おもしろいゲーム・推理小説紹介

おもしろいゲーム・推理小説紹介

推理小説、マンガ、ゲームなどの解説・感想

◯初めての方にお勧めの記事!

ゲーム「ヴァルキリープロファイル-レナス-」を語り尽くす

~はじめに~

今回ご紹介するのは、「VALKYRIE PROFILE -LENNESTH-(ヴァルキリープロファイル-レナス-)(VPL)である。以前、このブログの記事で「ヴァルキリープロファイルシリーズ」については語らせていただいたが、その中でも最初の作品であるVPLは最も完成度が高いシリーズ屈指(日本RPG屈指)の名作である。本日はその魅力について長文で語っていきたい。

 

www.valkyrieprofile.com

 

*ネタバレも含むので、初見でプレイされたい方はご注意下さい。

 

 

                                                                          

 

 

 

 

 

 

 

f:id:Ashito:20210713193039p:plain

~あらすじ~

アース神族ヴァン神族が争いを続けている神界・アスガルドアース神族の王・オーディンは未来を予言するという「ユミールの首」から「神々の黄昏(ラグナロク」が近いことを知る。そこでオーディンは来る決戦に向け、戦力となる人間の英雄達(エインフェリア)の魂を選定し、神界へと導く命を戦乙女・ヴァルキリーの一人であるレナス・ヴァルキュリアに下したのであった。

 

 

 

 

 

 

ヴァルキリープロファイルの魅力~

 

①ストーリー編(Aエンディング、順序や内容は一部脚色あり)

①-1:アリューゼ・ジェラード

ヴァルキリーは3女神(長女アーリィ、次女レナス、三女シルメリア)で一つの身体を共有しているため、他の一人が活動中は人間に転生するという特殊な存在である。人間に転生することで、それによってより人の感情・思いを理解できるようになり、神と人とを橋渡しする役割を担う。アーリィが最も神に近い考えを持ち、シルメリアが人間に近い考えを持ち、レナスはその中間とされる。今回、オーディンからエインフェリア選定の命を受けて目覚めたのはレナス。しかし目覚めたレナスには人間に転生していた頃の記憶がなかった。これはラグナロクに向けて魂の選定を確実に遂行させるためにオーディンによって記憶を封印されていたためだが、レナス自身はその事を知らない。

人間達の住む世界・ミッドガルドへと舞い降りたレナス。レナスには意識を集中することで死に瀕した者の感情や想いを読み取ることができるという能力があり、この能力を使って神界で戦力となり得るエインフェリアを探すのである。耳を澄ましたレナスに聞こえてきたのはアリューゼというある傭兵の声だった。アリューゼは凄腕の傭兵で、先の戦いでも大活躍し国王から報奨を貰うのだが、栄誉のために戦っているのではないと足蹴にする。すると数日後、アリューゼの家に明らかに変装した幼い女性・アンジェラが尋ねてきた。アンジェラの正体は実は王女・ジェラードで、父親を馬鹿にされた恨みを晴らしに来たことを知りアリューゼは反省する。そんなある日、アリューゼは傭兵仲間から積み荷を隣国まで護衛する仕事を受ける。中身を見てはいけないという怪しい仕事だったが引き受ける。しかし途中で王国の兵達に止められ、中を確認すると何と王女・ジェラードであった。大臣の一人が王国の転覆を狙って隣国に王女を受け渡したのだ。逃げ出したアリューゼだったが、悲鳴を聞いて引き返すとそこには広告の兵達を襲うバケモノが立っていた。実は大臣は2重の手を打っており、王女を探す兵達に人間をバケモノに変える「グールパウダー」という薬を持たせ、見つかった場合には関係者もろとも皆殺しにするつもりだったのだ。レナスの力を借りて、迷いながらもバケモノと化した王女を殺したアリューゼ。アリューゼは怒り、大臣を殺すことを決意する。城に突入するも多くの兵達を殺してしまい、これ以上暴れると弟にまで被害が及ぶと思ったアリューゼは自害するのであった。死したアリューゼをレナスはエインフェリアとして迎えようとしたが、「死神とお前はどう違う?」と拒絶する。しかしそんなアリューゼを窘める声があった。ジェラードである。彼女もエインフェリアとしてレナスに選定されていたのだ。彼女の説得もありアリューゼはエインフェリアとしてレナスと共に行くことを決意したのであった。

 

①-2:プラチナ・ルシオ

レナスは再び耳を澄ます。聞こえてきたのはスラム街に暮らす少年・ルシオの声だった。彼には昔プラチナというレナスと同じ美しい銀髪を持つ幼なじみがいた。実はプラチナはレナスの転生体なのだがルシオはもちろんその事を知らず、レナスもまた記憶を封印されているためルシオを覚えていない。プラチナの家は貧しく、プラチナは母親から虐待に近い仕打ちを受けていた。そんな状況下でもルシオと過ごす時間は楽しくなんとか生きていたのであった。しかしある日ルシオはプラチナが身売りに出されるという情報を入手し、夜中にプラチナを連れて逃げ出した。一面スズランの草原に逃げてきた二人だったが、プラチナの心は限界だった。ルシオといるのは楽しいが生きるのが辛い、全て忘れてしまいたいと言い、スズランの毒に当てられて死ぬことを選んでしまった。その後ルシオはスラム街で仲間達とスリをやって生きていたが、ある日仲間が貴族の財布に手を出し、見せしめにスラム街は焼き討ちに遭ってしまう。仲間を逃がすルシオだったが、仲間を庇い矢に打たれて死んでしまう。勇敢な彼をエインフェリアとして迎えたレナスにルシオはプラチナの影を見る。レナスも何かを感じ取るが、プラチナの頃の記憶が封印されているためルシオのことを思い出すことはできない。

 

①-3:レザード・メルティー
レナスは再び耳を澄ます。聞こえてきたのは傲慢な天才魔術師・メルティーの声だった。 彼女は天才魔術師だったが、エゴイスト・ナルシストで周りの反感を買っていた。ある日、共に魔法学園を追放された中である魔術師・レザードの研究施設に忍び込み、実験用のホムンクルスを盗み出してしまう。取り戻しに来たレザードに対し、メルティーナは条件を出す。人間界と神界を繋ぐ虹の橋・ビフレストに関する情報である。レザードはエルフの住む森の奥に入口があり、霊体であれば通過できることを伝える。早速その夜幽体離脱してビフレストに向かうメルティーナだったが、実はそれはレザードの罠だった。幽体離脱した彼女の身体はレザードによって氷漬けにされ、メルティーナは死んでしまった。性格に問題はあるものの優れた魔術師である彼女を、レナスはエインフェリアとして迎えた。
メルティーナを殺し、ホムンクルスを奪還したレザードは笑っていた。彼にとってこのホムンクルスは重要な物だった。愛しの女神を手に入れるために。レザードもメルティーナと共に学園で学んだ錬金術ネクロマンサーの二足のわらじを履きこなす天才魔術師だったが、残虐でエゴイストであった。そんな彼が賢者の石を手にし強大な力を手にしてしまっていた。そんな彼がある日レナスの存在を知知り、人と神の間の不安定な存在に惹かれ、レナスに歪んだ恋心を抱く。そして彼はエルフを使ってレナスそっくりのホムンクルスを彼女の器として創り、そこに彼女の魂を入れることで彼女を神々の支配から解放し、自分のものにしようとしていた。神と人間の許されざる恋。通常ならば諦めざる得ない状況だが、不幸なことにレザードには賢者の石によって手にしたそれを可能にする力があった。それが後々世界をゆがめていくこととなるのだがそれはまた別の話(VP2

 

①-4:レナス覚醒

レナスは転生体・プラチナの頃の記憶をオーディンに封印されていた。プラチナの時に受けた母親からの虐待やルシオとの思い出が、エインフェリアを選定するのに邪魔になると考えたからだ。

レナスも当初は何も覚えてはおらず、オーディンの命に従って忠実に任務をこなしていた。しかし、ルシオとの運命の再会やレザードに言われた「あなたは自分がどのような存在なのか丸で理解していない」という言葉により、徐々に封印が解けていく。

ある日レナスは、スズランが咲き誇るに草原に降り立った。そこには不死者たちが集まっていた。レナスが不死者を蹴散らすと、そこには石が積まれた小さなお墓のような物があった。レナスの頭に何かがよぎる。これはルシオが作ったプラチナのお墓だった。

ある日レナスはとてつもなく強烈な波動を感じ取った。その波動は、数多の不死者を束ねる不死者の王・ブラムスのものだった。彼は世界を安定化させる四宝(ドラゴンオーブ・グングニル・レヴァンテイン・シルヴァンボウ)に匹敵する力を持っていると言われ、長く神々と対立してきた。そんな彼と対峙したレナス。その頭上には三女・シルメリアの精神体が捕らわれていた。「決着をつけに来たというわけではなさそうだな」とブラムス。レナスには何を言っているのか分からない。「オーディンはお前を人形にでも変えるつもりなのか」「妹(シルメリア)を見ても何も思わないのか」とブラムスは繰り返すが、レナスには何も分からない。不死者の戯れ言と構わず闘いを挑むが、圧倒的な力の前に敗北し、ブラムスは去って行った。レナスには自分が覚えていないことがあるという蟠りが残った(シルメリアとブラムスについてはVP2で語られる)。

ある日レナスは、ルシオを神兵としてアスガルドに送ることにした。レナスは選定したエインフェリア達を育て、十分な戦力になったと判断すると神界に送ることが使命である。その順番がルシオにも来たのだ。幼馴染み・プラチナのおもかげをレナスに見ているルシオは別れを惜しむ。ルシオの持つ蟠りをなんとか解消したいと思うレナスは、ルシオと話をする。ルシオはレナスをプラチナが育った村へと連れ出す。何か思い出さないかとルシオは言うが、レナスには何も思い出せない。スズランの草原に着いた。ルシオはここで昔プラチナを死なせてしまったこと、レナスにプラチナの影を見ていることを話す。ルシオはレナスに髪飾りを取ってくれないかと頼む。レナスは髪飾りを外し、プラチナと同じ顔でそっとルシオ口づけをする。これで未練が消えるのならと。神界にルシオを送った後レナスはつぶやく。人間と神との間に、愛情が成立するはずがないと。しかしレナスはルシオとの再会を楽しみにしている自分に気付いたのだった。

