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◯初めての方にお勧めの記事!

道尾秀介著「いけない」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

本日ご紹介するのは道尾秀介著「いけない」である。本作はこれまでに無い方式での謎解きや結末が楽しめるミステリとして話題を呼んだ。本日は私なりの解釈と感想について述べたいと思う。ネタバレ要素満載なので未読の方はご注意いただきたい。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 

 



 

~あらすじ~

 ある町で起こるいくつかの事件。それらの事件は表面上解決され時代は進んでいくが、そこには隠された真相がある。各章の最後に挿入された1枚の写真には文章では語られなかったその章の真相が映り込んでいる。写真に隠された真相とは?

 

 

~おもしろいポイント~

①弓投げの崖を見てはいけない

 「弓投げの崖」という自殺のスポット近くのトンネルで事故が発生。事故を起こした若者達は相手の運転手がまだ息があったにもかかわらずハンドルに叩き付け、金を奪って逃走。

 その後の警察の捜査で容疑者が浮上したがその矢先にその一人が事故のあったトンネル近くで頭を殴られて殺害された。警察は殺害された容疑者の仲間を取り調べるがうち一人が被害者の妻に復讐に向かったことが判明。警察官の男性は被害者の妻の元へと急ぐ。

 この物語では中盤で、被害者の男性はハンドルに頭を叩き付けられたが生きており、死亡したのは男性の息子であったことが明かされる。被害者の男性は盲目になっていたが、執念で容疑者の若者を待ち伏せて殺害したのだった。そして最後に男性は妻に止められながらも復讐を続けるために家の外に飛び出し、直後に車が何かをはねる音がしてこの章が終わる。

 最後のページに載せられた写真には事件のあったトンネルと被害者の自宅の場所、周囲の施設などが載った地図が記されている。この写真と本編の文章を読むと最後の場面で車に撥ねられたのが誰か想像が付くというわけだ(あくまで想像で、真実は後の章で語られる)。撥ねられた候補は、被害者の男性・被害者の妻を殺そうとする容疑者の仲間・被害者の妻を助けようとする警察官の3人。地図と文章からはねた車は被害者男性の自宅を左に見ながら通過しようした際に右から飛び出した人をはねたことが分かる(この時点で被害者の男性は除外される)。また、容疑者の仲間は近くの商店街を南に抜けてから被害者宅へ向かおうとしているのに対し、警察官は途中で横道に抜けている。被害者宅の正面に出ている道は警察官の通った横道であることから跳ねられたのは警察官ではないかと予想できる(被害者の仲間の可能性もなくはない)。

 

②その話を聞かせてはいけない

 中国から引っ越してきて中華料理店を営んでいる中国人の家族。そこの息子はある日、万引きに入った文具店で店主が殺されている可能性に気付く。

 名前のことで馬鹿にされて友だちがいなかったその子は見たことを誰にも話せずにいたが、嫌っているクラスメートに詰め寄られ打ち明けてしまう。しかし見間違えだと言われてしまい、再び文具店を尋ねると殺されたと思った店主のおばさんは生きており、勘違いだったと安堵する。

 しかしその夜のニュースで、文具店のおじさんが死体で見つかったとの報道がある。真相に気付いたその子は文具店のおばさんとその甥に拉致され、弓投げの崖に落とされそうになる。果たしてどうやって助かるのか。

 この章の最後に挿入された写真はおばさんと甥がインタビューを受けるニュース画面で、画面の端に子どもが車に忍び込む姿が映っている。おそらく主人公の子どもが唯一殺人現場を見たことを話したクラスメートが車に忍び込んでおり、崖で主人公の子どもが落とされそうになった時におばさんと甥を崖下に突き落としたことが分かる。その後の章で嫌っていたこのクラスメートと主人公の子どもが仲良しになって遊んでいる場面がある。

 

③絵の謎に気づいてはいけない

 ある宗教団体の女性が自宅のドアノブに首を吊って死んでいるのが発見された。事件を捜査していった先輩刑事と新人刑事のペアだったが、その途中で被害者が住んでいたアパートの管理会社社長が死体で発見された。

 一緒に発見されたメモ帳にはその社長が犯人に気付き、犯人を脅して金を取ろうとしていたことと、電話で話している隙に犯人が何か現場をいじったこと、ドアノブよりも上で首を吊っているような絵が描かれていた。おそらく社長は犯人に逆に殺されてしまったのだろうが、絵の意味がさっぱり分からない。また、犯人が鍵の掛かった密室で被害者を首つりで殺した方法も分からないままだった。

 行き詰まった刑事ペアだったが、二人で飲んでいるときに新人の刑事がスマートロックにより外側から鍵を掛けた可能性に気付くが、翌朝死体で見つかり事件は自殺として処理される。

 この章の最後に挿入された写真にはメモに書かれた絵が映っている。しかし描かれているのは死体ではなく、ドア上部のスマートロックを矢印で示した絵だった。本編中に書かれていたドアノブより上で首を吊っているような絵はこの絵を隠すために書き足された物だったのだ。新人刑事のペアだった先輩刑事は新興宗教の信者で、真相に気付いた者を殺していた。

 

④街の平和を信じてはいけない

 この章ではこれまでの真相が暗に語られる。1章で事故に遭い盲目になった男性は、これまでの復讐を妻に紙に書いてもらい、自首しようと刑事に会いに行く。

 一方その相手の刑事は、新興宗教信者として信者がスピード違反で起こした死亡事故をもみ消したり(1章)、その事を告白しようとする信者を自殺に見せかけて殺し、更に真相に気付いた新米刑事も殺したり(3章)して疲れ果て、自白した手紙を鞄に入れていたがまだ誰にを渡せずにいた。

 刑事に手紙を渡しに行く途中で自転車に乗った子ども2人と出会う。この子どもたちは2章で出てきた中国人の子どもとそのクラスメートだ。中国人の子どもは幼稚園の時、友だちにいじめられていたところを盲目になった男性に助けられて感謝していることを伝える。刑事に告白文を渡した男性だったが、子どもの感謝の言葉を聞き、もう少し妻と一緒にすごそうとそっと手紙をカバンから抜き出す。しかしその手紙は刑事が書いた方の告白文であった。

 それに気付いた刑事はこれで自分の罪が全て明らかになると考えるが、盲目の男性は気付いて折らず手紙を破り捨ててしまう。一方刑事の下に残った男性の告白文を見た刑事だったが首をかしげるのだった。

 この章の最後に挿入された写真は白紙の便箋。盲目のため妻に代筆してもらった男性だったが妻は書く振りをして何も書いていなかったようだ。こうして誰の罪も明らかにされないまま街には平和な時が流れる。

 

 上述の通り、舞台となったこの街では様々な凶悪な事件が起こっているにも関わらずそのほとんどが表に出てきておらず、偽りの平和を享受しているように思われ不気味さを感じる。またそれぞれの事件も人間の醜さや恐ろしさが感じられ、道尾秀介らしい作品に思われた。

 

~最後に~

 本作は読者に真相の解釈を委ねる、あえて文章で真相を記さないというこれまでのミステリと一線を画する試みが成されている。解釈は人それぞれのため真相は上述したものの一つではないかもしれない。一度呼んだかもぜひもう一度読んで他の真相を想像してみてはどうだろうか。

 

 

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