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◯初めての方にお勧めの記事!

伊坂幸太郎著「オーデュボンの祈り」感想(ネタバレ注意)

~はじめに~

本日ご紹介するのは、伊坂幸太郎著「オーデュボンの祈り」である。人気作も多い伊坂氏の作品であるが、本作はその始まりとなるデビュー作である。本稿では、デビュー作ではあるが昨今の人気作と同様の魅力ある文章や不思議な世界観の魅力を抱える本作の魅力を語っていきたい。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 

 

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~あらすじ~

主人公はコンビニ強盗をはたらき逃走中だったが、気が付くと見知らぬ島にいた。島の住人は嘘しか言わない画家殺人を許されている男、さらには人間ですらなく人語を話未来を見ることのできる案山子など奇妙な者ばかり。そして翌日、この案山子がバラバラになって死んでいるのを発見する。主人公は未来を見通せる案山子がなぜ殺されたのかと疑問を持ち調査を始めるのであった。

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①引き込まれる世界観

本作の舞台となる世界(島)は普通の人が思いつかないような設定が盛りだくさんである。あらすじで出てきた嘘しか言わない画家や未来を見通せる案山子はもちろん、地面に耳をつけて自分の心臓の音を聞いている少女や死にゆく人の手を握る仕事をしている女性など、現実ではあまり見かけないような個性を持っていたり過ごし方をしていたりする者ばかりである。こういった奇抜な設定は、読んでいる者を飽きさせないだけでなく、実はこれらの設定一つ一つが案山子の死の謎を解き明かすピースとなっているのである。島民達の奇妙だが定まった個性や習慣が主人公にヒントとなり、主人公や読者を導いていく伊坂氏の緻密な文章には感嘆するしかない。デビュー作からこのような魅力ある世界観・文章を創り出せているのだから、この後の作品が名作の連続となることは想像に難くないだろう。

 

 

 

②案山子の死の真相そして主人公たちの運命

物語の最大の謎「未来を見通せる案山子はなぜ死んだか、誰に殺されたか」は、島民達が抱える様々な事情が絡み合って明らかにされる。主人公は始め島民に聞き込みをするのだが真相は見えてこず、そんな中で更に事件が起きて謎が深まっていく。しかしながら新たに起きた事件をきっかけに主人公は島民達に隠された秘密を理解していき、ついには真相に辿り着くのである。案山子の死には未来が見えるが故の苦悩と後悔が込められており、自分が案山子だったらどうしただろうかと考えさせられてしまう。

また、物語終盤ではコンビニ強盗を犯した主人公を追って、元恋人や悪徳警官までもが島に乗り込んでくる。しかし悪徳警官は運悪く殺しを許された男の裁きを受け、主人公は元恋人と再会を果たす。死者は出ているが恐ろしい感じはなく、ハッピーエンドのようだがどこか悲しいような印象を受ける結末となっている。

 

 

 

 

 

 

~最後に~

本作は美しい緻密な文章で構成されているだけに、あらすじや魅力を短文で語ることは非常に難しいように感じた。本記事では残念ながら本作の魅力を語り切れていないため、ぜひ実際に読んでいただきたい。

 

 

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