神界・ヴァルハラ。エインフェリアとして転送されたルシオは神兵として戦いながらもレナスのことが忘れられずにいた。そんな彼に神の一柱であるロキがレナスの記憶が封印されていることを教える。更にロキは、禁じられてはいるが水鏡を使うことでレナスと連絡をとることができ、ルシオが語りかけることでレナスの封印を解くことができるのではないかと伝えた。ルシオは迷いながらも水鏡を使用し、レナスと連絡をとった。突然の連絡に戸惑うレナス。ルシオイヤリングの片側を送り、もう片方は別の場所に隠したと告げる。本当に受け取ってほしいものはイヤリングなんかじゃないけど、想いが伝わればもう片方の場所も分かるはずと。しかしレナスは無断で水鏡を使った事を責めてしまう。こんなくだらないことのために、と。通信は途切れ、ルシオは何でこうなってしまったんだと悔いる。そこにロキが現れる。ロキは四宝の一つ・ドラゴンオーブを盗み出し、その力でオーディンに封印された力を取り戻していた。そしてルシオに告げる。お前はこれからオレに殺される、ドラゴンオーブを盗んだ犯人として、と。そう、ルシオロキがドラゴンオーブを盗むのに利用されてしまったのだ。ルシオはロキに殺害されてしまう。ロキはオーディンルシオがオーブを盗み出し、現場に居合わせた自分が始末した、オーブはルシオが水鏡を使ってミッドガルドに隠されたと報告する。オーディンは怪しみながらもロキを泳がせることにしたのだった。

その頃レナスは、スズランの草原にいた。なぜか分からないがここにもう片方のイヤリングがあると思ったからだ。そしてイヤリングはプラチナのお墓に隠されていた。それを見つけたとき、封印されていたレナスの記憶が戻る。しかし、封印が解けそうになった瞬間、レナスは強制的に転生させられ、代わりに長女・アーリィが召喚されてしまう。強制的に自分に従うように命令するアーリィに、アリューゼ・ジェラート・メルティーナたちエインフェリアは反抗するがその力の前に歯が立たない。殺されそうになったところを残っていたレナスの精神体が守り、アーリィはどうせ行き場はないと去って行った。草原には共生転生によって散らばったレナスの精神体が漂っていた。しかしこのままでは消えてしまう。突如聞こえてきた声に従ってメルティーナは魔法により空間を凍結し、散らばったレナスの精神体を回収した。そしてそのようにアドヴァイスしたのはかつての敵・レザードであった。しかしレナスを取り戻すという点において彼とは利害が一致しており、一時的に協力することに。まずはレザードの作ったレナスそっくりのホムンクルスに回収した精神体を入れて劣化した魂を保存することに。しかしこれは一時的な措置に過ぎず、本当にレナスを取り戻すには、アーリィを倒し、肉体という器を取り戻す必要がある。そこで彼らはアーリィがいるブラムス城へと向かった。ブラムスはアーリィの前世からの宿敵であり、早速闘いに来ていたのだ。事情を知ったブラムスはレザードらと協力することを選び、アーリィは倒される。砕け散った器を再び空間凍結で結晶化して入手した彼らは、その器とホムンクルスに入った精神体とを融合させ、レナスは復活した。しかし復活したレナスは取り乱していた。記憶が戻り、ルシオにひどいことを言ってしまったこと、そしてルシオが殺されてしまった事を知ったためだ。心を取り戻した彼女はもはや神ではなく、一人の女性として嘆き悲しんでいた。

その頃ヴァルハラでは、オーブを盗んだロキがアース神族の敵である、ヴァン神族の元を訪れていた。ロキは四宝の一つ・魔剣レヴァンテインを飲み込んだ魔竜・ブラッドヴェインと魔狼・フェンリルを連れて寝返りを提案しに来たのだ。しかしアース神族の王・スルトは、魔物の力を借りるほど落ちぶれてはいないとロキを拒絶する。するとロキはあなたたちに選択肢はない、とドラゴンオーブの力を解放し、アース神族を、そして神界を滅ぼしてしまう。ラグナロクの予言は現実のものとなってしまったのである。ロキはアース神族ヴァン神族の間に生まれた子で双方から蔑まれて育ってきた。そんな彼は全てを憎んでおり、オーディンラグナロクに備えて人間界から持ち帰っていたドラゴンオーブを利用して逆にラグナロクを起こしてしまったのであった。

知らせを受けて神界に戻ったレナスは無残に焼き払われたヴァルハラを目にする。そしてロキを止めるために戦うことを決意する。オーディンを殺され、生き残ったフレイはロキを倒すより神族全体を立て直す方が先だとレナスを止めるが、人間の心を取り戻したレナスにとっては、ラグナロクを引き起こしたのは地上の安寧をもたらすドラゴンオーブを盗んで持ち帰っていたオーディンの自業自得だった。そしてオーディンの死を悲しむフレイに対して、どうしてその感情を人間にも向けてあげられないのかと怒るのであった。

ロキを探すレナス。途中、魔狼フェンリルや魔竜ブラッドヴェインを倒し、四宝の一つ・レヴァンテインを手にし、ロキに決戦を挑む。しかしレナスはエインフェリア達への被害を恐れ、レヴァンテインの力を解放しきれずにいた。一方ロキはドラゴンオーブの力を解放し、一面を焼け野原にしてしまう。レヴァンテインの力によって一人だけ生き残ったレナスにロキは,自分のためだけに力を使うのが正しいと言うがレナスは聞いていなかった。耳を澄ませていたのだ。世界に存在する全ての人々の声に。感じていたのだ。世界に存在する全ての人々の悲しみを。そしてなんとレナスは、ロキに破壊された世界を再生する力を発揮した。レナスがこの創造の力を手にしたのは、アーリィに奪われた身体を取り戻した際にホムンクルスを使ったことに起因していた。ホムンクルスは人間とエルフを半々使って作られる、つまりハーフエルフと同等なのだ。ハーフエルフは神の器でありながら人間と同じ「成長する力」を持っており、本来完璧で成長することのない神が成長し、更なる力を得ることができるのだ。何を隠そうオーディンがハーフエルフであり、故に神々の王になる力を得たのである。その力がレナスにも宿り、創造する力を手に入れたのである。その力によって創造神・レナスはロキに破壊された世界を再生したのであった。そしてロキを倒した彼女の前に死んだはずのルシオが現れる。創造の力によって生まれ変わったのだ。レナスはルシオと抱き合いこう言う。「一緒に、生きましょう」と。

FIN.

 

上記ストーリーの詳細や美しいイベントシーンについては

ぜひこちらの動画を御覧頂きたい。

www.youtube.com

 

上記メインストーリーの他にも、ロウファ・ベリナス・ラウリィ・ジェイクリーナス・ジェイル / レティシア・カシェル・ロレンタ・エイミ・バドラック・ガノッサ・グレイ・リセリア・洵(ジュン)・那々美(ナナミ)・夢瑠(ユメル)・詩帆(シホ)・蘇芳(スオウ)といった多くのエインフェリア達を仲間にでき、それぞれの一言では語れない人生を垣間見ることができる。そして彼らもレナスと出会い、共に生きていくことを選択するのである。難易度によって仲間にできない者もいるので注意。

 

 

 

②システム編

 

②-1:バトルシステム

 戦闘は4人まで参加することができ、レナスは確定でその他に3人のエインフェリアを選択して戦う。各人にHPが設定されているが、レナスが倒されるとエインフェリアを実体化するためにレナスから供給されているディバイン・マテリアライズエナジーDME)が供給されなくなるため、数ターン後に消滅してゲームオーバーとなってします。戦闘はターン制で、アイテムや通常攻撃、魔法や必殺技を選んで戦う。装備する武器によって1ターンで攻撃できる回数が決まっており、ヒットが繋がるとゲージが貯まり、ゲージが貯まると各人に設定された必殺技を放つことができる。また、必殺技でもゲージが貯まるため、最大で4人連続で必殺技を打つことができ、後の方ほど威力が上がるため、どのような順番で必殺技を放つかが重要になってくる。必殺技を打った後や魔法を打った後はそれぞれに設定されたチャージターン(CT)を経過するまで再び使用することができないが、ダウン中の敵を攻撃することで落とす紫炎石を取ることでCTを短縮することができる。その他にも空中に浮いている敵を攻撃すると経験値をアップさせる魔晶石を落とすため、どのようなタイミングで攻撃しコンボを繋げるかが重要になっている。

 

②-2:スキルシステム

 キャラクターはレベルアップ時にキャパシティポイント(CP)を与えられ、これをスキルに割り振ることで能力がアップする。CPは戦闘スキル、技能スキル、人物特性に割り振ることができ、戦闘スキルはその名の通り戦闘時の攻撃力を上げたり、追加ヒットが付与されたりする。技能スキルも一部はステータスがアップするが、ステータスに影響しないスキルもある。ステータスに影響しない技能スキル人物特性は、エインフェリアとしての適性に影響し、詳しくは後述するが、神界に送ったときの評価や神界での神兵としての活躍に影響してくるため、神界転送する場合には気を付ける必要がある。特に終盤やクリア後の隠しダンジョンでは、Guts(残りHP以上の攻撃を食らった際に一定確率で生き残るスキル)などのスキルは必須に近く、スキルをいかにうまく活用するかがこのゲームの肝の一つとなっている。

 

