そして解決していく。18年前の2度目の推理でも確かに拾い切れていない伏線や謎が残されており、今回の推理でそれらが全て繋がって回収される。やはり2人の殺害を許してしまったが最後の殺人は何とか食い止め犯人を罠にはめて追い詰める。18年前に5人、そして今回は2人を殺しさらに殺人を続けようとしていた凶悪殺人犯の正体は意外過ぎるもので、その動機も恐るべきものだった。ここはぜひ読んで確かめていただきたい。

 

~最後に~

 中盤までは所謂ツンデレの隻眼少女探偵が不整合な部分に論理的解釈を与えて謎を解いていくよくある推理小説だったが、終盤犯人が判明することで様相が一変する。本格ミステリ大賞を取っただけあった一筋縄ではいかない奥深い作品だったので、ぜひ一度読んでみていただきたい。

 

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