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◯初めての方にお勧めの記事!

西澤保彦著「七回死んだ男」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、西澤保彦著「七回死んだ男」である。西澤氏のミステリの魅力はなんと言っても「SF推理小説」である。本稿では、SF推理小説とは何かを中心に、作品の魅力を語っていく。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

                

 

 

 

 

 七回死んだ男』(西澤 保彦):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部

~あらすじ~

ある正月、祖父の家に行った主人公。祖父には莫大な遺産があり、主人公の母親やその姉妹がその遺産を狙って火花を散らしていた。主人公は遺産には全く興味が無いのだが、祖父の奇抜な提案により遺産争いに否応なしに関わることとなる。しかし、そんな遺産争いのさなか、祖父の死体が発見される。いったいだれが祖父を殺したのか、なぜ殺したのか。様々な疑問を抱きながら取り調べを受ける主人公。しかし、時刻が0時を回り日付が変わった瞬間、主人公は寝床で目を覚ます。そう、主人公にはタイムリープのようにその日を何度も繰り返すことができる力があったのだ。この力を使い、主人公は祖父の死の真相の究明とその阻止を目指すのであった。

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

①SF推理小説

西澤氏の真骨頂である「SF推理小説」。それはSF的な設定(本作では1日を何度も繰り返せること)推理小説に適用するというものだ。もちろん、何でもありのSF設定をそのまま推理小説に導入しても、とうてい論理的推理など不可能な無秩序なものとなってしまう。SF設定を導入しつつ、その設定に詳細な決まりや制限を明示することで、論理的な推理を可能にする、それが西澤氏のSF推理小説なのである。今回ご紹介する「七回死んだ男」においても、主人公は1日を何回も繰り返せるのであるが、いつでも何回でも自由に繰り返せるのではなく、発生は主人公の意思によらずランダムで起こり、繰り返す回数にも制限があり、そしてなにより、オリジナル(1回目)の改変も思いのままとは行かず、基本的にオリジナルに沿うように修正されていくなど、トンデモ設定でありながらロジックな推理を可能にしている。

 

②魅力的な人物関係

本作のもう一つの魅力は、登場人物の関係性や裏の事情設定である。本作の根幹にある、遺産争いには主人公の母親姉妹の抱える様々な事情や祖父の思惑が絡んでおり、それが謎解きのヒントになるのである(無くても真相は分かるが)。また、母親姉妹の子ども(主人公の従兄弟)立ちの間でも、恋愛感情が複雑にからみあい、それが真相の解明を更に難しくしている。このように、単に犯人を推理するだけでなく、登場人物の感情を含めて考えることで、この小説をより一層楽しむことができるのである。

 

 

 

 

 

~最後に~

本記事では「七回死んだ男」のみをご紹介したが、今回ご紹介した魅力は、西澤氏の他の作品にも共通することである。この作品を読んで中々おもしろいと感じた方は、「人格転移の殺人」や「瞬間移動死体」、「複製症候群」など他の作品もぜひ読んでみていただきたい。

 

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