②-3:エインフェリア転送システム

本作では、前述の通りレナスは神の戦力となる英雄の魂(エインフェリア)を選定するという使命を持っており、これをきっちりこなさないとフレイに粛正(殺害)されるバットエンド(Cエンディング)となってしまう。ストーリー中8つあるchapterそれぞれが終わると神界フェイズが始まり、フレイから神界の戦況や転送したエインフェリアの状況、レナスの評価を受ける。エインフェリアは誰でも良いというわけではなく、ある程度レベルを上げて、人物特性を修正した勇者適正値が高く、フレイが要求した能力(俊敏、泳ぎが得意など)を満たす必要がある。勇者適正値以外は低くても神界転送することはできるが、フレイからの評価が低かったり、神界で活躍できずに戦死してしまう。フレイからの評価が悪いとフレイからもらえるアーティファクト(強力な武器や防具、アイテム)やMP(マテリアライズポイント、武器や防具・回復アイテムなどを生成するのに必要)が少なくなり、ゲーム攻略の上で非常に不利になる。メイン戦力となるキャラは手元に残しつつある程度育成したキャラを手放して神界に送るという駆け引き・バランスがこのゲーム最大の特徴と言えるだろう。ちなみに一部のキャラクターは勇者適正値がどう頑張っても上がらず神界に転送できないようになっている。

 

②-4:アーティファクト献上システム

アーティファクトとは、神によって作られた武器や防具・アイテムなどで、これらの所有権は主神・オーディンにあるため、これらを見つけた場合にはオーディンに献上する必要がある。アーティファクトはダンジョンでボスを倒した後などに宝箱に入った状態で出現する。宝箱を開けるとアイテム命が表示され、オーディンに献上するか否かを選択することとなる。献上すると評価値が上がり、パクると下がる。評価値は前述の通り下がりすぎるとフレイに粛正されてしまうため、アーティファクトは献上した方がよいように思うがこれが実は落とし穴である。アーティファクトの中には非常に強力な武器や防具が混ざっておりそれらを使うことで戦力が跳ね上がったり、一見使えなさそうなアイテムであっても、ゲーム中にある場所で入手できる配列変換の宝珠・上級配列変換の宝珠というアイテムを使って配列変換すると、非常に有用なアイテムに変換できたりするのだ。また、アーティファクトはMP変換というコマンドにより大量のMPに変換することも可能で、前述のようにフレイから貰ったMPだけでは足りないという場合にも使い道がある。つまり、必要な物を見極めてパクり、いらないアーティファクトオーディンに献上するという見極めがこのゲームにおいては重要になってくるのである。

 

 

②-5:マルチエンディングシステム

本作はマルチエンディングを採用している。一つは前述の通り、エインフェリア選定の仕事を怠りフレイに粛正されるCエンディング(ゲームオーバー)。もう一つは、神として指示通りに仕事をこなし神界でのアース神族との戦争とその結膜が描かれるBエンディング。多くの方が一周目はBエンドを迎えることだろう。しかしこのエンドでは多くの伏線が回収されることなく、謎が残ったままとなる。そこでゲームタイトルを見てみるとそこにはShould Deny The Divine Destiny of The Destinies”(神の意思に反逆せよ)という文字が。実はこれこそが真のエンディングであるAエンディングへのヒントなのである。神の意志、つまりはオーディンの意思に背く。オーディンはレナスの記憶を封印し、エインフェリア選定に集中させようとしていた。つまり、レナスの記憶を戻すことがAエンディングに繋がる、というわけである。正直この一文から気付く方は少ないかもしれないが、レナスのステータスには「封印値」というものが設定されていることに気付く方は多いかもしれない。封印値は、レナスの前世の記憶に迫るイベントでは低下し、エインフェリアを神界に送ると上昇する。この値を下げまくったらどうなるかを試したプレイヤーは多くいるかもしれない。実は封印値が一定以下になることがAエンディング分岐に必要な要素であり、プレイヤーがAエンディングに辿り着くための指標となっているのだ。ただし前述の通り、エインフェリアを全く送らないとCエンドを迎えてしまうため、最低限のエインフェリアは送りつつも封印値を下げるという難しい調整が必要になる。また、フレイからの評価も下がるためもらえるMPも少なくなり、アイテムのやりくりも大変になる(これについては前述のMP変換により解決する)。なおイージーモードではルシオなどが仲間にならないためAエンディングを見ることはできないので注意が必要だ。

 

 

②-6:本編ダンジョン

本作には多種多様なダンジョンが登場する。登場するダンジョンの種類は 最初に登場する難易度によって変化し、ハードモードではより謎解き・アクション要素が強く攻略が難しいダンジョンが登場する。ただしハードモードでのみ出現するダンジョンでは後述するクリア後のエクストラダンジョンを楽しむために必要な「紅蓮の宝珠」というアイテムやより強力なアイテムを入手できるため、できればハードモードで挑んで貰いたい。

 

ダンジョンでは、レナスを操作して左右に走る・ジャンプ・スライディング・剣を振る・物を持ち上げて下ろすなどの操作ができ、プレイヤーはそれらを駆使して隠されたスイッチを探したり、迷路を脱出したりする。その中でも特に本作品で特徴的なのが晶石アクションだ。これはレナスが打ち出すことができる晶石という氷塊を使ったアクションで、晶石の上に乗ることでより高いところに届いたり、砕いた晶石を重ねてより高くしたり、粉々にした晶石が空中を舞っている間はそこに乗れる事を利用して一見行けなさそうな所に行ったり、レーザーを晶石で反射させてスイッチを押したりと用途は様々である。この晶石アクションをうまくできるか否かによってダンジョンの難易度は大きく変わってくるが、苦手な方はかなり辛いかもしれない。晶石アクション以外にも特定の位置に物を動かしたり、薬品でツタを枯らして道を切り開いたり、果ては過去と現在を行き来したりなど、様々な謎解きを楽しむことができる。ちなみに本作でダンジョンとして登場する街やボスとして登場する人物などはVPLよりも過去物の語りであるVP2と関連が深いものも多く、また、本編のストーリー中にもVP2と関連するシーンもあるのでVP2をプレイするとより楽しめるかもしれない(中々プレイできる環境にはないので以下の動画を御覧頂くだけでも楽しめる)。

www.youtube.com

 

②-7:エクストラダンジョン

本作ではクリア後に「セラフィックゲート」というエクストラダンジョンを楽しむことができる。セラフィックゲートでは本編以上の強敵や謎解きを楽しめるほか、ハードモードでのみ入手できる「紅蓮の宝珠」を持っていれば、本編では仲間にできない「フレイ」「レザード」「ブラムス」を仲間にできる。ボスとしては中ボスにガブリエ・セレスタ、ラスボスにイセリア・クイーンというトライエース恒例の隠しボスが登場する。前者は割と弱いがイセリア・クイーンはかなりの強敵である。イセリアを倒すと最初はトライエンブレムという強力なアクセサリーを、2~9周目はスタッフからの言葉が書かれた謎の書物を、そして10周クリアすると「咎人の剣”神を斬獲せし者”」という破格の攻撃力を持つ(ただしダメージに大きくぶれがある)武器を入手することができる。また、セラフィックゲート内には「ハムスター」という敵が現れ、ハムスターそのもののかわいらしい外観でありながら、破壊的な攻撃力と攻撃が全く当たらない小ささでプレイヤーを苦戦させ、本作最強の敵とも言われている。余談だが、本作では「ディメンション・スリップ」というアイテムを装備することでザコ的とエンカウントしないという良心的な設定になっており、10周でもイライラすることなくプレイできる。

 

 

 

~終わりに~

1万字を超える長編でお届けした本記事だが、いかがだっただろうか。ゲーム未プレイの方には分かりにくく、プレイ済の方には物足りなかったかもしれないが、個人的な趣味の記事と言うことでご勘弁いただきたい。途中にリンクを張っているプレイ動画を御覧頂けば詳細はお分かりいただけると思う(本ブログの意味が薄くなるが、本作を知っていただけるなら本望)。少しでもこの日本RPG界屈指の名作に興味を持っていただければ幸いだ。

 

 

こちらの記事もおすすめ!

ashito.hatenadiary.jp

辻村深月著「冷たい校舎の時は止まる」感想(ネタバレ注意)

~はじめに~

本日ご紹介するのは、辻村深月著「冷たい校舎の時は止まる」である。本作は辻村氏のデビュー作にして2004年にメフィスト賞を受賞した傑作である。本日はその魅力について語りたい。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                      

 

 

 

 

 

 

 

f:id:Ashito:20210826201037p:plain

~あらすじ~

雪の降りしきるある日、いつも通り登校した男女8人。しかし学校に着くと他には誰もおらず、しかも窓や扉が開かず閉じ込められていることが分かる。そしてこの状況は2ヶ月前の学園祭の最終日に自殺した同級生が関係していると考え始めるが、だれもその同級性の顔や名前が思い出せない。誰が自殺したか。ここに閉じ込めたのは誰か。

 

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①死者が混ざっている?

