島田荘司著「セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴」感想(ネタバレ含む)
~はじめに~
本日ご紹介する作品は、島田荘司著「セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴」である。タイトルとカバー絵のかっこよさから買った作品ではあったが、内容も面白かったためご紹介したいと思う。
以下、ネタバレを含みます。
未読の方はご注意下さい
~あらすじ~
名探偵・御手洗の下を訪れた老婦人。彼女が御手洗に話した内容は突拍子もない内容で冷やかしかと思われたが、御手洗は興味を示し依頼を受けることとなった。捜査を続けていくと様々な奇妙な出来事が起こっていき石岡は困惑するが、御手洗は何かつかんでいる様子。例のごとく中々真相を教えてくれない御手洗にやきもきしながらも捜査を続けていった先に待っていた真相とは・・・。
~面白いポイント~
①心温まるミステリー
本作はあるお宝を巡って様々な登場人物が右往左往する物語であるが、その中で貧困にあえぐ少女が登場する。彼女がこれまでうちにサンタが来たことはないと言うのを聞いた御手洗は「貧乏人を差別するとはな、弱い物の味方セント・ニコラスも、なんて堕落したんだい!」と憤った。実はこの時御手洗はお宝の場所を推理で知っていたが、そのお宝を巡って人々が争うならそんな物ない方が良いと考えていた。しかし少女の話を聞き、一度くらい奇跡を味わわせてやりたいと思うようになり、亡き祖母からの手紙を装い少女にお宝を発見させるのであった。お宝を巡って大人達が醜い争いを繰り広げる中、少女の純真な心に対する御手洗の思いやりを垣間見ることができ、最後にはほっこりすることができる作品である。
②敵を欺くにはまず味方から
本作では途中、偽の真相が御手洗の口から語られる。これは、御手洗がある程度真相を見抜いた上で犯人を誘導するために行ったことだが、石岡君は最後の方までその事が真実だと信じ切っていた。石岡君だけでなく読者の多くも御手洗が言うのであればそうなのか、と釈然としないながらも信じて読んでいった方も多いだろう。本当の真相を聞くと全ての出来事が噛み合い、これまで釈然としなかった部分がスッキリとするので嘘の真相に無理があったのは分かるのだが、普通に読んでいるとそんなものかと納得してしまうのである。前述の通り当初御手洗はこの嘘の真相でこの事件に幕を引くことでお宝が誰の手にも渡らないようにしようと考えていたためこのように嘘の真相を語ったのであるが、最後には全ての真相を石岡君達に明らかにし、石岡君は驚きの連続となるのであった。
~最後に~
本作は、御手洗潔シリーズの中でも御手洗の子どもに対する優しさが垣間見られる貴重な作品となっている。クリスマスが近い今この時期にぜひ読んでいただきたい一作である。