まさきとしか著「あの日、君は何をした」
~はじめに~
本日ご紹介するのはまさきとしか著「あの日、君は何をした」である。「完璧な母親」などで知られるまさきとしか氏。本作もそれに並ぶ傑作ミステリという事で読んでみたので感想を述べたい。
以下、ネタバレを含みます。
未読の方はご注意下さい。
~あらすじ~
ある幸せな家庭で育った少年が逃亡中の殺人犯を捜索中の警察に追いかけられ事故死した。それから十数年後、ある平凡な家庭の夫が行方不明となった。2つの一見全く無関係とも思える事件。両事件の関係者や警察達がそれぞれ事件の真相を追いかけていった先には意外な結末が待っていた。事件のあった日少年は何をした?
~おもしろいポイント~
①事件関係者のその後
ミステリではしばしば、事件を捜査する探偵や警察目線で物語が進む。本作でも警察目線で進むパートはある。しかしながら印象に残るのは被害者の家族など関係者の描写だ。ある関係者は家族の死をすぐに忘れてしまい悲しめない自分を責め、ある関係者は家族の死を受け入れられずにおかしくなり、またある関係者は家族を疑い出す。小説として読むとちょっと異常な登場人物として映ってしまうが、実際事件関係者の心情は我々では想像できないほど大きく揺さぶられると思われ、この小説での描写もあながちか条では無いのだろう。
②2つの事件の接点
あらすじで書いたとおり、この物語中では2つの事件が発生する。一見両事件には関連性が見いだせないのだが、終盤怒濤の展開で2つの事件の接点が明かされる。終盤までほとんど両事件の接点は語られていない状況で一気に展開が変わる流れは爽快だ。前述した事件関係者の苦悩が悲しくも新たな事件を生んでしまうストーリーとなっており、事件関係者の心のケアの必要性を考えさせられる。
③ぞっとするラスト
本作の大筋は前述の通り2つの事件の接点を明らかにしていくというものなのだが、ラストでちょっとゾッとする話が待っている。物語の始めに殺人犯と間違えられて警察に追いかけられ事故死してしまった少年。事故が起こったのは真夜中で、なぜそんな時間に少年がそこにいたのか、追いかけられてなぜ逃げたのかについては最終盤まで語られない。警察も推測を述べるが証拠は無く推測の域を出ない。そしてラストで神の目線であの日少年が何をしたのかが読者に明かされるのだが、その真相はこの物語で一番ゾッとする内容になっている。
~最後に~
それほど長い物語ではなくサクサク読める作品であったが、サクサク読めたからこそあまり考えずに読んでしまい、ラストの展開の意外性を楽しむことができた。あの日少年が何をしたのか気になる方はぜひ読んでみていただきたい。