校舎に閉じ込められた8人。校内を捜索する内に担任の机の上にクラス委員のみんなで取った集合写真を見つける。しかしなぜかその写真を見たときに強烈な違和感を覚える。後で振り返ってみると、集合写真で担任の榊を囲む生徒が7人しかいなかったのである。しかしその写真はクラス委員全員で撮ったはずなのだ。そう、ここにいる8人全員で。一人足りない。そして、ここにいる全員が2ヶ月前の学園祭で自殺した同級生の顔や名前を思い出せないという事実から彼らは、この中の誰かが自殺した当人であり、その人が自分たちをこの世界に閉じ込め、生きていた頃を懐かしむか何らかの恨みを晴らそうとしているのではないかと考える。もちろん自殺した当人の記憶も改変されており、自分が死者であることは認識していない。自分たちの中に死者が混ざっているかもしれないという状況は、殺人犯が混ざっているかもしれないといった設定などよりもよっぽど不気味で、クローズドサークルとなっていることも相まって読者に底知れぬ恐怖を与えていく。ちなみにこの、クラスの中に死者が混ざっているという状況、私は綾辻行人氏の「Another」にすごく似ていると思う。しかも辻村氏は綾辻行人氏の大ファンであり、辻村の辻の字も綾辻氏から取ったものらしい。2人の作家の趣味や考え方が似ているため近い世界観を持つ作品ができあがったのかもしれない。

 

 

②ひとりまたひとりと消えていく

閉じ込められてしばらく、8人には特に何も起こらず、受験前に時間が与えられてラッキーだと感じる者すらいた。しかし、その中の一人が血と石膏の人形を残して消えたのをきっかけに事態は急変する。5時53分で止まっていた時計が動き出し、再び5時53分を指す度に誰かがいなくなるのである。それはこの世界を創った人が8人に復讐しようとしているように思われた。思い出して、自分の罪をと。しかし彼らには心当たりもなく、また自殺したのが誰かも思い出せない。そんな中無慈悲に一人、また一人と消えていくのである。連続殺人小説で被害者が犯人から決して逃れられないように、彼らもこの世界の意思から逃れることは決してできず、消えていってしまう。何も分からないまま消えていく者、立ち向かって消えていく者、自ら選んで消えていく者などその形は様々である。最後に残る者がおそらく学園祭の日に自殺したこの世界にみんなを閉じ込めた者だろうと彼らは考える。最後に残るのは誰か。自殺したのは誰か。予想外の真相が読者を待ち受けている。

 

③衝撃の解決編

本作品では、謎が明らかになる「解決編」の前に、「読者への挑戦状」ならぬ「解答用紙」が突きつけられる。推理小説ファンであればきっとここでいったん止まって、これまでの話を整理したり読み返したりして真相を見抜こうとするだろう。しかし果たしてどれだけの方が本作の真相を見抜いただろうか。私は40%程といったところであった。自殺した人とこの世界に8人を閉じ込めた人が違う人物ではないかというのは序盤にそのように誘導する文章があったので薄々感づいてはいたし、自殺したのは8人の中の誰かではないだろうという事も予想はしていた。そしてこの世界を創り出したのは、8人の中で最も自分を追い込みやすい性格で、ちょっと前まで親友だった者からのいじめに近い仕打ちで重度のうつ病・拒食症に苦しんでいた深月であることもおおよそ想像通りであった。しかし、8人の同級生の中の一人・菅原が担任の榊と同一人物だと誰が予想できたであろうか。菅原の中学時代の回想シーンで出てきた幼い少年・ヒロが8人の内の一人である博嗣であり、その子と一緒に居た幼い女の子・みーちゃんが深月であるなどさっぱり分からなかった。榊のフルネームが菅原榊であると明らかになるシーンは、正に綾辻氏の某作品における「ヴァン・ダインです」に近い衝撃であった。さすがは綾辻氏をリスペクトしている辻村氏である。

 

④深く考えさせられる作品

本作はミステリ小説として秀逸であることはもちろん、人生や人間関係などについても深く考えさせられる作品となっている。登場する8人の高校生は皆県内有数の進学校に通う頭の良い生徒達なのだが、実は皆それぞれに悩みを抱えていた。物語の核となる深月と元親友との確執や家庭の事情、過去の後悔や将来についてなど様々である。それらは学生故の悩みとも言えるし、我々大人にも当てはまるような部分もあり、自分の過去や未来について考えさせられる内容となっている。自分だけでなく、周りの特に悩みや苦悩を抱えていなさそうな人であっても、内面を他人が計り知ることはできず、実はどうしようもないほど深く悩んでいることもあるのかと思うと、私は無力感を感じてしまう。本作を読んでどのような思いを抱かれるかは読者によって様々だろうが、何か心に残る者があるのではないだろうか。

 

 

 

 

~最後に~

本作は恐怖と謎と悲しみに満ちた作品である。真夏にご紹介してしまったが、冬に読んだ方がより楽しめるかもしれない。ご興味のある方はぜひこの冬読む本に加えていただければ幸いである。

 

 

こちらの記事もおすすめ!

 

島田荘司著「魔神の遊戯」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、島田荘司著「魔神の遊戯」である。この作品は御手洗潔シリーズの一作である。数多くある御手洗潔シリーズ作品だが、本作はちょっと毛色が異なり、シリーズファンは驚くことだろう。また、シリーズファンでなくとも十分楽しめる作品となっている。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                                

 

 

 

 

 

 

 

f:id:Ashito:20210820183011p:plain

~あらすじ~

ネス湖付近の小さな村で連続バラバラ殺人事件が発生した。その犯行はまさに魔神がやったとしか思えない方法・残忍さであり、普段静かな村は恐怖に包まれる。村に来ていたミタライ教授と現地警察が協力し捜査を開始するが中々犯人は見えてこない。果たして犯人は魔神なのか?それとも・・・。

 

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①人知を越えた殺人事件

本作に限らず御手洗潔シリーズに広く言える傾向だが、事件の内容がとても人間がやったとは思えないような内容となっている。本作で言えば、絶えず空から鳴り響くおぞましい音や死体がとてつもない力で手足や首を引きちぎられていること、そしてバラバラにされた死体が各所に意味ありげに遺棄されていたことなどから、次第に村人達は獣や魔神のような人知を越えた存在ではないかと思い始める。それに対して御手洗がそれらを可能にするトリックを暴き、犯人を見つけ出すという流れである。こうした人知を越えた現象に合理的な説明をつけるという流れは、同じく御手洗潔シリーズの「アトポス」や「ネジ式ザゼツキー」など多くの作品で見られる。真相が分かってしまえばなんだそんなことかとあっけないものだが、作中の人々の気持ちになると魔神の存在をも信じてしまってもおかしくないと思う。人は恐怖の中では正常な判断ができないと言うことや思い込みや先入観が人を盲目にしてしまうことを実感させてくれる作品である。

 

 

②シリーズファンを欺く真相+α

本作最大のネタバレをすると、実は事件発生当初から現地警察と共に捜査を行っていた「ミタライ教授」は偽物であり、この偽物の「ミタライ教授」こそが犯人なのであった。正直私は途中で「ミタライ教授」が偽物で犯人であろうことには気付いていた。というのも、名探偵が連続殺人を止められないことはお約束ではあるが、あまりにもミタライが後手後手に回っていたためである。名探偵・御手洗は連続殺人を防げないことはあるが何も掴めないまま手をこまねいているほど無能ではないことはシリーズファンであればお分かりになると思うので、比較的多くの方がこの点には気付かれるのではないだろうか。しかしながら、この「偽ミタライ教授が誰なのか」という点はまんまと騙されてしまった。作中に、この殺人が起きている村出身で、被害者達に強い恨みがあり、被害者達を未来で殺したと言う精神疾患患者が登場するのだが、実は彼は犯人ではなく、彼のことを知った御手洗の教授仲間の一人だった。実は彼が犯人であることの手がかりは1ページ目から伏線が張られており、読み終わった後にそれを知るとやられたという気持ちになった。私のように「ミタライ教授」が偽物であることは見破っても、犯人や真相を全て見抜かれた方は少ないのではなかろうか。二重三重に謎を巡らしている点は見事としか言いようが無い。

 

 

 

 

~最後に~

本作は、御手洗潔シリーズの中でも最後の最後まで(本物の)御手洗が登場しないという珍しい作品である。最後まで登場しないだけあってその登場シーンは印象的であり、電光石火で謎を解き明かしていく様はまさに爽快である。ぜひ一度読んでみていただきたい。

 

 

こちらの記事もおすすめ!

 

米澤穂信著「インシテミル」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、米澤穂信著「インシテミル」である。この作品は2010年に藤原竜也綾瀬はるか石原さとみ他豪華キャストにて映画化されたことでも有名であるが、原作小説を読んでいない方もいらっしゃるのではなかろうか。個人的には映画よりも小説の方がおすすめなので、未読の方は例え映画で犯人を知ってしまっていても読んでみていただきたい。本記事がその一助となれば幸いである。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                        

 

 

 

 

 

 

 

f:id:Ashito:20210815102838p:plain

~あらすじ~

ある実験に協力することで高額の報酬を得られるという情報に集まった12人の男女。しかしその実験の内容とは、閉ざされた館の中で殺し合う殺人ゲームだった。報酬は時給制で、人を殺せばより多くの報酬をもらえるが犯人だと指摘されると報酬は減額され、また何もしなくとも報酬はもらえる。この条件から殺人を犯す人はいないだろうと思われたが、一人また一人と殺されていく。一体誰がどんな理由で殺人を行っているのか、最後まで生き残るのは誰か、そしてこのふざけたゲーム主催者の意図とは?

 

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

クローズドサークル

本作は、12人の男女が集められ、脱出不可能な館の中で事件が発生するといういわゆるクローズドサークルに分類される推理小説である。しかしながら雪の山荘のようなクローズドサークルとは違い、12人は偶然幽閉されたわけではなく、殺人ゲームを行うという主催者の明確な意思の元に集められている。故に殺人が起こるのはある意味必須であり、よりサスペンス性の高い作品と言える。参加者が一人また一人と殺されていく恐怖はクローズドサークル特有の物であり、途中で登場する12体のインディアン人形がそれをいっそうかき立てる。映画と小説を比較すると、起こっている出来事はほぼ同じだがスリルは小説の方が断然上であり、この辺りの差は米澤氏の文章力によるものであろう。

 

 

②ラストの怒濤の展開

犯人以外が全滅することも珍しくないクローズドサークルであるが、本作では何人かが生き残り脱出を試みる。犯人はその中にいないと思っている生き残り達だが、当然真犯人がその中に混じっており、最後の最後までハラハラドキドキで目が離せない展開となっている。また、無事に脱出した後も生き残り達には様々な展開が待っており最後まで楽しめる作品となっている。犯人の詳細な動機や背景が最後で全てが明確に明らかにされると思いきや、そうではない本作品は賛否が分かれることが多いが、それは本格推理小説読みの癖であり、小説というものは全てが明確に記述されるわけではなく、読者に委ねる部分があっていいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

~最後に~

本作では、米澤氏特有の一筋縄ではいかない推理小説といった感じが味わえる作品である。クローズドサークルが好きな本格推理小説ファンはもちろん、通常の推理小説はちょっと苦手といった方でも楽しめるというちょっと不思議な読み心地である。この表現が本作品の魅力を十分に伝え切れているかは分からないが、不思議な魅力に満ちた米澤ワールドをぜひ一度体験していただきたい。

 

 

 

こちらの記事もおすすめ!

