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◯初めての方にお勧めの記事!

北山猛邦著「『アリス・ミラー城』殺人事件」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

 本日ご紹介する作品は、北山猛邦著「『アリス・ミラー城』殺人事件」である。古典的な展開ながら、読者の間で物議を醸している本作について、個人的な感想を交えてご紹介したいと思う。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい

 

 

 

 

 

 

 

                    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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~あらすじ~

ある孤島の城に集められた探偵達。はじめは談笑していた彼らであったが翌朝ヒトリノしたいが見つかったのをきっかけに、ひとりまた一人と殺されていき、疑心暗鬼へと陥っていく。孤島というクローズドサークルで起きた連続殺人の意外な犯人とは?

 



~面白いポイント~

①王道の展開

 この作品の舞台は孤島。そして集められたのは探偵達。鏡の国のアリスをモチーフとした城。そこに置かれた11個のチェスの駒が一つずつ減り、一人ずつ殺されていく展開。どれもがミステリーの王道を行く古典的な作品と言える。最近は変わり種のミステリーも多くなってきたが、それでも王道的な展開が嫌いな人は少ないと思うし、読者が状況を理解しやすいという点でも読み進めやすい作品と言える。そして王道的展開だけに重要なのはラストの真相であり、それによってこの作品のアイデンティティが確立されるのであるが、次項で述べる通り本作のラストは色んな意味で衝撃的で話題となるものとなっており、全体としてのバランスのよさを感じた。

 

②物議を醸す真相

 さて、問題の真相であるが、簡潔に言うと集められた人々の数が10人だと思わせておいて実は11人であり、いないように錯覚させられていた一人が犯人であるという、王道的な叙述トリックである。ではなぜこれが物議を醸しているのかというと、この犯人は実際に他の登場人物達と同じ場にいて会話しているにもかかわらず、他の人が不自然に犯人に触れなかったりいないように振る舞っているため、一部の人はフェアではないと感じてしまうためだろう。個人的には、ミステリーにフェアな記述は全く必要ないとは言わないが、物語として成立して面白ければそれで良いと考えているためそれほど気にならなかった。むしろ真相に辿り着いたときに一瞬理解ができなかったことが印象的で、それほど巧妙に隠されていたと言える。また、確かに犯人に対してやや不自然な扱いはあるものの、読者が真相に辿り着きうるヒントは各所に散りばめられており、真相を知った後に読み返すとやられたと思うので、ある程度のフェアさはあるのではないだろうか。

 

 

~最後に~

 本作は、真相が意外すぎておそらく一度読み終わってもよく分からないと感じてしまうだろうし、人によっては納得できないかもしれない。しかしながら、再度念入りに読んでみればフェアに拘りすぎない方であれば十分楽しめる作品であると思う。人によって感じ方は異なるの思うので、気になる方はぜひ読んでみていただきたい。

 

 

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