 

有栖川有栖著「鍵の掛かった男」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、有栖川有栖著「鍵の掛かった男」である。有栖川氏といえば、以前本ブログでもご紹介した、名探偵・江神二郎が活躍する学生アリスシリーズや、映像化もされている名探偵・火村英生が活躍する作家アリスシリーズが有名であるが、本作は後者に当たる。比較的長めの作品であるが、時間をかけてでも読む価値のある作品である。本日はその魅力をご紹介したいと思う。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                                    

 

 

 

 

 

 

f:id:Ashito:20210811184730p:plain

~あらすじ~

大阪・中之島のホテルに2年近くにわたって長期滞在していた男が首を吊って自殺した。しかし、自殺する動機もなく不審に思った友人から、アリス・火村に調査の依頼があった。多忙によりすぐには動けない火村に代わりアリスが単身乗り込んでで調査を開始する。調査は難航し、男の素性や行動には謎が多く存在していた。多くの謎によって鍵が掛けられたこの男の正体・目的は?そして自殺の真相は?

 

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①有栖川探偵奔走!

推理小説ではよくあるパターンだが、初めのうちは探偵である火村は登場せず、助手のようなポジションであるアリスが情報収集を行うこととなる。今回アリスは情報を集めるためにかなり積極的に行動しており、その働きぶりは火村も認めている。火村からの指示に従って調査を進めていくのだが、自殺した男の来歴は謎に満ちており、日々の行動からも中々死の真相は見えてこない。そんな中、有栖の地道な捜査が徐々に実を結び、男に何重にも掛けられた鍵を解いていくのである。火村は序盤は電話で調査結果を聞き、安楽椅子探偵として活躍し、アリスに指示を送るのだが、アリスからの情報だけでかなり真相に迫っており、現場に登場後は犯人の動きもあって一気に事件を解決へと導く。このように、物語の終盤まで捜査の主体はアリスであり、探偵/刑事・アリスの活躍を楽しむことができる作品である。

 

 

聖地巡礼

物語の舞台となる大阪・中之島のホテル「銀星ホテル」。実はこのホテル、中之島に実在していたとか。現在、物語の設定の場所には三井ガーデンホテルがあるが、ここに以前銀星ホテルが立っていたのだそう。その他にも作品中には中之島付近の情景が細かく描写されており、実際に作品を読んだ後に中之島を歩くと実に楽しい。ちなみに私は、読んでから行ったのでは無く中之島付近に行ってベンチに座ってこの作品を読んでいたのだが、まるで自分が作品の中に入り込んだような感覚を味わうことができた。こういった感覚になれたのも、有栖川氏の情景描写のうまさ故だろう。本作品に限らず、モデルとなった場所で小説を読むという体験をぜひ他お試し頂きたい。

 

 

 

③真相

本作品は、大がかりなトリックが登場するわけでも猟奇的な殺人鬼が登場するわけでもない。鍵の掛かった男の死の真相は、現場である銀星ホテルのオーナーの実の父親が男であり、男が息子に遺産を残そうとしたのを、男に恨みを持つホテルの常連客が邪魔しようとしていたという、分かってしまえばあっけない物である。しかし、この作品ではこの真相に至るまでの物語が重要であり、ある意味死んだ男の人生を巡る物語と言っても過言ではなく、男の死やその犯人を見つけることはあくまでもその最後のピースでしかないのだ。人生とはこんなにも波瀾万丈であり得るのかと言うことを教えてくれる作品である。

 

 

 

 

~最後に~

本作は、本格推理小説としても優れた作品だが、地道な捜査が実を結ぶ刑事ミステリが好きな方にもお楽しみいただけるだろう。また、大阪・中之島と場所が明確にされており、現実に近い感覚で物語に入り込んでいただけると思う。長編ではあるが、物語に入り込むと一気に読んでしまうような面白さがある作品なので、ぜひ一度読んでみていただきたい。

 

 

こちらの記事もおすすめ!

西澤保彦著「神のロジック 人間(ひと)のマジック」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、西澤保彦著「神のロジック 人間(ひと)のマジック」である。西澤氏といえば、以前本ブログでもご紹介したような、現実ではあり得ない現象を設定として持ち込んだSFミステリに定評があるが、本作は現実にはなさそうな独特な設定ではあるがSFとまではいかない内容になっている。SFミステリ以外でも西澤氏の作品は完成度が高く素晴らしいという事をこの作品を読んでいただければお分かりいただけることだろう。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                    

 

 

 

 

 

 

 

f:id:Ashito:20210810123642p:plain

~あらすじ~

主人公・僕は、親から引き離され他の者達と共に学校(ファシリティ)で生活をしていた。そこでは普通学校ではやらないような犯人当てクイズなど奇妙な授業が行われていた。なぜ主人公達はここでそんなことをさせられているのか、連れてこられた主人公達には分からない。主人公達は様々な憶測を言い合うが結局真相は分からないまま日々を過ごしていた。そんなある日、新たにやって来た新入生の登場により僕らの平穏な日常は歪んでいく。

 

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①ユニークな設定

物語の舞台は、親元から引き離された「僕ら」が集められ、日々犯人当てクイズなどをやらされている<学校(ファシリティ)>という特殊な場所。この設定だけでも、なぜ彼らはここに集められてこんなことをさせられているのかとわくわくしてしまう方もいることだろう。主人公達も様々な現状・状況証拠から探偵の育成所であるとかスパイの養成所であるなど様々な推理(憶測)を披露しており、さながらワトソンの見当違いな推理によるミスリードのごとく、読者の想像をかき立てる。もちろんこのユニークな設定には細部まで考えられた合理的な理由があり、それこそがこの作品の核となっているのである。この核については完全なるネタバレであるため間をおいて事項で語る。

 

 

②衝撃の真相

さて、この作品の真相を申し上げると、<学校(ファシリティ)>に集められた「僕ら」は本人立ちは自分が10代の少年少女だと信じているが、実はヨボヨボのおじいちゃんおばあちゃんなのである。それが、本人達の思い込みと施設側の意図、そして西澤氏の巧みな叙述トリックによって隠されているのである。主人公達はある種の健忘症で12,3歳以降の記憶がないおじいさんおばあさんである。この施設の主はそんな人たちを非合法に集めとある実験を行っていたのだ。その実験とは、例えば周りみんなが「ポストは白い」と言えば「ポストは白である」と言うことが客観的事実となり、五感にも影響を与えるかという物である。つまり周りが、「主人公は少年で周りの在校生も少年少女だ」という客観的事実を突きつけ、主人公がそれを受け入れることで主人公には自分や周りが少年少女のように認識させられていたのだ。この客観的事実を創り出すために、施設内には60年前のテレビや車などが置かれて僕らが違和感を覚えないようするなど細工が成されていた。もちろん施設に来た当初は主人公もそれが受け入れられず違和感を感じていたが、客観的事実を受け入れるにつれて違和感は消えていった。それは「在校生達が少年少女である」という間違った客観的事実を受け入れ、「僕ら」が全員少年少女だという「ファンタジーが成立する共同錯誤現象の中に入っていったからである。しかしそこに、その客観的事実を受け入れられない新入生がやって来たために、「ファンタジー」を愛し守ろうとする一人に殺されてしまったのである。

僕らが少年少女である、という事実を知った後で読み返すと、食事が塩分控えめで軟らかい流動食のような物ばかりであることや、買ったはずのお菓子がいつの間にか回収されていたこと、窓を飛び越えて外に出ようとしたときに躊躇してしまったことなど様々な伏線が張られていたことに気付く。物語の最後にそれらが明らかにされるので、その後もう一度読み返してみるのも面白いかもしれない。

 

  

 

~最後に~

本作は、比較的短く一気読みしやすい作品だろう。一気に読んだ方がミスリードに引っかかりやすく、また前のシーンでの出来事も覚えているためよりラストの驚きを強く味わえることだろう。ぜひ時間を取って一気に読んでみていただきたい。

 

 

こちらの記事もおすすめ!

島田荘司著「星籠の海」感想(ネタバレ注意)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、島田荘司著「星籠の海」である。名探偵・御手洗潔が登場するシリーズの一作で、美しい瀬戸内海を舞台としている。玉木宏主演で2016年に映画化もされた名作である。本日はその魅力について語っていく。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                                

 

 

 

 

 

 

 

f:id:Ashito:20210806182646p:plain
~あらすじ~

瀬戸内海の海岸に死体が流れ着くという事件が相次いだ。相談を受けた名探偵・御手洗潔は助手の石岡くんと共に捜査を開始する。死体は一体どこから流れてきているのか。目的・原因は何か。瀬戸内海という特殊な環境・昔から軍港として栄える港街・そして御手洗の華麗なる推理が混ざり合い、事件は複雑だが幻想的に展開していく。

 

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①歴史ミステリー

物語の始まりは、瀬戸内海の島々に死体が流れるつくという事件なのだが、進んで行くにつれて物語は思いもよらない方向に展開していく。死体はすべて瀬戸内海の特殊な海流によって広島県福山市鞆の浦から流されていることが明らかとなる。そこでは一見何の繋がりもない様々な事件が起こっており、最終的にはそれらが御手洗の華麗な推理により一本に繋がっていく。軍港として栄えた鞆の浦について調べていく中で、織田信長鉄甲船を沈めた「星籠(せいろ)」というものが登場する。登場した時点ではこれが何でどうストーリーに絡んでくるのか全く分からないのだが、タイトルにも入っている以上関係しないわけがない。この「星籠」が実際に何かと言うことは明らかになっていない歴史の謎であるが、物語の中では御手洗が「あり得た可能性」を見出し、それが事件に大きく関わっていくのである。この展開は同じく島田先生の作品である「ロシア幽霊軍艦事件」に近い。「星籠」の正体は終盤まで明らかにならず、それ自体は推理に必須ではないのだが、終盤にその正体が明らかになることで物語が一気に幻想的なものとなるのである。歴史上の謎とミステリの融合をお楽しみあれ。

 

 

鞆の浦の美しい街

物語の舞台となる鞆の浦は「崖の上のポニョ」の舞台にもなったことで有名な港街である。街には昔からの建物が数多く残っており美しい町並みを楽しむことができる。小説中の描写や映画のシーンで描かれる美しい鞆の浦の街は、そこで起こっている重く暗い事件とは対照的であり、事件の重苦しい雰囲気をより引き出している。実際小説を読んで気になったため以前鞆の浦に旅行に行ったことがあるが、予想以上に綺麗な町並みで、天気さえよければもう何日か逗留したいと思ったほど、鞆の浦は非常に素晴らしい街であった。小説や映画を御覧になって興味が湧いた方はぜひ一度鞆の浦を訪ねてみていただきたい。

 

  

 

~最後に~

本作は、御手洗潔シリーズの中でも屈指の複雑さを持つ事件である。細かい事件が数多く複雑にからみあっており、真相が明らかになった後で読み返さないとよく分からないほどで、読者によって評価は分かれるかもしれない。本格ミステリとしてというよりは歴史小説として読むと、ロマンティックで楽しめると思う。複雑なためため映画にするとどうしてもスッキリしない印象になってしまうように思うので、お時間のある方はぜひ小説の方でお楽しみ頂きたい。

 

 

こちらの記事もおすすめ!

綾辻行人著「どんどん橋、落ちた」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、綾辻行人著「どんどん橋、落ちた」である。綾辻先生と言えば「館シリーズ」や「囁きシリーズ」が有名だが、本作はこれらのシリーズのように重厚なストーリーではなく、気軽に楽しみながら読める短編集となっている。推理小説は読みにくくて苦手という方にもナゾナゾ本感覚で読んでいただけるので、この記事を読んで興味が湧いた方はぜひ読んでいただきたい。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                          

 

 

 

 

 

 

f:id:Ashito:20210804182936p:plain
~あらすじ~

「どんどん橋、落ちた」

年末の忙しい時期に作家・綾辻を訪ねてきた青年U。見覚えはあるのだが誰なのかは思い出せないが、懐かしい感じを覚えた綾辻は彼を招きいれた。そして彼が持って来たミステリ小説を読んであげることに。軽い気持ちで読み始めたが、意外に難しいミステリに苦戦を強いられる。答えは予想外の所にあって・・・。他4作

 

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①なぞなぞ?ミステリ?

始めに述べたとおり、この短編集にまとめられた作品はギリギリミステリと言えるが、胸を張ってミステリだとは言えない少々ひねくれたものばかりで、感覚としてはなぞなぞに近いかもしれない。ミステリファンにとっては少々アンフェアだと思うところもあるかもしれないが、読み物としては非常に楽しい。例えば第4作品目の「伊園家の崩壊」は某国民的アニメのパロディとなっており、あの団らん家族にあるまじきドロドロの展開へともつれ込む。知らなければただの軽めのミステリだが、パロディだと言うことを知っていれば一気に面白い読み物へと変化する。その他の作品も、通常のミステリとは一味違った展開・真相が待っており、綾辻先生の遊び心が感じられる作品となっている。

 

②裏事情を知っていれば面白さ倍増

前述の「伊園家の崩壊」もそうだが、この短編集の作品にはただ読んだだけでは知ることができない、裏事情やパロディが多くちりばめられている。私も初めて読んだ当初は知らなかったが、最初に登場するU君の正体や登場人物の名前の由来など、後で調べて分かると思わずクスッと笑ってしまう設定が随所にある。一通り読んだ後は、それらを調べて知った上でもう一度読んでみると面白いかもしれない。

 

 

③先入観の認識、綾辻先生の罠

ミステリでは定番だが、本作品では人の先入観を逆手に取り読者を騙しに来る。この手法は綾辻先生の得意とするところだが、この作品では特にその傾向が強い。自分が普段いかに先入観で物事を判断しているのか思い知らされることだろう。また、読み進めていくと今度こそ騙されないぞと構えて読むのだが、そこは流石綾辻先生。見事に読者の慣れまで想定してを張り、読者の予想を裏切ってくれる。あなたもぜひ騙される気持ちよさを体験してみて欲しい。

 

 

 

 

 

 

~最後に~

本作は綾辻先生の遊び心が形となった作品と言える。読まれる方もぜひ、遊び感覚で読んでみていただきたい。はじめに書いた通り、普段ミステリを読まれない方にもおすすめで、短編集なのでスキマ時間で読むこともできるため、お気軽にお楽しみいただきたい。

 

 

こちらの記事もおすすめ!

 

ゲーム「チューチューロケット!」を語る

~はじめに~

今回ご紹介するのは、「チューチューロケット」である。本作品はセガ新入社員の研修の課題の中で誕生した作品だそうだ。1999年に発売されたゲームだが、現在までにアプリ版も含めて様々なメディアに移植が成されており、長年愛されているゲームである。

 

                                                        

 

 

 

 

 

 

 

f:id:Ashito:20210731173819p:plain

~ゲームの概要~

本ゲームは、チューチュー(ネズミ)とカプカプ(ネコ)が存在し、プレイヤーは特定の法則に沿って動くカプカプからチューチューを誘導してロケットまで逃がし、脱出させることを目的とするパズルゲームである。プレイヤーは始めに床に矢印を設置してチューチューやカプカプを誘導し、チューチューがカプカプに接触しないようにロケットまで誘導する。

 

 

 

 

 

 

 

チューチューロケットの魅力~

 

①パズルモード

本ゲーム最大の魅力はなんと言ってもパズルモードにある。本ゲームは通常、以下に多くのチューチューをロケットに入れられるかを競うゲームであり、カプカプにチューチューが食べられても減点されるだけであるが、パズルモードでは一匹もチューチューをカプカプに食べられることなくロケットに誘導しなければならないのだ。プレイヤーは最初にマップに配置されたチューチューやカプカプを見て動きを予想し、与えられた矢印を適切に使用してロケットへと導く。チューチューやカプカプの動きは一定の規則があり単純だが、ステージが複雑になると動きを最後まで読み切るのは非常に困難であり、実際に走らせて見ながら修正をしていくということになる。マップによっては矢印を一つも配置しない場合にのみ成功するというものなどひねくれたものもあり、多くの名作パズルゲームで見られるようにプレイし始めると止まらなくなる。

 

②可愛いデザイン

パズルゲームでは、パズルの多様さや難易度も重要だが、プレイヤーを飽きさせないデザインも重要だと私は思う。無機質なデザインだと作業感が出てしまうし、派手すぎるとパズルに集中できなくなってします。その点本作品は、シンプルながらかわいらしいデザインをしており、ネズミが猫から逃げてロケットに入るという動きも面白いため楽しみながらパズルに集中することができる。

 

 

 

 

 

~終わりに~

今回は箸休め的に短い記事とさせて頂いたが、本作品が長年多くの方に愛されている名作ゲームであることは間違いない。また、近年ではスマホアプリでパズルゲームがあふれているが、本作品はそれらの先駆けとなった作品の一つだと思う。ご興味のある方はぜひ一度プレイしてみていただきたい。

 

こちらの記事もおすすめ!

 

山口雅也著「生ける屍の死」感想(ネタバレ注意)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、山口雅也著「生ける屍の死」である。本作品は山口氏のデビュー作にして代表作の一つである。30年以上前の作品でありながら、未だに多くの推理小説ランキングで上位に上げられる人気作である。本日はその人気の秘密をご紹介したいと思う。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                  

 

 

 

 

 

 

f:id:Ashito:20210719184034p:plain

~あらすじ~

1900年代末、アメリカの片田舎で死者が蘇ったという目撃情報が相次ぐ。そんな時、主人公は遺産相続争いが起こっている大規模霊園に呼ばれた主人公は何者かに毒殺されてしまった。しかし、蘇り現象により生ける屍となった主人公は、腐敗する身体をエンバーミングにより隠し、真相の究明へと乗り出す。死者が蘇る異常な世界で、殺人事件と推理はどのように展開するのか?そのような状況で殺人を犯す理由とは?

 

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①非現実的設定の極致

推理小説に、非現実的な設定を持ち込むことはよく見られる。瞬間移動ができたり、タイムリープできたりと様々だが、本作品ではタイトルの通り死者が蘇るのである。殺人犯を推理する推理小説において、死者が蘇るというのは反則的設定で、非現実的設定の極致と言えるだろう。なぜなら死者が蘇るのならば、死者が犯人を指摘することができるからである。しかしそこはうまくできており、本作品では毒殺など被害者が犯人が分からないような形で殺されているため、推理小説として成立するのである。もちろんこの死者が蘇るという設定は、ただのきてれつ設定と言うだけで無く、本作のストーリーの核となる重要な要素となっている。

 

②誰が死者で誰が生者か

この小説のにおけるストーリーの肝は、ある時点において誰が死者で誰が生者か、つまり誰がいつどのような順番で死んだのかと言うことである。主人公が死後エンバーミングを施して犯人の探索を続けているように、他の登場人物も実は死んでいるにもかかわらず生きている様に振る舞っていたりする。もちろんそうするのにはそれぞれ明確な理由があり、その理由を推理するのもこの小説の重要な部分である。全てが明らかになった後にもう一度読み直すと「なるほどなー」と理解が深まるため、長編小説ではあるが頑張って2度読みしてみていただきたい。

 

 

③死とは何なのか

 本作品中では、前述の通り死者が蘇るという設定になっているが、それは決して死が軽いものだと言うことでは無い。物語を読み進めていくと分かるが、本作品では犯行の背景・動機を紐解いていくと死の定義、死とは何なのかを改めて考えさせられる内容となっている。動機や犯人の推理を楽しめるのと同時に死について考える機会を与えてくれる貴重な作品だ。

 

 

 

 

 

 

~最後に~

本作は「生ける屍の死」という非常に内容が気になるタイトルとなっており、思わず手に取ってしまう方もいるだろう。ただ、中々に長編なので躊躇される方もいらっしゃるかもしれない。だが、時間を費やして読む価値は十分にある作品だと思うので、時間をつくってぜひ読んでみていただきたい。

 

 

こちらの記事もおすすめ!

ゲーム「STEINS;GATE ELITE」を語る

~はじめに~

今回ご紹介するのは、「STEINS;GATE ELITE」である。本作品は2009年に発売されたテキストアドベンチャーゲームSTEINS;GATE」を、2011年に2クールに渡って放送されたアニメの素材を再活用してリメイクされたものである。もしかするとゲームはしたことはないがアニメは見たことがあるという方も多いかもしれない。そういった方にぜひ本記事を読んでいただき、ゲームの方もプレイしてみていただきたい。

 

                                                    

 

 

 

 

 

 

 

f:id:Ashito:20210718192013p:plain

~あらすじ~

現代の日本、秋葉原。主人公の中二病の大学生・岡部倫太郎(自称・鳳凰院凶真)は、「未来ガジェット研究所」という小さなサークルで、ラボメンの仲間達と奇妙な発明品を作っていた。彼が偶然にもタイムマシンを発明し、世界の行方を左右する、まさに中二病的展開に巻き込まれていくとは、この時はまだ夢にも思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

STEINS;GATE ELITEの魅力~

 

①数多の伏線、緻密なプロット、終盤の収束

まずこのゲーム最大の魅力であるストーリーについて述べる。ストーリーのすばらしさに関しては、アニメを見た方で共感いただける方も多いだろう。物語前半は、正直良く意味が分からないことや、どうでも良いと思われるやり取りが続くが、実はそれらのほとんど全てが伏線になっており、終盤にかけてそれらが一気に回収され、収束していく様は見事としか言いようが無い。前半の他愛もないやり取りが全て伏線だったと気付いたとき、戻ってもう一度プレイしてみたくなってしまう。前半がだるくてゲームやアニメを止めてしまった方は、ぜひ頑張って最後まで堪能していただきたい。

 

 

②マルチエンディング

本作品は、テキストアドベンチャーゲームであり、作中に何度か登場する選択肢によって物語の展開・終末が異なってくる。全て正解の選択肢を選んだ末に訪れるトゥルーエンド以外に、5つのエンディングが用意されており、それぞれアニメでは描かれていない展開を見ることができるため、アニメファンは必見である。正直初見で攻略情報無しにトゥルーエンドに辿り着くのは至難の業なので、攻略サイトを見ながらぜひ全てのエンドを堪能してみていただきたい。

 

 

 ③アニメを見た方はより楽しめる!

本作品は、アニメで使用した素材を再利用してゲームをつくる「フルアニADV」と呼ばれる作り方をしており、アニメと同じ綺麗な絵をゲーム中で楽しむことができる。また、前述のトゥルーエンド以外のエンディング用に新規にアニメが追加されており、アニメファンはより楽しめる設定になっている。また、エンディングに関連する選択肢以外にも、アニメでは見られないメールの内容を見られたり、アニメでは描かれていないシーンが描かれていたりなど、アニメファン必見のシーンが目白押しだ。アニメは見たけどテキストアドベンチャーはやったことがない・苦手だという方も、アニメ感覚で気軽に楽しんでいただける。

 

 

④難解な専門用語

本作品ではタイムマシンが登場するだけあって、様々な物理学用語が登場する。それらは別に理解できなくとも問題は無いのだが、それらをネットで調べて理解することで、より物語を楽しむことができると思う。中二病の主人公ではないが、こういう専門用語が出てきたら調べずにはいられない方も多くいらっしゃるはず。そういった方がまとめたサイトを見ていただくとより分かりやすいかもしれない。

 

 

 

~終わりに~

STEINS;GATEは、ゲームが原作だがアニメの法外明度が高いゲームとなっており、ゲーム見プレイの方も多くいると思う。アクションやRPGとは異なるテキストアドベンチャーというジャンルと言うこともあって、中々手を出せずにいる方も多くいると思うが、本記事を読んで少しでも興味が湧いたらぜひプレイしてみていただきたい。

steinsgate.jp

 

こちらの記事もおすすめ!

 

 

貴志祐介 著「クリムゾンの迷宮」感想(ネタバレ注意)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、貴志祐介著「クリムゾンの迷宮」である。「悪の教典」で有名な貴志氏。本作品も、ホラーサスペンスサバイバルの三つの要素から構成されている作品であり、貴志氏の本領が十分に発揮された作品である。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                          

 

 

 

 

 

f:id:Ashito:20210717201329p:plain

~あらすじ~

赤い火星を彷彿とされる大地で目覚めた主人公。なぜここにいるのかは思い出せない。手元にあった携帯ゲーム機には、主人公がサバイバルゲームに強制参加させられたこと、そして「サバイバル用品」「武器」「食料」「情報」の4つのいずれかを手に入れるためのルートが示されていた。4つの内どれを選択するのが正解なのか?このゲームを仕組んだ者の真意とは?不安と謎に包まれた命をかけたサバイバルゲームが始まる。

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①ハラハラドキドキデスゲーム

 

 このゲームの参加者達は別に対立しているわけではなく、無理矢理参加させられただけなので本来殺し合いのデスゲームにはなり得ません。しかしゲーム中には主催者による様々な罠が仕掛けられており、参加者達は争っていくことになる。その最たる者が「食人鬼」である。ゲーム中で選択する4つのルート「サバイバル用品」「武器」「食料」「情報」の中から「食料」を選び手に入れた食料を手に入れると、食料に仕込まれた薬品の作用により食欲が抑えられない食人鬼となってしまうのだ。この仕掛けにより2人の食人鬼が発生し、参加者達を次々に食い殺していく。食人鬼の存在がこのサバイバルゲームの恐怖を極限まで高め、物語の重要な局面を引き起こすことで、ストーリーにメリハリが付き、物語の起承転結を見事に表現している。

 

ゲームブック

ゲームブックとは、本でゲームを楽しむ物で、読み進めていく中で現れた選択肢によって読むページが変わり、結末が変化するという物で、物語中主人公はこのデスゲームをゲームブックに例えている。選択肢は、前述の通り「サバイバル用品」「武器」「食料」「情報」の4つであり、参加者はこの中から一つを選び進まなければならない。4つのいずれもサバイバルには必要そうな物であるが、前述の通り「食料」は食人鬼化を引き起こすハズレの選択肢であり、参加者達は正に命をかけてゲームブックを実体験していくこととなる。この小説自体がゲームブックであり、正しい選択肢を選んだ場合の物語とも言えるかもしれない。

 

 

③曖昧な結末

物語中、主人公はある女性と恋仲になり、共に行動しゲームクリアを目指すこととなる。逃走の中で彼女の生死は分からなくなる。ゲームをクリアし、日本に戻ってきた主人公だが、実は彼女はこのゲームの主催者側ではないかと疑う。このデスゲームの様子を主催者側は記録する必要があるし、アクシデントの場合の調整役が現地にいるはずであり、確実に死亡を確認したり、食人鬼化していない者は彼女しかあり得ないのである。片眼が義眼でありそこにカメラが仕込まれていたのでは?などの考えがよぎるが、結局真相は明らかにされない。一部の読者はこの結末に対して、はっきりしない曖昧な結末だと悪い評価を下すが、私としては全てを明らかにせず読者の想像に委ねるという展開は嫌いではない。もちろん推理小説であれば、トリックや犯人を明らかにする推理に関しては淀みなくはっきりしている必要があるが、犯人の心情であったり、動機の部分はある程度曖昧にしても良いと思う。読者の好み次第だが、想像力を豊かにして楽しんでいただきたい。

 

 

 

 

 

 

 

~最後に~

本作品は、ホラー系の作品であるにもかかわらず、非常に読みやすく先が気になり読む手が止まらない系の作品でもある。物語自体も無駄に長くなっておらずコンパクトなものとなっているため、普段あまりホラーやサスペンス小説を読まない方もお気軽に読んでいただける作品となっていると思う。

 

 

こちらの記事もおすすめ!

 

 

東野圭吾著「パラドクス13」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、東野圭吾著「パラドクス13」である。これまでご紹介してきた推理小説ではなく、SFサスペンスとでも言うべきジャンルではあるが、非常に読み応えがあり、推理小説ファンだがあまりサスペンス系は読まない私でも楽しむことができた作品なのでご紹介しようと思う。もちろん、東野氏の推理小説は素晴らしい作品ばかりであるし、推理小説ファン以外も読みやすい文章やストーリーとなっており私も好きな作品が多いのだが、他の記事で紹介されていることも多いのであえてそこは避けようと思う。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                    

 

 

 

 

 

 

 

 

f:id:Ashito:20210713190729p:plain

~あらすじ~

ある日、13時13分13秒。街から人がいなくなった。警察官である主人公は犯人と戦っていたが、突如犯人がいなくなり乗っていった車が無人で暴走・激突した。街に出てみても周りに人は見当たらなかった。その後、街を探し回って見つかったのは赤ん坊から年寄りまで老若男女の13人。彼らは知ることは無いが、実はブラックホールの影響で時空が歪み元いた世界とは異なる世界に跳ばされたのだ。なぜ彼ら13人なのか。この世界は何なのか。彼らはこの世界でどう行動するのか。崩壊して行くこの世界で13人の物語が始まる。

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①常識が通用しない世界で人はどう行動するのか

この小説の舞台は、彼らが元いた世界とは異なる世界。13人が世界であり全てなのだ。元の世界の常識や倫理観はこの世界では同じとは限らない。状況によっては殺人さえもこの世界では絶対悪とは限らないのだ。法律という秩序や正解がなくなった世界で人々は自分で考え、判断していかなければならない。13人の中には、自分で意思表示できない赤ん坊もいれば、警察官である主人公、ヤクザまで混ざっている。そんな13人が共に生きていくことは難しいように思えるが、協力しなければ生きていくことはできない。もちろん様々な問題が発生し、ぶつかり合うこととなるのだが、正解のないこの世界では誰が正しいとも言えない(普通の世界にいる読者からすればこれはダメだと思ってしまうことでも正しいとは限らない)。無秩序な世界で、しかも非常事態の状況下で、彼らがどのように行動するのかぜひ注目していただきたい。

 

②この世界は何なのか

13人以外に周りに人がいなくなった世界。なぜ13人だけがこの世界に取り残されたのか、どうすれば元の世界に戻れるのかという謎が、最後まで主人公達を悩ませる。物語終盤で、この13人はブラックホールの影響で13秒間の時間跳躍が起きた「P-13現象」の13秒の間に命を落とした人々だと言うことが明らかになる(読者には冒頭でそのことがほのめかされている)。この世界は13秒間の間に死んでしまい、時間跳躍後の世界に存在しなくなってしまったことによるパラドクスにより形成された世界だったのだ。世界はこのパラドクスを解消するために13人を消し去ろうとしているのかもしれないと、主人公達は考えるようになり、絶望しながらも生き残り元の世界に戻る方法を探る。戻る方法が分からない中で、元の世界に戻ることを諦めてこの世界で暮らしていくことを決意したり、もう一度死ねば戻れるのではないかなど様々なことを考え、決断していく。何が正解なのか最後の最後まで分からない展開に注目していただきたい。

 

東野圭吾氏の文章力

この小説に限った話ではないが、東野氏の小説は普段小説を読み慣れていない人でもすんなりと読める読みやすい文章に定評がある。この作品も、世界が崩壊していく中で様々な問題や悲しみが主人公達を待ち受けるという重たい内容であるにもかかわらず、読み出したら作が気になって読む手が止められない面白さと読みやすさがある。中々分厚い本であるので一気読みは大変かもしれないが、なるべく長く時間が取れるときに読み始めていただき、どっぷりと東野ワールドに浸っていただきたい。

 

 

 

 

 

 

~最後に~

小説を読む方であれば一度は東野圭吾氏の作品を読んだことがある方は多いと思うが、この作品は他の東野氏の作品とはやや趣が異なるので読んだことがない方もいるのではないだろうか。自分が主人公達の立場だったらどう考え、どう行動するだろうかとぜひ想像しながら読んでみていただきたい。

 

こちらの記事もおすすめ!

ゲーム「アストロノーカ」を語る

~はじめに~

今回ご紹介するのは、1998年にPS用に発売されたゲーム「アストロノーカ」である。「スターオーシャン セカンドストーリー」に体験版が附属していたためそちらをプレイされた方もいるかもしれない。現在はゲームアーカイブスで配信されておりPS3などでプレイ可能だ。

 

                                            

 

 

 

 

 

 アストロノーカ

~あらすじ~

ある小惑星に、ヘルパーロボット「ピート君」と共に降り立った主人公。荒れ果てた土地で野菜を作り、宇宙一の農家を目指す!害獣バブーの妨害に屈せず今日も野菜作りに勤しむ。

 

 

 

 

 

 

~アストロノーカの魅力~

 

①交配で新種の野菜を産み出す!

このゲームでは、合計36種類の野菜を作れるが、その多くは最初から作れるわけではない。購入した種や収穫した種を掛け合わせランダムで野菜を作るのだ。もちろん失敗することもあり、新種の野菜を作り出すのは容易ではない。また、各野菜には「大きさ」などの属性値があり、売値やコンクールに出品した際の評価に影響する。属性値は交配により片親の属性を引き継ぐ場合があったり、特殊な種を使うことで一代限りで属性値を上げることもできる(雑種強勢を意味していると思われる)。欲しい野菜に欲しい属性をつけるのは中々大変で、コンクールのためには交配にかなり力を入れる必要がある。

 

②害獣バブーの進化!

ゲームが進むと、害獣バブーが現れ畑の野菜を食べるようになる。バブーは全16種類おり、それぞれが異なる特徴(能力)を持っている。プレイヤーは事前にどの種類のバブーが来るか知ることができ、畑の前にとりもちや落とし穴、ジャンプ台など様々な購入したトラップを電力消費内におさまるように選んで仕掛け、バブーが諦めるまで妨害するか捕獲する。これに失敗すると畑の野菜が食い荒らされて傷物になったり、枯れてしまったりする。撃退に成功すると芸術点が採点され、それに応じて野菜の育ちが変わる。また、捕獲したバブーは1体だけ観賞用に置いておくことができる。そして最も重要なのは、バブーが罠を学習し進化すると言うことだ(当時としては非常に画期的なシステムだ)。同じ罠を使いすぎるとバブーが学習し、ジャンプ力が上がって罠を回避したり、脱出が早くなったりする。そのため、どんなに優れた仕掛けでも頻繁に種類を変える必要があり、頭を悩まされる。またバブーは現れない日もあれば複数体現れる場合もあり、コンクール用の野菜育成中は現れないよう祈ることになる。

 

 

 ③個性豊かなライバル達

コンクールがあると言ったことからも推察されるように、この小惑星には主人公の他にも野菜を作っている住人がいる。特定の野菜に異常な拘りを見せる人や、大きさに拘りを持っている人、主人公のライバルとなる天才など、個性豊かなライバル達と競い、成長していく物語となっている。ライバル以外にも、主人公にアドバイスをくれるものやファンレターをくれるファン、種やトラップを売ってくれる商人など、多くの人の助けを借りながら、究極の野菜「アストロキング」を作るために農業に励むこととなる。

 

 

 

 

~終わりに~

こちらのゲームは、かなり昔のゲームながら高度なAIが搭載されており非常にやり応えがあるゲームである。ゲームアーカイブスで配信されており、この記事を読んだ方も比較的プレイしやすい環境にあると思われるので、興味がある方はぜひプレイしてみていただきたい。

 

こちらの記事もおすすめ!

 

 

道尾秀介著「龍神の雨」感想(ネタバレ含む)

~はじめに~

 本日ご紹介するのは、道尾秀介著「龍神の雨」である。道尾氏には映像化されたり話題となった作品が多く存在するが、梅雨真っ直中ということもあり、雨に縁のあるこの作品を紹介しようと思う。

 

以下、ネタバレを含みます。

未読の方はご注意下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                      

 

 

 

 

 

 f:id:Ashito:20210713191005p:plain

~あらすじ~

継父と暮らす蓮と楓の二人。継母と暮らす達也と圭介の二人。二つの家族はそれぞれに問題を抱えていた。雨の中で展開していく二つの家族も物語。やがてそれらは交差し、絡み合って落ちていく。いつまでも降り続く雨。雨が降り止む日は来るのだろうか…。

 

 

 

 

 

~おもしろいポイント~

 

①濃密なストーリー

道尾氏の作品の特徴として、緻密な伏線を張りながら読者を誘導し、終盤でアッという展開が待っていると言うことと、単純なミステリというだけでなく、登場人物達の抱える感情や社会の問題を考えさせる濃密なストーリーだという点が挙げられる。もちろん例外はあるが、この作品はまさにこれら二つを兼ね備えた作品である。二つの実の親子ではない家族はそれぞれに問題を抱えており、それが事件の引き金であり結末へと繋がっている。台風が襲来しており終始雨という状景のため、暗い雰囲気の中物語が進んでいくが、その状景が二つの家族が抱えている問題の奥深さや重さと見事にマッチしており、ミステリとしてだけでなく一つの物語として楽しめる作品に仕上がっている。親子とは何なのか、どうあるべきなのかをも考えさせられてしまう。

 

 

②どんでん返し

道尾氏の代表作の一つ「向日葵の咲かない夏」にあるようなどんでん返し的展開も道尾氏の特徴の一つで、この作品でもそれが楽しめる。トリック自体は大仕掛けなものでも難しいものでもないが、前述の濃く重いストーリーとなっている事で読者がミスリードされやすくなっているように感じた。ストーリーの重さにはまってしまった読者はおそらく最後まで真相には気付かず(そんなことどうでも良くなり)最後まで一気に読み進め、そして驚きの真相に息をのむことになるだろう。

 

 

③雨

タイトルに雨とある通り、物語にも雨が絡んでくる。舞台が台風が襲来している街ということで、台風の接近・襲来・通過という課程と物語の緊迫度がリンクしており、物語に一層の重みを持たせる。また、事件のきっかけや根本的な要因も雨が絡んでおり、人生にたらればはないが、雨さえ降っていなければ二つの家族の形は全く違ったものになっていただろう。雨のこの季節に読むと、雨の中を歩く際に思い出し感慨深い気分にさせてくれる作品である。

 

 

 

 

 

 

 

~最後に~

道尾氏の作品を読まれる方はどんでん返しを楽しみにされている方も多いことだろう。私も最初はそれを期待してこの作品を読み始め、もちろんアッと言わせる展開に驚き満足もしたのだが、単純に物語としてもこの作品は割と気に入っている。雨が続くこの季節にぜひ一度読んでみていただきたい。

 

 

こちらの記事もおすすめ!